029 青紫の商才(9)契約書に隠されたワナ

 ボクは夢の中で、イウラと話していた。


ルナ

「イウラ、危ないところだったよ。

 教えてくれて、ありがとう。」


イウラ

「どういたしまして、間に合って良かったわ。

 黄花さんのことは大目に見なきゃダメよ。

 少しくらいなら怒ってもいいけれどね。」


ルナ

「明日の朝は、黄花が大嫌いな洗濯に参加してもらうよ。

 それくらいのばつなら良いよね。」


イウラ

「まあ、いい線だと思うわ。」


ルナ

「シクペリア様にもお礼を伝えて欲しんだ。

 もらった万能で最強のスキルのおかげで助かったよ。」


イウラ

「ええ、もちろん、伝えておくわ。

 シクペリア様もお喜びになるわ。


 それでね、ルウナ、話を変えるけれど、悪いお知らせがあるのよ。」


ルナ

「な、なんだろう?」


イウラ

「今回、悪霊を止めるために、王真加勢陀オマカセダの御力を長時間お借りしたわよね。」


ルナ

「ああ、青紫のおかげで助かったよ。」


イウラ

「それでね。

 王真加勢陀オマカセダから請求が来ているのよ。」


ルナ

「えっ? 青紫にではなくて、ボクなの?」


イウラ

「取れるところから取る主義と言うこともあるんだけれどね。

 青紫は、あの数珠じゅずを大枚はたいて買って、自分自身ではなく、見ず知らずの黄花さんのために使ったよね。」


ルナ

「うん、お礼の言葉を述べて、今夜の宿と食事を提供したよ。」


イウラ

「でも、王真加勢陀オマカセダには何も返していないわよね。」


ルナ

「そうだね。

 ボクはどうすればいいの?」


イウラ

「青紫からもらった性欲がルウナのカタナまっているわよね。

 それを全部、性魔力せいまりょくに変えて、わたしに渡してくれるかな?

 それで手を打ってもらうことにするわ。」


ルナ

「は、ずかしい。

 見たの?」


イウラ

「服の上から見ただけよ。

 脱いで見せてくれたら、うれしいけどね。

 見せてくれるかな?」


ルナ

「み、見ないでえ。」


イウラ

「ルウナが嫌がることはしないわ。

 じゃあ、今すぐ昇華律しょうかりつを使って、性魔力に変えてくれる?」


ルナ

「うん、いますぐ変換するよ。」


イウラ

「たしかに、おあずかりしました。


 遅くなったけれど、青紫もお迎えできて、おめでとう。


 部屋の入り方は、黄花が教えたわ。

 朝、起きたら、鍵を渡してあげてね。」


ルナ

「わかった。」


イウラ

「じゃあ、時間ね。

 またね。」


ルナ

「うん、またね。」





 ボクは目を覚ました。


 青紫に鍵の説明をした。

 青紫の左腕に鍵が吸い込まれることろを見届けた。

 もちろん、家に出入りするための合言葉も試してもらった。


 朝ごはんは、残った2つの弁当を半分ずつに分けた。

 足りない分は、チンする焼きめしを食べたのだった。


青紫

「それで、ケンカの原因になった契約書を見せてくれるかな?」


黄花

「これです。 ご覧ください。」


 青紫は、10分ほどかけて、契約書を確認した。


青紫

「黄花さん、月夜が正解ね。

 危ないところだったわよ。


 ほら、ここの小さい文字を見てくれますか?


 赤い筆記具と定規を使って、読みやすくするわね。」


 青紫は、契約書に赤い線を引いた。


青紫

「月夜と紅姫も、いっしょに見てね。

 読み上げるわよ。


 町が町として活動を始めたときは上記を一として拾を受け取るものとする。

 一には必要経費などを加算してから適用する。 なお、漢数字の壱、弐、参、肆、伍、陸、質、捌、玖、拾を正しく理解していることを宣言します。」


黄花

「どういう意味ですか?」


青紫

「つまりね。

 黄花は、土地の借り賃を無料という契約をしたつもりかもしれないけれど、そんなことはないということよ。


 まずは、期間限定です。

 町が出来たら、金額を変えます。


 上記の金額に必要経費などを足します。

 その金額を1とします。


 それをじゅうにします。

 つまり、10倍の金額を払います。


 そういう意味よ。」


黄花

「それって、はっきり言えば。」


青紫

詐欺さぎよ。

 見事にだまされたわね。」


黄花

「良いひとそうに見えたのに。」


青紫

「良いひとなんて、信じたら駄目よ。


 本当に信じられるのは、月夜みたいに不器用ぶきようなひとよ。

 世渡り上手なひととか、人当たりが良いひとは、裏が有るから信じたらダメよ。」


黄花

「良い経験になりました。

 今後に活かします。」


月夜

「じゃあ、黄花。

 今日はボクを手伝ってもらうから、よろしくね。」


黄花

「何をすれば良いですか?」


月夜

「黄花の洗濯物を協力して片づけようか?」


 ボクは、満面まんめんみをうかべた。


黄花

「いやあ、洗濯嫌い、紅姫、青紫、たすけてえ。」


紅姫

「わたしも、家事はきらいだ。」


青紫

「わたしは、家事は一切できないからね。

 無理です。」


黄花

「そんなああ。」


月夜

「さあ、ふたりで始めたら、すぐに終わるよ。」


 紅姫と青紫は、ぜったいに月夜を怒らせないようにしようと、心に決めたのだった。

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