ACCIDENT

「あ、すいません。間違えました~」


ガチャっと扉を閉める人間。


「…………んじゃなくてぇ!」


「え、あ、ビックリした」


「え、話聞いてた?私今名前名乗ったよね?」


「あ、名乗りましたね。」


「じゃあ!名乗り返すのが礼儀じゃない?」


「あ、吸血鬼の世界にも礼儀とかあるんですね。」


「当たり前だよ!もう!」


プンプンと怒る吸血鬼。


「それは失礼しました。僕の名前は色嶋 凪(しきしま なぎ)」


「しきしま なぎ………うんうん。いい名前だ。」


「あ、そうですか?それは良かったです。レイナさんもいい名前ですよ。」


「そう?ありがと!」


「ということで………んじゃ」


「いやいやいや、ちょっと待って。」


「うわ。ビックリ。吸血鬼って実態あるんですね。触れるんだ。」


「触れるよ!じゃなくて!」


「じゃなくて?」


「ナギは何か私に対するアクションを間違えている!」


「アクション?」


「そうだよ!アクション!こう……うわ~!とかあ~!とかスゲーとかさぁ?」


「何ですか?リアクションが欲しいんですか?」


「いや………その………こんなこと自分で言いたくないけど私吸血鬼だよ?」


「はい。分かってます。」


「じゃあ何かスゴーいとかなんかあるじゃん!」


「あ、俺そういう感情出さないようにしてるんです。」


「何で?」


「疲れるじゃないですか。」


「疲れる?」


「オレ省エネで生きたいから。リアクションも省エネで。」


「いやいや。こういう時はリアクションとってよ!」


「そー言われても………もう何かダルくなってきましたし。」


「ダルっ……?てかその頑なに下へと下がろうとする意識はどうしてかな?」


「え、だって吸血鬼なんですよね?」


「吸血鬼だよ!だから!」


「だったらあの事件の犯人ってことでしょ?」


それは今街を騒がせている変死事件のこと。


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