俺の中に最強が宿りました

月影

第1話 始まり

この世界には『魔力』が存在する。

それは、世界の敵の抑止力として現れた力だ

剣術を操る者を魔剣士と人は呼び、

魔術を操る者を魔術師と人は呼んだ。


―これはそんな英雄達の記録である―




「起きろ!寝坊助野郎!」

「うぇ?」

俺は、その大声によって目を覚ました。

俺の視界に映る……この男によって

「珍しい〜ね、優等生クンがスヤスヤなんてさ」

「……俺もしかして、授業寝てた?」

「そりゃもう、バッチリと!」

コイツの名前は樋口 雷斗 (ひぐち らいと)

中学の頃からの友人……じゃなくて!

マジか……授業すっ飛ばす事になるなんて

「まぁまぁ、帰ろうぜ〜」

「すまん雷斗、今日は……」

「あぁ、そうだったな、んじゃまた明日な」

そう言って、俺達は学校を後にした

それぞれの場所に向かって。



「久しぶり、か世奈」

俺の問いには返答は返って来ない

誰も答えちゃくれない。

だって、だって、だって……

俺の妹、神威 世奈 (かむい せな)は

7年前にこの世から消えてしまっているのだから。

ここは、ただの墓場なのだから。

「最近、また戦廻が忙しくなってるよ」

『戦廻(せんかい)』

敵と戦う者が集い、敵を殲滅する為の組織

そこに、俺は所属している。

《無理しないでね》

そう……聞こえた気がした、

久しく聞きた、妹の声だと感じた

本当は聞こえていないかも知れないが……

「戦うよ、この気持ち復讐心が朽ちるまで」

久しぶりに聞けた妹の声に少し涙ぐみながら、

俺は再度、そう……決意した。


―その、瞬間の出来事だった―


「ドカーン!」

俺の居る場所から、目の前の山で爆音が鳴り響いた

「ウッソだろ……」

そんな動揺の言葉を零しつつも、

俺の体は駆け出していた。

『戦廻所属外魔力解放 侵略レベル2!』

『神威空真(かむい くうま)向かいます!』

《魔力解放》

戦廻所属外魔力解放ってことは、

やっぱりマリス悪意か!

もっと速く走れ!恐らく俺が1番近い!


「あと少しだ、爆発地点まで、あと……」

「だいぶ魔力を抑えていますが、気付かれますか」

「……は?」

今、後ろから声が……

「偵察に来ただけなんですがねぇ」

"ソイツ"がそう呟いた瞬間、俺の体は吹き飛んだ

「ガァッ!」

反応……出来なかった!気配がしなかった!

明らかに、侵略レベル2の力じゃない!

途切れそうな意識の中、

俺は必死に頭を動かしていた。

「あれ?殺したつもりだったんですけど……」

「そりゃ……残念、だった、な!」

どうする?どうする、どうする!?

クッソ!もっと、冷静に考えろ!

どうすれば、俺は"アイツ"に勝てる!?

(駄目だ……"アイツ"に勝てるビジョンが)

「へぇ?勝てないって分かってますよね?」

「あぁ、さっきの攻撃で死ぬ程な」

俺が……戦廻の"平凡生"である俺が

"アイツ"に敵わないって、そんなこと知ってる!

でもそれは、立ち向かわない理由にはならない!

「負けたら、殺されるんですよ?」

「あぁ、知ってる」

―負けたら、死ぬ?―

そんなこと……俺が知らないとでも?

目の前で妹を失って、命が零れ落ちる恐怖なんて

俺が痛いほどよく分かってる!

それでも、いや、そうだから……

「やらなきゃいけねぇ時が、あるんだよ!」

「分からない……分からないですねぇ」

お前らマリスに分かって貰おうと

思っちゃいないさ……」

コイツの強さは底が知れない

きっと、コイツのせいで

幾つもの命が零れ落ちるだろう。

「私が殺す前の大勢は、命の為に必死でしたが…」

「まだお喋りとは悠長だなぁ!」

(怒りに身を任せるな)

俺が、コイツとここまで話していたのは……

「へぇ?少しは頭が回るんですね」

それは、回復を行う為と……攻撃を仕掛けておく為

「気付かなかったか?」

「私としたことが、お話に夢中でした」

《魔力出力最大 ブレイジングバレット!》

例えコイツを仕留められなくても!

少しでも、コイツを削る!

それが、俺の…俺が出来る最大限!

魔術を使用した後、俺はその場に倒れ込んだ。

(クッソ、意識、飛ぶ…一気に魔力、使い過ぎた)

煙が消え去り、炎が燃え盛る中

「無駄な努力でしたね」

ソイツは傷一つなく、そこに立っていた。

「クソ……が!」

ごめん、世奈……

俺、まだ何も出来てないのに……

ここで、"俺"の意識は途切れた。


ソウルリンク共鳴する魂

「無駄では無かったな」


―最強、顕現―














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