第4章 美女3人目 青紫

021 青紫の商才(1)ギルドに登録

 月夜つきよ紅丸べにまる黄庵おうあんは、家のそとでの名前だ。


 家の中では、それぞれ、ルナ、紅姫べにひめ黄花おうかと本当の名前で呼び合っている。

 ただし、紅姫と黄花にとって、ルナという名前は聞き慣れない名前だった。


 3人は朝ごはんを済ませて、それぞれの時間を過ごしていた。


 紅姫は、【妖刀斬ようとうざん 紅丸べにまる】というけんの手入れを済ませてから、剣の素振すぶりをしていた。


 黄花は、【聴診丸ちょうしんまる】という熱いお酒の小さな容器ようきを2つをつなげたような聴診器ちょうしんきの手入れをした後で、医学書を熱心に読みあさっていた。


 そして、主人公であるルナは、朝食後の皿洗い、洗濯せんたく片付かたづけ、風呂ふろ掃除そうじ、植木の水やりと言った家事を、たんたんとこなしていた。


ルナ

「うーん、けっこうな量を洗濯した気がするんだけどなあ?」


 ルナは、洗濯機の前に表示されている棒グラフを見て、不思議に思っていた。


ルナ

「黄花の洗濯物は全体の3分の1くらいしか終わっていない。」


 どういう仕組みかは分からないが、残った洗濯物の量が表示されるのだ。


ルナ

「本人に聞いた方が早いな。」


 ルナは、黄花の部屋の前に行った。


ルナ

「ノック、ノック。 ダン、ダン。」


と、ドアをたたく音をこえに出していた。


黄花

とびらたたくのは、だれですか?」


ルナ

「ボクだよ。 ルナだよ。

 黄花に確認したいことがあるんだ。」


黄花

「ルナって、えー?

 あ、ああ、月夜様ですね。

 すぐに開けます。」


 扉が開いて、黄花が顔を見せてくれた。


黄花

「月夜さん、いいえ、ルナさん。

 どうかされましたか?」


ルナ

「黄花の洗濯物って、まだあるよね。

 洗濯物を干す場所がまだあるから、さっきと同じ量だけ出してくれないかな?」


黄花

「い、いえ、そんなにはめていませんわ。 オホホホ。」


ルナ

誤魔化ごまかそうと思ってもダメだよ。

 さっきの量の2倍の洗濯物がまだ残っていることはバレているんだからね。」


黄花

「な、なぜ、それを?」


ルナ

「それは気にしなくていいから、洗濯物を渡してくれないかな?

 洗濯物が終わり次第しだい、3人でギルドに行きたいんだ。」


黄花

「わ、分かりました。

 これです。 よろしくお願いします。」


 黄花は、顔を赤くしながら、洗濯物をルナに差し出した。


ルナ

「あとの残りは明日くらいにするから、待っていてね。

 4人分の洗濯物を干す場所しかないからね。」


黄花

「4人分というと?」


ルナ

青紫あおむらさきの洗濯物を干す場所を借りて、黄花の洗濯物を干す予定なんだ。

 青紫と合流ごうりゅうしたあとは、使えなくなるからね。

 いまが洗濯物を片づけるチャンスなんだよ。」


黄花

「青紫というと同居予定の美女ですよね。」


ルナ

「そうだよ。 いつ会えるか分からないけれどね。」


黄花

「ギルドというと組合くみあいですよね。」


ルナ

光元国語ひかりもとこくごで言うと、そうだね。

 栄語えいごのギルドという言葉の方を、多くの人が使っているんだよ。」


黄花

「そこで、なにか用事があるのですか?」


ルナ

「黄花のギルドカードを作ろうと思うんだ。

 それとも、すでに持っているかな?」


黄花

「いいえ、持っていません。

 それを持つとなにか良いことがありますか?」


ルナ

身分証明書みぶん・しょうめいしょみたいなものだね。


 そこで、パーティ登録をするとね。

 黄花の身に何かあったときは、ボクと紅姫の信用が無くなるんだよ。

 と同時に、ボクと紅姫の身に何かあったときは、黄花の信用が無くなるんだよ。」


黄花

「お互いを信用できるようにという仕組みですね。」


ルナ

「その通りだよ。

 悪用する人もいるけれど、現時点においてはボクのパーティに入ってしいな。」


黄花

「こちらこそ、助かります。

 よろしくお願いします。」


ルナ

「ありがとう。 こちらこそよろしくね。

 勉強の読書の休憩きゅうけいねて、紅姫にも声を掛けておいてくれるかな?


 ボクが洗濯物を干してから、ひとやすみのお茶をいれるから、ふたりとも付き合ってね。」


黄花

「はい、よろこんで。」





 ルナ、紅姫、黄花は、リビングルームで、羊羹ようかん抹茶まっちゃあじわっていた。


紅姫

「うまい、このような贅沢ぜいたくをできるとは、つい先日までは想像そうぞうできませんでした。」


黄花

「おいしい。 疲れた頭が洗われたようだわ。 もうひと頑張がんばりできそう。」


ルナ

「ふたりといっしょのお茶会はいつもの3倍、楽しいよ。」


紅姫

「ルナ様、わたしもです。」


黄花

「ルナさん、わたしもですわ。」


ルナ

「ありがとう。」


 それから、しばらくして、3人はギルドに出かけようとしていた。

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