第15話 人に歴史あり
「ねぇかじゅ~、ここ、どこ~?」
今日から夏休み、というか終業式を終えてまだ数時間といったとある夏の夕方、私こと武藤和珠音はルームメイトの愛海りなとともに空の宮市内のマンションにやってきた。
「ごきげんよう、和珠音さん。そちらがパートナーのりなさんですね」
「はじめましてぇ。愛海りなです~」
マンションのエントランスで私たちを待ってくれていたのはAV研会長の一色先輩だ。清楚が服を着ているかのような、というか清楚な人にしか似合わなさそうな純白のワンピースを身にまとっているのに、その実態は――。
「あの、住所を指定されて来たんですけど、ここで何を……?」
「ふふふ、取り敢えずどうぞ中へ。暑いでしょう?」
エントランスはオートロックのようで、インターホンを押すと初めて聞く声で返事がして、自動ドアが開いた。エレベーターで六階まで上がり、案内されたのは605号室。
「こんにちは。待ってたわよ」
現れたのは二十代後半とおぼしきスタイルのいい美女……どこかで見たことあるような。
「畔柳夏海よ。今年で三十歳になるわ。星花女子学園で世界史の教員をしているのだけれど、一年生の子には見たことあるなぁくらいの接点しかないかしらね」
まさかの教員……おかしいなぁ。こっちはAV研の活動をするって聞いているのに。まさしく、なんでここに先生が、である。
「リビングへどうぞ、他の子たちも集まっているわ」
そう促されて中に進むと、広めのリビングに青木先輩や千賛知先輩、白石さん、榛葉さん、黒崎さんとこの前会ったメンバーが勢ぞろいだった。
「畔柳先生は大学生のころAVに出ていたんですよ」
「八木うみかって名前で四年間ね。もう十年以上前のことよ。時が経つのはあっという間ね。教員採用試験に落ちたら続けるつもりだったから、引退作って撮影してなくて。総集編でなぁなぁにしちゃったのが悔いね。私が採用されたのって、星花女子学園がゴタゴタしててけっこうたくさん採用していた時期なのよね。水垂先生とか菅原先生は同期よ」
なんか理事長先生が交代した時にゴタゴタして年かさの先生はいっぱい辞めたっていうのはなんとなく聞いたことある。だから星花女子には二十代の先生が多めとのこと。にしても異色の経歴だなぁ。
「最初はちょっと過激なグラビアだったんだけど、あれよあれよと男性とセックスし、慣れた頃には女性とも。そしたら女同士にハマってしまってね。うふふ。AV女優としての四年間は間違いなく青春だったわね。みんなに分かっていて欲しいのは職業に貴賎なしってこと。なんでもいいからプロになってほしいものね」
「えっと~じゃあ、先生はえっちのプロだったの?」
はうぅ、無垢なりなりー可愛いぃ。……とか言ってる場合じゃないか。
「ふふ、じゃあ先生の一番のお気に入りを見せてあげるね」
艶やかに微笑む畔柳先生は、大き目のテレビのディスクドライブを空けてラックから取り出した一枚のディスクを入れる。始まったのは当然……。
「一番仲良くなった子とドキュメンタリー交じりでいっぱいエッチした時の作品」
突如として始まったAV鑑賞会が無事に終わり、りなりーが発したのは
「りなりーもかじゅとこういうの撮りたい!!」
私の人生にとって最大の爆弾発言であった。
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