ペットボトル犬
@kitanokaneuo
ペットボトル犬(ちょっと改作)
今日はゴミの収集日です。
ゴミステーションの掃除も町会役員の仕事なのです。
最近は、暑くて飲料水の使用料も増え、ゴミステーションにもペットボトルの山がいくつもできています。
ペットボトルの山を片付けながら、汗が出てきます。
ゴミステーションの掃除を終えて家に帰る途中のことです。
ヘンテコ発明家の家の近くを通ったときに、ポコポコという変な鳴き声を聞きました。
犬でもないし猫でもない。もちろん、鳥の声でもないのです。
またまた、変な物でも発明したのかなと声をかけてみました。
「こんにちは、いますか」
いつもだとすぐ返事がくるのに、今日はシーンと静まり返ってます。
なのに、ポコポコと変な鳴き声だけがしています。
勝手に入るのも流石にちょっと、と思ったときに後ろから声をかけられました。
「オー、金魚どうしたんだ。誰もいないところに泥棒か」
「あんたのところに入っても金目の物はないじゃないか、誰が泥棒だ」
「まぁね金目の物はないなぁ」と笑うのです。
「あの、ポコポコ言ってるの、なんだよ」
「あっ、あれは俺のペットだ」
「ペット ? ものぐさなお前がペット、似合わないなぁ。ペットが可愛そうだから止めとけ」
「大丈夫だよ。俺でも飼える手間いらずのペットだから」と言って家の奥に行ったのです。
戻ってきたときには手にペットボトルを抱いていたのです。
「お前のペットって、ペットボトル ?」
「そうだよ、名前にペットがついてるから、こいつら生まれながらにペットなんだよ」と言ってペットボトルの首を摘まんで、撫でているのです。
ペットボトルが、首を細めてより細くなって、発明家の方に口を伸ばしています。
「こいつは鳴かないし、食べないし、人に迷惑かけない究極のペットだよ。可愛がってやると懐くし、最高だよ」
「どうなっているんだよ」
「ペットチップと小さな手足キット、このペットチップと手足キットを付けるとヨチヨチ動いて、懐いてくるようになるんだよ。今のところ、ペットボトル用しか無いけど」
「餌はいらないのか」
「食べることはないから、但し水は飲むからな。スポイトで飲ましてやるんだ、可愛いよ」
抱いてるペットボトルの中に水が一杯に入っていた。
「その水はどうするんだよ、一応排泄物なのか」
「違うよ、排泄なんかに何もないから、タダこれは溜まっているだけなんだから、週に一度ほど逆にして出してやるんだよ」
「それはつまんないな、見た目にも汚いし。どうだその水、お尻というか口から思い切りだしたら飛ぶんじゃないか。ペットボトルロケットっていうのもあることだし」と言って二人で河原に行ったのです。
ペットボトルにこっちから水を思いっきり出すんだと教えたのです。
最初は上手くいかなかったのですけど、要領を覚えるとに三度目には思いっきり口から水を吐き出して、2メートルほど飛んだのです。
暑い日なので、噴き出す水が気持ちよくて虹まで見ることができました。
「凄い、これ面白いよ」と二人で楽しんだのです。
私はそれからこのペットボトルのことをすっかり忘れていたのです。
ところが、一ヶ月もすると河原にはあのペットボトルが空に向かって何本も飛び上がっていたのです。
発明家のおじさんもいたので聞いてみました。
「どうしたのですか」
「いや、二人でやってたの見ていた人がいて、譲ってくれと言われて何本か譲ったら、他にも欲しがる人がいて、こんな状態に」
飛び上がるペットボトルから水が降り注ぎ、河原のあちこちに虹が架かってとても綺麗です。
きりもみ状態で飛び上がると、虹もきりもみしながらかかっていくのもあって、ペットボトルの個性が表れます。
高齢者のペットとして最高かも。
しかも、どのペットボトルにも顔がついているのです。
大きな目と笑っているような口がベットボトルに貼り付けてあるのです。
しかもペットチップを外したら元のペットボトルとして処分できるから、後始末にも困らないのです。
ただ、ルールを守らない人は出るもので、ペットチップを外さないまま山や河原に捨てる人が出たのです。
捨てられたペットボトルを、鷲などの肉食獣が狙っているそうなのです。
鷲に捕まえられて、山に連れて行かれるペットボトルがいくつも見られたそうです。
鷲の巣に捕まったペットボトルは、可愛そうに口を押し広げられて、中の水を飲まれるそうです。
今年の夏は暑くて、麓の池まで水を飲みにくるまでに、熱中症になる鷲が多いそうで、巣の中で水分補給してから狩りに出かけるみたいです。
なので、山奥なのにペットボトルの山ができているらしいです。
鷲にもペットボトルの収集日を教えた方が良いみたい。
ペットボトル犬 @kitanokaneuo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます