Faraway/if story:再会の深夜

みゅ

再会の深夜

深夜の街。人影もほとんど見られない静寂の中、奇跡的な再会が果たされた。


オーマは、夜の冷たくて涼しい空気を吸おうと、気分転換に散歩に出かけていた。深い傷を負っている彼にとって、気分転換は大事だった。ふと立ち止まり、星空を見上げる。頭に浮かぶのはオートとの思い出ばかりだ。


「鳳くん…」


その名を呟いた瞬間、背後から聞き慣れた声がした。


「逢魔、こんなところで何をしている?」


振り返ると、そこにはかつての仲間であり、心の支えであったオートの姿があった。しかし、その瞳には冷徹な光が宿り、オーマを見つめる表情にはかつての優しさは微塵も感じられなかった。


「鳳くん…どうして…」


オーマの声が震える。オートはゆっくりとオーマに近づき、冷ややかに笑った。


「お前がまだ生きていることが気に入らない。黒音様の命令だ。お前を消せと。」


オーマは信じられなかった。目の前にいるのは、かつてのオートではない。マギサの手によって洗脳され、操り人形と化してしまったオートだ。


「鳳くん、お願い…目を覚まして!僕たちは…」


その言葉を遮るように、オートはオーマの首を掴んだ。力が込められ、オーマは苦しそうに喘ぐ。


「黙れ、逢魔。お前の言葉なんて聞きたくない。」


オーマは必死に抵抗するが、オートの力は強すぎる。オートの顔には冷酷な笑みが浮かんでいた。オーマの目に涙が滲む。


「鳳くん、僕たちは一緒に過ごした時間を…」


オートの手にさらに力が込められ、オーマの呼吸が苦しくなる。視界がぼやけ、意識が遠のいていく中、オーマはかすかにオートの手が緩むのを感じた。


「逢魔…」


オートの声が微かに揺らいだ。しかし、その瞬間は短く、オートの顔には再び冷たい決意が戻る。


「さようなら、逢魔。」


その言葉と共に、オートは最後の力を振り絞り、オーマの首を折った。オーマの体が地面に崩れ落ちる。オートはしばらくの間、静かにその場に立ち尽くしていたが、やがて冷たい目をしたまま立ち去った。


オートが去った後、夜空にはただ静寂だけが残った。オーマの体は冷たく、もう動くことはない。オートの心にもまた、一筋の冷たさが残り続ける。マギサの呪縛に囚われたまま、彼は自分のしたことの意味を理解することなく、闇の中を彷徨い続けることになるのだった。


深い絆で結ばれていた二人の運命は、無残にも断ち切られた。オートの心には、オーマを殺したという事実だけが残り、彼の未来にはただ無限の闇が広がっていた。

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