第70話 探索者クラン
(たしかこっちって話だったよね?)
ボディコンソールに表示されたマップで、現在地を確認しながら進んでいく。
別れ際。
陽子さんからクランの所在場所について話を聞くことができて。
どうやら地下1階のとあるフロアにスペースを設けて、館を建造したみたい。
また珍しいことに。
(ここのB1は、エネミーが一切出現しないみたいなんだよね)
『
そのまましばらく歩いてると。
「おぉっ」
ぽっかりと空いただだっ広い空間が目の前に現れる。
しかも。
天井がこのフロアだけ異様に高くて。
15Mくらいあるかも。
いろんなダンジョンに潜ってきたけど。
ここまで天井が高くて、広いフロアがあるのも珍しい。
それで。
そのど真ん中に目的の場所はあった。
4階建ての洋館スタイルの建造物。
(ダンジョンの中に建物があるなんて。なんか新鮮)
見慣れない光景に戸惑いつつも。
近寄ってみる。
「・・・」
こっそりと中を覗いてみるが。
入口からは、まったくひと気が感じられなくて。
(クランの場所はここで間違いないんだし。中に入ってみようかな)
「よし。行こう」
重厚な扉を開いて、館内へと足を踏み入れた。
◇◇◇
「失礼しまぁーす・・・」
一礼してから館の廊下を歩いていく。
予想どおり。
館内はずいぶんひっそりとしてて。
(なんかイメージと違うな)
アニメやラノベだと、冒険者たちで溢れ返って活気ある印象だったんだけど。
館内は無人。
歴史を感じさせる荘厳な内装もあいまって、うすら寒さすら感じる。
本当にこの場所でライセンス試験が行われるのか、疑いたくなるくらいだ。
「・・・」
ひとりで長い廊下を歩いてると、徐々に心細くなってくる。
ふだん、そういうのは大丈夫な方なんだけど。
(?)
そのとき。
突きあたりに見える部屋から。
微かに光が漏れ出てることに気づく。
人がいるのかな?
そっと近づいてみると。
部屋の輪郭が徐々にはっきりとしてくる。
真っ赤なカウンターの前にひとり。
ベージュ色のロングヘアをうしろに一房で結った若い女の人が立っていた。
黒いスーツとスカートっていうフォーマルな恰好で。
たぶん受付嬢だ。
(あれ? スタイルを所持してない?)
てことは、高校生じゃないってことで。
大人っぽいし、間違いなく年上だな。
(あっ)
なんかお辞儀してくれたみたい。
つられて僕も頭を下げる。
「おはようございます。お待ちしておりました」
「おはようございます」
「本日、ライセンス試験を受けに来られた方ですね?」
「そうです。国崎優太って言います」
「国崎優太さまですね・・・。はい、たしかに確認いたしました」
どこか事務的に。
カウンターに置かれたパソコンに目を向けるお姉さん。
ちょっとだけ。
無機質なフランス人形のようにも見える。
とってもキレイなんだけど、どこか冷たさがあるような。
例えづらいんだけどそんな印象。
「本日のご予定を説明させていただきますね。午前中はライセンス講習を受講していただきまして、午後からは本試験を受けていただく流れとなります。こちらの内容となりますが、よろしいでしょうか?」
「問題ないです。どうぞよろしく願いします」
「承知いたしました。それでは、講習の開始時刻までまだお時間がありますので控室にご案内させていただきます。こちらへどうぞ」
受付嬢のお姉さんの指示に従って、あとをついて行き。
とある部屋へと通される。
(なんか教室みたい)
でも。
うちの学校の教室とはぜんぜん違って。
かなり洗練された印象を受ける。
大学の講義室とか、そんな感じ?
まあ実際に行ったことはないから、あくまでイメージの話だけど。
てか、気になるのはそんなことじゃなくて。
「国崎さま。お時間までこちらの部屋でお待ちいただければと思います」
「あの・・・」
「なんでしょう?」
「誰もいないみたいなんですけど」
まさか。
受験者は僕ひとりだけってことはないよね?
「ええ。最初にご到着されたのは国崎さまになります。ですので、ほかの方はまだお見えになっておりません」
「あ、そうなんですね」
ほっ。
よかった。
さすがにひとりなわけないか。
「どうぞ。適当な席におかけください」
「ありがとうございます」
これから何人か入ってくるんだろうし。
うん。
皆さんの邪魔にならないように一番うしろの席に座っておこう。
そう思って移動しようとするも。
「そんなうしろの席でなくても大丈夫ですよ」
「ですけど」
「本日の受験者は、国崎さまを含めておふたりしかおりませんので」
「えっ?」
「それでは」と一礼すると。
受付嬢のお姉さんは、スッと部屋から出ていってしまう。
(ちょっと待って。ふたりだけなのっ?)
陽子さんの話を聞いてある程度予測してたけど。
さすがにふたりってのは予想外だ。
「ふぅ」
席に座ると、自然とため息が漏れてしまう。
案外緊張してたのかも。
一度まわりを見渡す。
机と椅子がいくつも置かれてて。
まんま教室って感じだ。
ある意味で見慣れたその光景は、ここがダンジョンの中ってことを思わず忘れさせて。
(どんな人が来るだろう?)
基本的に人見知りだから。
こういうのはけっこうドキドキしたりする。
でもその反面。
楽しみもあって。
同じ志を持つ仲間と遭えるチャンスなんてめったにないし。
そんなことを考えながら。
しばしの間、部屋で待機してると。
がちゃっ。
ドアが静かに開く。
そこに姿を見せたのは。
(あ、女の子だ)
その子は
誰もが口を揃えて頷くような、とびっきりの美少女だった。
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