第21話:新たな協力者と裏細工
ミュウラン、シェレミー、フィナが悩んだ表情で考え込んでいると後ろの窓がトントンと三回、鳴り三人は振り返ると、そこはニヤニヤと笑ったアルフレットはターニャが居たので三人は飛び上がる様に驚き慌てる。
そしてアルフレットはターニャは笑顔でバルコニーの窓ドアから中へと入る。
「よっ!話は最初から最後まで聞いたぜ!あんな冷たい態度だったのに本当は俺の事が死ぬほど好きだったとわ!」
ミュウラン、シェレミー、フィナが顔を赤くし、慌てふためく中でアルフレットとターニャは笑顔でソファーに座る。
「いや!あの!その‼し!信じられない!っと‼思うけど!」
慌てながら弁解する様に言うフィナの姿にターニャは落ち着かせる。
「まぁまぁ、落ち着きたまえ。それに実は私もアルフレットも君達と同じ転生者なんだよ」
「「「ええっ⁉」」」
それを聞いたミュウラン、シェレミー、フィナは驚く中でアルフレットは口に銜える火の点いたタバコをテーブルに置かれた灰皿で消す。
その後、アルフレットとターニャは自分達が逆恨みと事故で死んでこの異世界へと転生した元日本人である事と包み隠さず話し、そして自分達を転生させた神が信奉者を集める為に戦争を画策し、それに歯向かう戦いをしている事を彼女達に話す。
アルフレットとターニャの話しを聞いたミュウラン、シェレミー、フィナは両手を震わせながら愕然としていた。
「そ!そんな‼神が・・・私達をこの世界に転生させて下さった神が!まさか!そんな事を‼」
シェレミーは信じていた神の真の姿に絶望しているとアルフレットが笑顔で彼女の側に座り、優しく背中を摩る。
「信じたくないけど、これが現実だ。俺もそれを知った時は絶望で笑うしかなかったよ。でも俺とターニャはそんな狂った神に一泡吹かせる為に宣戦布告したんだ」
「我々の知っている事はこれで全てだ。次は君達の身の上を放してくれ」
ターニャからの質問にミュウラン、シェレミー、フィナは覚悟を決めた様な表情で頷く。
そして最初に口を開いたのはミュウランであった。
「では私から。私は前世、アルフレット様とターニャさんが生きてい時代より古い、正確には1800年代の人間です。前世の私の名は“エリザベス・ロザンナ・ギルバート”、人々は私を“ローラ・モンテス”と言います」
「私、シェレミーはミュウラとは少し経った時代、1800年代後期から1900年初期の人間です。前世の私の名は“マルハレータ・ヘールトロイダ・ゼレ”、人々は私を“マタ・ハリ”と言います」
「私、フィナはアルフレット様とターニャさんと同じ日本人ですが、生きた時代は明治から昭和の人間です。前世の私の名は“
三人の前世を聞いたアルフレットとターニャは驚く。
「何⁉ローラ・モンテスに!マタ・ハリ‼しかも
「こいつは驚いた。私でも名前は聞いた事はあるぞ。まさにこの世界で歴史に名を刻む有名人に会えるとは」
少し慌てるアルフレットとターニャであったが、一瞬で冷静さを取り戻す。そしてアルフレットは三人にある提案をする。
「ミュウラン、シェレミー、フィナ。俺とターニャは狂った神の計画を止めたい。参謀本部と保守派の講和とは別に幅広い貴族達と繋がりを持つ君達にも是非、俺達に協力してくれ。無論、無理にとは言わない。俺と婚姻を結ぶだけで結構だ」
そう笑顔で言うアルフレットに対してミュウラン、シェレミー、フィナは笑顔でソファーを立ち、並んでアルフレットの前に立つ。
「いいえ、神の間違いを正す為ならば私達は断わりません。アルフレット様とターニャさん」
ミュウランがそう言った後に三人はアルフレットとターニャに向かって
「ミュウラン・ファン・ドゥートビッヒ、微弱かもしれませんが、是非、協力させて下さい」
「シェレミー・カールゼン、出来る限りではありますが、是非、協力させて下さい」
「フィナ・アドラー・ゲルマー、お支えする事しか出来ませんが、是非、協力させて下さい」
三人からの協力の申し出にアルフレットとターニャは笑顔となり、ソファーから立ち上がる。
