039 監察官(7)輝け! モンテマニーの紋章

 ボクは、赤いプレートに月の光を反射はんしゃさせて、モンテマニーの紋章もんしょうかがやかせたのだった。


紅丸べにまる

「良ーく聞け、卑怯者ひきょうものども。

 この輝く紋章は、モンテマニー侯爵の監察官かんさつかんであるしるしだ。」


黄庵おうあん

「あなたたちに付ける薬はない。」


青兵衛あおべえ

「悪いことをしたと思うなら、金をはらえ。

 地獄じごく沙汰さた金次第かねしだいだ。」


ルナ

「青兵衛?

 ボクたちは、強盗じゃないんだから。」


錦野町長

「出会え、出会え、曲者くせものじゃ!」


ルナ

全員ぜんいんにががすな。

 と言いたいところだが、錦野町長だけは確保かくほしろ。」


紅姫

「はい。」


ルナ

「戦えない黄庵と青兵衛はボクのうしろへ。」


黄庵

「大丈夫です。

 今夜は月夜つきよです。

 だから、わたしも戦えます。」


 華奢きゃしゃな黄庵がたくましい体付きになった。


青兵衛

「おいらも、この算盤そろばんで戦います。

 商人の武器ですからね。」


 錦野町長の警備員たちは強そうだった。


 強そうだったのに・・・

 紅丸の剣技の前には、無力むりょくだった。


 強そうだったのに・・・

 黄庵の徒手格闘技としゅかくとうぎの前には、雑魚ざこだった。


 強そうだったのに・・・

 青兵衛の算盤そろばんとがった上辺じょうへんで痛がるだけだった。


錦野町長

「こちらが優しくしていれば、付けあがりやがって!」


 なぐりかかってきたので、ボクは、手で押して軌道きどうを変えてやった。

 そして、腹を3発、なぐってやったら、静かになった。


 中立の騎士、真実の瓦版、熱血教師たちは様子を見守っていた。

 しかし、警備員たちが倒されると逃げようとした。


紅丸

「逃がさないぞ!」


 紅丸が剣戟けんげきはなった。

 しかし、効果がかった。


ルナ

「待って。追いかけたら駄目だめ。」


紅丸

「なぜです。」


ルナ

「黒い脅威きょういを感じる。

 深追ふかおいしたら、こっちがやられる。」


 さわぎを聞きつけたのか、錦野町長の屋敷の外からも警備員たちが集まってきた。


警備員たち

「全員、おとなしくしろ。

 錦野町長を返せ!」


ルナ

「聞いてください。

 ボクたちは、」


警備員たち

「問答無用!」


ルナ

「なるだけ怪我けがさせないように。」


紅丸、黄庵、青兵衛

「「「はい。」」」


 10分ほどっただろうか?


ルナ

「そろそろいいかな?

 みんな、こっちへ!」


 ボクは赤いプレートを月夜にかざした。


ルナ

「あなたたち、これを御覧ごらんなさい。」


 ボクは赤いプレートを空にかかげた。

 月の光を反射させて、かがやいていた。


紅丸

「良ーく聞け。

 この輝く紋章は、モンテマニー侯爵の監察官かんさつかんであるしるしだ。」


警備員たち

「ははーっ。」


 うんうん、効果こうかはばつぐんだ。


警備員たち

「などと言うと思ったか。

 もうバテたのか?

 体力がないな。


 我らの勝利は見えたぞ。


 今のうちにけをみとめろ。」


紅丸

手加減てかげんされていることも分からないのか?」


黄庵

「付ける薬が無いわね。」


青兵衛

「買い取りできませんね。」


 ボクたちは、強めのいたみをあじわってもらうことにした。


警備員たち

「お見逸みそれしました。

 まさか、人間不信にんげんふしんのモンテマニー侯爵が監察官かんさつかん任命にんめいするとは信じられませんでした。」


ルナ

「じゃあ、錦野町長は、ボクたちといっしょに行こうか?」


 ボクは可愛い笑顔を向けてあげた。


錦野町長

「あなたの言うことを聞きますので、なにとぞ。」


ルナ

「うんうん、モンテマニー侯爵がくびながくしてっているよ。」


 錦野町長が変な顔をしたが気にしたくなかった。


 ボクたちは、檻付おりつきの馬車を用意してもらって、鉄格子の檻の中に錦野町長を入れることにした。


ルナ

「”市中引しちゅうひまわし”してから、モンテマニー侯爵の所に行こうね。」


 錦野町長が変な顔をしたが気にしたくなかった。


 道中どうちゅう、錦野町長を奪い返そうというやからに取り囲まれたので、【意識飛ばし】をプレゼントして気を失ってもらった。



 1日後、モンテマニー侯爵が待つ”青兵衛が企画した新しい町”についた。

 道中は、”黄庵による体調管理”と”青兵衛が人の道をいた”おかげで、錦野町長は従順じゅうじゅんだった。


 ”め技”と”精神攻撃せいしんこうげき”と言うほうが正しいと、ボクはひそかに思った。


モンテマニー侯爵

「おお、待ちかねたぞ。

 錦野町長。」


 彼は、とても良い笑顔をしていた。


 いつも無表情むひょうじょう気取きどっている侯爵様が”笑顔を向けていること”に違和感いわかんを感じたのだった。

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