第72話 神鹿壬雲レキハ その2
「でも、まわりにはダンチューバーやってる一切言ってないんですよ。基本的にウチ、ヘタレなんで、あはは・・・。だから、がっこでウチがダンジョン配信やってるなんて誰も知らないんですよね~」
「それ、わかります。僕も学校だと言えてませんし」
「ですよねっ! なんか自分のやってること否定したくないんですけど、やっぱ白い目で見られるじゃないですかー。今どきダンチューバーやってるって。ウチはぜんぜん好きなんですけど、そんなもんに貴重な青春捧げてマジ終わってるとか、よく耳にするんで。いつメンにも言えてないですもん」
レキハさんは、まわりに友達がたくさんいるんだろうな。
僕の場合、言える知り合いがほとんどいないから。
学校じゃ言ってないってだけなんだけどね。
「高校に入学してウチも最初は迷ったんです。ダンジョン配信してみたいってずっと思ってたけど、最初の一歩が踏み出せないっていうか。そこでたまたまエデンさんの配信を見つけて」
「え、僕のですか?」
「はい。こう言ったらちょー失礼なんですけど。同接数ぜんぜん伸びてないのにずっと配信続けてたじゃないですか? それでも毎日配信してて。そこで気づいたんです。あ、そっか。この人は自分のために配信してるんだって」
なんか詳しく分析されてるみたいでかなり恥ずかしい。
(自分のためっていうのとは、ちょっと違うんだけど)
でも。
レキハさんが言いたいことは理解できた。
「それで気持ちがだいぶ楽になったんです。べつに誰かのために配信しなくてもいいんだって。自分のためにウチはダンジョン配信すればいいんだって。それでようやく踏ん切りがついて。配信者デビューしたって感じなんですよ~☆」
「そうだったんですね」
「最近はあまりチェックできてないんですけど。はじめたての頃はエデンさんの配信をめちゃくちゃ参考にさせてもらってて! すごーく勉強になりました♪」
「僕の配信で役立つことなんてありました?」
正直、変わったことしてる自覚はぜんぜんなくて。
自分としては、ほかのダンチューバーの方と同じ感覚でやってたつもりだったんだけど。
「ぜんぜんありますよっ! まず第一に、エデンさんってぜったいそのダンジョンの最下層へ到達しようとするじゃないですかっ? それって、ほかのダンチューバーはほとんどやってなくて。地下1階とかテキトーに周回して、スライム狩ってハイ終わりとかなんですよっ! でも、エデンさんは違うんですっ☆」
「へ、へぇ・・・」
「それにスパチャも解放してないじゃないですかっ。ダンチューバーって基本的に拝金主義ってイメージがあったんですけど。エデンさんからはそーゆうのも感じられなくて。ダンジョン探索を素直に楽しんでるってのが伝わってくるっていうか!」
口調は自然とヒートアップしてきて。
だいぶ興奮してる感じだ。
うん。
なんかすごく嬉しいこと言ってもらえてる気がする。
「だから、そういう点をウチも真似させてもらったんです~♪ ダンジョンに潜ったらまず最下層を目指す。誰かのために配信するんじゃなくて、まずは自分が楽しむために配信する! そんな感じで続けてたら、嬉しいことに自然とリスナーも増えていって。だから、ウチがこうしてライセンス試験を受けることになったのも、エデンさんのおかげなんですよー☆」
「そこまで言っていただきありがとうございます。素直に嬉しいです」
一度、ぺこりとお辞儀した。
(まさか誰かのきっかけになってたなんて)
そんなつもりで配信してたわけじゃないけど。
面と向かってそう言われると。
役に立てたことがちょっとだけ誇らしく思えてくる。
「でも、ごめんなさいっ! さっきも言いましたけど、最近の配信はあんま見れてなくて・・・あはは。自分の方が忙しくなっちゃって」
「謝ることなんてないですよ。お互いダンジョンに潜ってるんですから当然です」
「てか、エデンさんのチャンネル! 最近の伸びエグくないですかぁ~? 久しぶりに見てびっくりしちゃいました♪ 20万人とか突破してましたよねっ?」
「はい。正直、自分でもかなり驚いてまして」
「伸び方はエグいですけどー。ウチ。エデンさんのチャンネルはこれくらい増えるだろうなぁーって予想してました♪ だって、最初からぜんぜんふつーじゃなかったですもん! もちろんいい意味でですよ? だから、注目されたらぜったい伸びるだろうなーって思ってて」
「ありがとうございます」
もう褒めちぎられっぱなしで。
さすがに恐縮してしまう。
それになんか申し訳ない。
(僕の方はレキハさんの配信を見たことがないんだし)
帰ったらかならずチェックしなくちゃ。
でも。
(なんか聞き覚えあるような・・・)
レキハさんの声。
明るくて、元気で、前向きで。
そんな声をいつも近くで聞いてたような気がするんだよね。
どこで聞いたんだろう?
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