始まりか、終わりか

雪葉

物語の世界の仕組み

 今から一つの壮大な授業でもしようか。

 この小説を開いたということは、君は様々な知的好奇心を押さえきれないのだろう?

 私は教授でも何でもない。ただこの世界を鮮やかに彩る芸術家さ。


 ふと疑問に思ったことは無いか?

 『この世界はどんなふうに終わるんだろう』と。


 世界を彩る芸術家の立場から言わせてもらうが、はっきりと定められていない。


 創作をする人間の頭の中にはそれぞれ世界があり、その世界を作家や漫画家は文字や絵で形にする。


 それは形が無いただの概念で、怖いからなのか。それとも単純に世界を作るのが好きだからなのか。


 宇宙が終わる構想は三つの仮説がある。

 そのうちの一つは、完全に大きくなった後にまた縮んでいき、また始まりに戻るというものだ。

 宇宙の始まりは知ってるかな。

 宇宙の始まりはビックバンと呼ばれる大きな爆発。


 無の状態からいきなり爆発したそうな。



 ……それっておかしくないか?


 だって、何もないところから始まるわけがないのだから。


 もともとあった宇宙は、またもう一度戻り、そしてまた広がってゆく。

 そしてまた縮み、また新たな宇宙が生まれる。


 違う?


 頭がこんがらがってきたか。


 宇宙というのは神秘的でありながら、とても恐ろしいものだ。

 人間は知らないことを知ろうとする。

 知らないという恐怖を抑えるためだ。


 ねえ、君はどう思う?


 私はこう思うよ。


 新たにできた宇宙には、また同じ星が生まれ、また同じ生命体が生まれ、また同じ虫が生まれ、また同じ動物が生まれ、また同じ人間が生まれる。


 そして同じ運命を辿り、同じように滅んでいく。


 その繰り返し。


 じゃあ、それを定説としようか。


 そしたら、過去ってなんだろうね。

 前の宇宙も含めて過去?

 それとも、今の宇宙だけで過去?

 

 さっきも言ったけど、何もないところから爆発は起きると思えないよね。

 きっと前の宇宙の人が残したんだ。

 新たな宇宙を創るための何かを。

 そしてその中に、前の宇宙の記録を残したんだ。

 忘れられてしまうのは哀しいから。


 あれ、大丈夫?

 考えるのが疲れてきたね。


 前の宇宙の記録通り、運命を辿る。

 その記録を軸とし、繰り返す。

 無限にループする。

 だから、どれだけもがいても抗えない。

 結局死ぬ人は死ぬし、道を間違える人は間違える。


 天国は無いし、地獄も無い。


 そして、その記録を過去の記憶として持つ者が幾人かいるのさ。


 面白いと思わない?


 この世界は何度も繰り返す。


 友人たちと手を取り合い、化け物と戦う物語。

 魔法がまだ使えた頃の物語。

 人工知能が世界を支配しようとした物語。

 宇宙エレベーターを開発し、別の星へ逃げようとしていた物語。

 中学校に小さな子供だけの世界ができた物語。

 時間に関する能力を、皆が持つようになった物語。

 ネットのウイルスが現実世界に流出し、そのウイルスと悪戦苦闘する物語。

 二種のウイルスに感染し、死んだ友人の意志を受け継ぎ、冷凍保存される物語。

 精霊たちが怒って、この世界を、宇宙を滅ぼそうとした物語。


 それらすべての物語が繋がり、再び最初の物語へ戻る。

 こうしてみると、宇宙エレベーターは杞憂だったろう?

 ただの取り越し苦労だ。

 まだ、間に合うから、悠長に過ごしていたら、こうして精霊たちが怒ってしまい、宇宙は滅んでしまう。


 これは全て過去か?

 それとも、未来か?


 これから、生まれるであろう物語をよく読んでほしい。何かに気が付くだろう。

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始まりか、終わりか 雪葉 @yukiha1225_2008

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