第19話 カフェ「エトワール」

門司港の海風が心地よく吹き抜ける夕暮れ時、香織はカフェ「エトワール」の窓際の席に座っていた。目の前に広がる海の景色は、どこか懐かしく、そして新しい未来を感じさせるものだった。彼女はゆっくりとコーヒーを口に運びながら、これまでの出来事を思い返していた。


豊橋モータースとの協力体制が整い、桜田製作所は新たなプロジェクトに向けて動き出していた。その一方で、香織自身も信用金庫の役割として、彼らをサポートするための計画を立てていた。プロジェクトの成功には資金調達が不可欠であり、それをどのように実現するかが彼女の最大の課題だった。


涼介がカフェ「エトワール」のドアを開けて入ってきた。彼もまた、香織と同じようにこれからのことを考えていたのだろう。二人は軽く微笑み合い、涼介は香織の向かいに腰を下ろした。


涼介はカフェの窓から見える海を見ながら、「香織、俺たちは本当にこのプロジェクトを成功させることができるのか?」と不安を吐露した。香織もまた、内心の不安を隠さずに「それは簡単じゃないわ。でも、私たちにはやるべきことがある。この風景を見ると、頑張らなきゃって思う」と応えた。


二人の会話は自然とこれまでの苦労やこれからの挑戦へと移り、彼らの結束を強めていった。


その時、カフェの入り口で見慣れた顔が現れた。カフェ「エトワール」の店員、佐々木優香だった。彼女は笑顔を浮かべながら、二人の席に向かって歩いてきた。「お疲れ様、香織さん、涼介さん。今日はお二人ともここにいると思って来ちゃった」と優香は明るい声で話しかけた。


香織は優香に隣の席を勧め、これまでの状況と、豊橋モータースとの新しいプロジェクトについて説明した。優香は真剣な表情で話を聞き、時折質問を投げかけた。「香織さん、それは本当に大きな挑戦ですね。でも、桜田製作所の技術力ならきっと成功すると思います」と優香は励ますように言った。


すると、優香は少し照れくさそうに微笑みながら切り出した。「実は、私もこのプロジェクトに参加することになったんです。豊橋モータースに就職が決まって、新プロジェクトを担当することになりました」


香織は驚きながらも、すぐに優香を祝福した。「おめでとう、優香ちゃん!それはすごいわ。一緒に頑張りましょう」


涼介も笑顔で頷き、「そうだね。優香ちゃんが加わるなら、ますます心強い」と答えた。


門司港の夜が更ける中、カフェ「エトワール」の灯りが温かく輝いていた。香織、涼介、そして優香は、その灯りに包まれながら、未来への希望を胸に抱いていた。新たなプロジェクトは始まったばかりだが、彼らには確固たる決意があった。


「私たちの道はこれからも続く。桜田製作所と一緒に、未来を切り開いていこう」と香織は静かに誓った。


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次回、新章では、桜田製作所と豊橋モータースの新プロジェクトが本格的に始動する。全世界に向けた完全自動運転車の開発という壮大な挑戦に、香織たちはどのように立ち向かうのか。期待が高まる。

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港町事件簿 第三巻:絆 @minatomachi @minatomachi

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