5

 その日の夜、家の扉を叩く音がした。私は一人暮らしであり、友達ももういないはずなのに、こんな夜中になぜ人が訪ねてくるのか不思議だった。


 恐る恐る、窓から覗いてみると、そこには父親が立っていた。


 すっかり忘れていた。私にはまだ,家族という繋がりが残っていたのである。


 扉を開くと、開口一番に怒鳴り声でこう言われた。


 「お前は、一匹狼にでもなったつもりか?」

( 世間は狭いなー)

 「違うぞ!お前はただ、群れから逸れてしまった羊でしかない。」


 私は、ただ黙っていた。確かに一理あったし、反論したい気持ちも少しはあった。


 ただ、私は黙っていた。なぜなら、彼は、私の答えなどに興味はないからだ。 


そして、「いやそれも違うな、お前は、狼でも羊でもなくモンスターだ」と最後に吐き捨て、お札が何十枚と入った封筒を置いて出て行った。


 私はその時思った。私が仮にモンスターだとしたら、あなたは「モンスターメーカー」であると。

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