恋の呪い 青髭 瞬

青髭あおひげ またたき

御歳 43歳


報われない男の話である。


君は呪われた事などないであろう。

また、呪われてみたいなんて、

到底思わないだろう。


かつて僕は親愛なる神に呪われた。


メリアナ


それがこの世で僕が唯一無二なまでに慕い、

信仰していた女神の名前である。


愛の女神である彼女は誰からも愛されていた。


女神と人間が恋をする。


それがそんなにいい話ではなかった。


何故ならば僕には予知の力があり、

いつか、そう遠くない未来で僕が彼女に切り捨てられるのを夢でみていたのだから。


なぜ彼女がそうしたのか、理由は分からない。


彼女の羽だけが僕をこの辛い現実を夢ではなく

現実なんだと僕に叩きつけてくる。


今回は何杯強い酒を飲んだのかな。


胃の底から食道へ朦朧とくる吐き気。

それに対してふわふわしながらもはっきりとした

頭の意識。


僕に呪いをかけた。

そうして、僕を女性へと変えたのだ。


何がしたくてそんな虚しい呪いをかけたのやら、

ツツジの淡い匂いを嗅ぎながら、

体が持つ訳もないのに酒のおかわりをオーダーしながら、僕はまた頭を彼女で満たした。


人生は慣れだ。

だんだん死んでいくか、

常に生き続けるより他無い。


彼女が僕から離れて、僕は彼女に置いてかれた。

捨てられた犬もこんな気持ちになるのだろうか。また酒を飲み干して、無駄に頭を働かせる。


口が酒で苦くなるので気だるく

ツマミへ手を伸ばし、また考える。


彼女は何がしたかったんだ。

何が僕をこんなしょうもない呪いへ誘ったんだ。


女性の体は男性とは違う複雑さがあり、

独特な苦労があるから、

学園にいる時だけ呪いが発動するように

理論構築を行いどうにか這うように生きている。


彼女への理解が及ばなかった

俺が悪かったのだろう。


1枚大人になるべくこの呪いを彼女が掛けた。


これが俺のできる呪いに対する理論構築だが、

それで良いと言わんばかりに学園内だけに呪いが丸く治まってくれた。


天然で優しい彼女らしい。


次の恋ねぇ…心も彼女に奪われないように

俺は生き続けなきゃいけなそうだ。


天からが見てる。

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13姫の呪いの行く末 ほし めぐま @wataamedokusen

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