第26話 朝から騒がしい2人

 翌日の朝6時。早めに目が覚めた俺とマトイ。


 俺はダイニングテーブルの席に座ってスマホを弄り、マトイは制服の上からエプロンを身に付け、キッチンで朝食を作ってくれている。


 こうして見ると、本当に夫婦っぽく見える。


「出来たよ~♪」

「おっ、早いな」

「まぁ、軽く焼いただけだから」


 俺の前に朝食が並べられる。ご飯にお味噌に目玉焼きとウィンナー。極々普通の朝食だ。


 だがこの目玉焼き、卵黄が潰れている。


「なんだ? 目玉焼きのこの黄色いの、随分とペッタンコじゃねぇか」

「………うるさいっ! 卵割るの慣れてないんだもん!」


 プクッと頬を膨らませながら、自分の分の朝食も並べるマトイ。


「卵ってそんなに割るの難しいか?」

「難しいって言うか………力が入っちゃうって言うか………」


 卵に亀裂を入れて、その亀裂に親指の先端を少し食い込ませる。それから、殻を左右に開くように力を入れれば、普通に割れると思うんだが。


 まぁ、実際に見てはないかは分からないが、多分、親指が卵の中にぶっ刺さってしまうんだろうな。それで卵黄を破壊してしまっているのだろう。


「まぁいい。作ってくれるだけありがたいからな。頂きます」

「はいっ、召し上がれっ♪」


 箸を右手にご飯の入ったお碗を左手に持ち、早速マトイお手製のお手軽朝食に手をつける。


 もぐもぐと自分の作ったご飯を食べてくれる俺に、隣に居るマトイは嬉しそうな表情を浮かべながら、お味噌を飲む。


 やっぱり、こうして見ると夫婦だな。


☆☆☆


 朝6時30分。早めの起床、そして早めの朝食を取り、すでに登校する準備は整っていた。つまり、時間になるまで自由時間って訳だ。


 俺は定位置のソファで寛ぎ、マトイもソファで俺に身を預けながら寛ぐ。


「そう言えばマトイ。お前、着替えるの早くないか?」

「そう?」

「あぁ、今日とかまだ時間に余裕があるだろ? だから、朝飯食った後でもいいんじゃんって思って。料理中に制服汚れる可能性とかあるしな」


 スマホの画面からマトイの制服へ視線を向ける。


 マトイは起きてすぐに歯磨きをして制服に着替えていた。一方俺は、パジャマのままリビングで寛いでいた。


 早めに準備を済ませておけば、後は楽に出来るから悪い事じゃないんだが、エプロンを付けてたとしても、完全に汚れを防げるって訳じゃない。


 俺は制服を汚すのは嫌だから、朝食の後に着替えるようにしている。


「確かに、制服が汚れるのは嫌かも。でも~………」

「………な、なんだよ」


 すると、マトイは何やらニヤニヤとしながら俺のを見つめる。これは、何か良からぬ事を考えているな。


「だって、ミズキったら………パジャマのままで居ると、私の胸ばっかり見てくるんだもんっ♡」

「バッ………何言ってんだよ。見てねぇし」


 突然の不意打ち言葉に俺は顔を赤くして、サッと視線をマトイから逸らした。


「えぇ~? 嘘ばっかり♡ ジロジロとイヤらしい目でいつも見てきてるクセにっ♡」


 マトイは俺の腕にギュッと抱きつき、肘辺りに柔らかいものをムニュっと押し当ててくる。


 こいつ………わざと俺の肘に胸を当ててきやがる………っ!


「そ、そもそも………! お前があんな少し露出の多い薄着を着てるからだろぉがっ! まだ春になって間もないんだぞ? 暑くねぇだろ!」


 俺はひたすらマトイに弁解を試みる。しかし、その弁解は逆効果だった事を知らずに。


「あっ! やっぱり見てたんだぁ~♡ そう言うって事は、見てたって自覚があるって事だよねっ? イヤンッ、ミズキのエッチっ!」

「う、うるせぇ!」


 ムニュッ、ムニュッと柔らかいものを押し当てられる俺の肘、昨晩は特に意識してなかったとしても、今は絶対意識して押し当ててきてる。


 こいつに羞恥心とかねぇのか! 普通はどんな関係であっても、女性から胸を触れさせたりする事なんてねぇんだぞ!


「い、いいから離してくれっ!」


 俺は強引に腕を引っこ抜こうとする。しかし、マトイは逃がさんと言わんばかりに、俺の腕をさらに力強く抱く。


「もうミズキっ! 女の子の体は繊細なんだから、そんな乱暴にしちゃダメ!」

「お前がくっついてくるからだろ! いいから離せ!」

「嫌だ~! 今の内にミズキ成分補充しとかないと、今日も乗り越えられないの!」

「知るかそんもんっ!」


 引き離そうと動けば動くほどマトイの胸の感触がより伝わってくる。

 

 クソッ、ブレザーの上からでも分かるこの弾力………一体何食ってきたらこんなに成長さられんだよ! まだ高校生だぞ!?


 頼むから、朝っぱしからこんな刺激を与えてくるなァァァァァァ!!

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