第54話 4thダンジョン Ⅶ

 ドォォォン!


 思いっきり攻撃がぶち当たる。


(っ)


 背中をさすりながら。

 ウルティメイトグレイブで幻霊デュラハンを瞬殺した。


:完全にわざとじゃん!

:有罪確定

:はぁ??

:うしろから味方に攻撃とか。探索者としてあり得ん。

:怒っていいぞエデン

:完全にヤってる

:仕返しした方がいい

:あーいらいらするー


「わりぃ。また手元が狂っちまった。なんか上手くいかないんだよね~」


「いえ。大丈夫です」


「次はちゃんとやるからさー。悪いね」


 こんなやり取りも。

 実は何回か繰り返してて。


(でも、たしかに攻撃が外れることは自分でもあることだから)


 一瞬、痛みは感じるけど。

 いざとなったら、手持ちの遺物キューブを回復系のジェムにリライトすればいいし。 


 そんなことを考えながら、総長さんと一緒に青魔法陣を踏む。



 ヴゥーーン!



(ようやく地下8階だね)


 ひょっとすると。

 今日も『赤羽ダンジョン』の最下層へ到達するのは難しいかも。


「この辺からエネミーの強さもグンって上がるから注意してよ」


「了解です」


「国崎君のせいでさ。ずいぶんペース落ちてんだからさ。自覚あるっしょ?」


:お前が言うな

:暴露系が迷惑系ってややこしい

:いつまでついて来るんだよw

:もう帰れ

:ああああああ

:撒こうぜw

:エデン、ボディコン見てないね

:つまらんわキレキレ。芸人としてもセンスない。


「っと。言ってるそばから」


 通路の先を指さす総長さん。

 そこにはエネミーの群れが。


(獣域ヒュドラー?)


 やっぱりそうだ。

 間違いない。


 多数の蛇頭をうねらせながら、その巨体で長い通路をゆっくりと進んでる。


 通路は一本道で。

 避難するような横道はなかった。


 敵を1体1体倒しながら進んでいくしかなさそうだ。


(たしか首を切っても新しい頭が生えてくる強靭な再生能力があるんだっけ?)


 ここは一気に決めたいところ。


「こーゆう時のためにさ。とっておきを残しておいたんだよね~」


 ホルダーをその場に呼び出すと。

 総長さんは1個のキューブを掴み取る。


 ============================


 【天下の罠】


 自分がいる階の通路をすべて罠に変化させる。


 [レアリティ] ★★★★

 [種類] 道具アイテム

 [タイプ] 即効

 [重量] 0


 ============================

 

「じゃじゃ~ん♪ どう? いいアイデアっしょ?」


「星4のアイテムですね」


「なんか知らんけど。今日拾ったキューブはぜんぶレッドだったんよね。わかる? これがカリスマたる所以なんよ。ハハ!」


:勘違いww

:エデンがリライトしてたキューブ?

:この謎マウントは痛ぇw

:さっきエデンがレッドキューブに変えてたぞ

:キレキレがカリスマぁ??

:なんも知らなくて草

:エデンのおかげやんww

:威勢だけは一丁前

:基本バカだからなw


 通路の床がすべて変わるってことは。

 獣域ヒュドラーは罠にはまってダメージを負うわけで。


(なるほど。これで自滅を誘うってわけか)


 さすが総長さん。

 クレバーな手で一気に殲滅しようってことみたい。


「んじゃさ。コレ。使っちゃうけどいい?」


「すみませんがよろしくお願いします」


「ん~? あれあれあれぇ~? 国崎君、そんな余裕ぶっこいてていいんー? なんか自分は助かるみたいに思ってない?」


「はい?」


 にやりと。

 総長さんが不敵に笑った。

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