悪を欺く天使様

芦屋 瞭銘

第一章 天使、下界へ

第一話 天使、下界へ

「天使リア、よろしいですか?」

「……はい」

 随分と前に、私の尊敬する御師匠様がいなくなりまして。その責任を問われて尋問席と呼ばれる一席に、私は座らされておりました。


「あなたの上位天使である天使ルべウスは堕天いたしました。その責任は、彼の下位天使であるあなたが取らなければなりません」


「…………」


 尋問席の周りには中級天使の方々が立ち、私を見下ろしています。口には出しませんがとても怖いです。

「そこで、あなたにはとある任務についていただきます」

「にんむ、ですか」

「ええ。下界に行き、魔族や悪魔のもとで彼らの策略を学んで来ていただきたいのです」


「え?」


 開幕一番に頭に浮かんだのは、今いる家を出られる喜び。次に浮かんだのは絶望だ。だって天使であることがバレてしまえば、即刻殺されてしまうのですから。

 最近は天使が殺される事件があとを絶ちませんし。


「我々天使が悪に打ち勝つためには、その裏をかかなければなりません」

 そのために悪魔の策略を学び、彼らの思考を読む必要があると。ふむふむ。そこまではわかりました。


「そこで、あなたには悪魔たちの通う学校へ潜入していただきます」

「……なぜです? 神がそう告げたのですか?」

「学校の教師陣は心無い魔族です。正体を決して明かしてはなりませんよ」

「無視ですか?」


 ちょっと理解に苦しみます。こんな命をかけた任務につかされるなんて、ルウベス様が何をしたっていうんだ。私は怒っていますよ、口には出しませんがね。


 あと……だてんってなんですか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る