第17話 思い出してもらえるっていいね

 自宅の電話を引いている人は今は少ないと思うけど、うちにはまだあって、ほとんど変なセールスしかかかって来ない。電話が鳴ると出たくないなーと思うけど、たまに学校とか親戚からもかかかってくることがあるので、一応出る。


 少し前の話だけど、休みの日に自宅の電話が鳴った。どうせセールスだろうと思いながらも名前も名乗らずそっけなく「はい」と電話に出た。


「もしもし、〇〇(名字)さん?」


 相手は明るい声で親しげに話しかけてきた。誰だろう、と思いを巡らしても名前を聞くまでわからなかった。


「以前〇〇でご一緒していたSですー」

「えっっ、Sさん。お久しぶりです!」


 電話の相手は、以前働いていた会社で私の仕事を手伝ってくれていた契約社員の女性のSさんだった。私よりたぶん五歳ぐらい年上だったと思う。

 当時私が転勤した時を最後に、もう十何年も会っていなかったのに、今さらどうして自宅に電話がかかってきたのかと驚いた。


「Sさん、家に電話がかかってくるなんて、びっくりしました。急にどうしたんですか?」

「〇〇さんに会いたくて、以前控えてた電話番号にかけちゃいました」


 なんと! 会いたいなんて言ってくださるのはとても嬉しかった。

 よく、久しぶりに知人から連絡が来るとセールスされる、なんて話もあるけどそれは大丈夫だった。この電話をきっかけに、当時一緒に働いていた数人と久しぶりに集まることができた。


 「〇〇さんと働いて時、すごく楽しかったんですー」

 「〇〇さんとまた一緒に働きたいですー」

 

 Sさんは私をベタ褒めしてくれた。その当時任されていた仕事は、彼女と二人でやることが多くて、彼女に付きっきりで仕事を教えたりフォローしたりしていたんだ。

 私は普段から面倒見が良いなどと自分では全く思っていなかったので、意外だった。でも、どうせお世辞だろうなどと懐疑的にならないで、素直に受け取って喜んでおこう。

 彼女は、私がすっかり忘れていたような思い出話をいくつかしてくれた。確かに、そんなことあったね、と懐かしく思いながら話をした。


 Sさん、ありがとう。こんな風に思い出してもらえるのは嬉しいですね。そして、私も感謝している人に想いを伝えてみたいなと思いました。

 

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