「ありがとう、君達。じゃ改めて、長い戦いにはなるが、よろしくな」
「ああ、多少、荒っぽい頼みがあるかもしれんが、よろしくな」
アルフレットとターニャはミュウラン、シェレミー、フィナとお互いに笑顔で握手を交わす。そして同時にお見合いは無事に成功し、アルフレットとミュウラン、シェレミー、フィナは正式に婚姻するのであった。
■
それからの二週間は目まぐるしい物であった。アルフレットはいつもの軍服姿でミュウラン、シェレミー、フィナの実家に向かい両親に挨拶し、結婚式の準備と新居探しをした。
春の花が段々と咲き始めた日の朝、帝国の南部にあるシュレーディノ試験空軍基地を訪れていたアルフレット達は新型の試作機の視察に来ていた。
「それでアル、結婚式の準備は順調なのか?」
滑走路へ向かう中で笑顔で問うターニャにアルフレットも笑顔で答える。
「ああ。無論、順調だよ。三人の両親とも挨拶は済ませたし、新居は元は皇族が使っていた旧第十一別荘さ。帝都から北東にある屋敷だ」
「へぇーーーーっいくつか売り出されている皇族の別荘の中でもっとも人気のある第十一別荘をよく購入出来な」
するとアルフレットはニッコリと笑いながら右の人差し指を立て口に近付ける。
「実はなターニャ、皇帝陛下の口添えで別荘をタダで譲ったんだ」
アルフレットからの口から出た入手方に流石のターニャでも驚く。
「なっ⁉タダ!無償で貰ったのか⁉」
「ああ。陛下は俺達の活躍を高く評価してくれてなぁ。俺の結婚祝いを兼ねて別荘を恩賞として頂いたんだ」
「へぇーーーーってことは我々、第1装甲軍にも何か褒美があるのかな?」
「ああ、その予定らしいぞ」
アルフレットが笑顔で頷きながら言うとターニャはウキウキした笑顔になる。
滑走路前に着いたアルフレットとターニャの他に陸海空の少将や中将、他に各兵科の大佐階級の将校が集まっていた。
今回は次期新型軍用航空機の試験航空で“ドルニエDo335V プファイル”、“メッサーシュミット Me262A-0 シュヴァルベ”、“ハインケル He162A-0 フォルクスイェーガー”、“アラドAr234B-0”、“ホルテンHo229”、そして忌まわしき科学者、シューゲルが制作した“メッサーシュミットMe163A コメート”が揃っていた。
「げっ!あのマッドサイエンティストの試作機もあるのか‼はぁーーーっ奴の機体が採用されたどんな悲劇が起こるのやら」
手渡された資料を見て嫌な表情をするターニャに対してアルフレットはニコリと笑う。
「大丈夫だターニャ、少し卑怯だが“ある細工”をしてある。心痛いが、あいつを失脚させる為にはな」
意味深な事を言うアルフレットにターニャは不思議そうな表情をしながら首を横に傾げる。
そして試験飛行が開始され、ドルニエDo335V プファイル、メッサーシュミット Me262A-0 シュヴァルベ、ハインケル He162A-0 フォルクスイェーガー、アラドAr234B-0、ホルテンHo229は高い機動力と性能を見せた。
だが、シュヴァルべとフォルクスイェーガー、Ar234はジェットエンジンの信頼の低さと燃費性が悪く、また高コストである事が欠点となった。またHo229も
一方、ドルニエDo335V プファイルはジェット機には及ばないが、双発機とは思えない速度と機動力、汎用性の高さを示した。ただし制作コストは通常の双発機よりやや高い事が判明した。しかし、設計の見直しによるパーツの一体化でコストが抑えられる事から機体評価結果は『設計見直しによるパーツの一体化が完了次第、採用決定とする』と見事、次期主力機の座を獲得した。
最後のロケット戦闘機であるコメートは合成化学燃料の危険性の高さと余りにも短すぎる飛行距離、さらに生産コストの高さが目立った。さらに飛行中にエンジンの異常加熱が起こり墜落した。テストパイロットは無事に脱出したが、設計段階でエンジンの未熟性があったのに採用を勝ち取る為にシューゲル自らデータ改ざんをした事が発覚、機体評価結果は『不採用。シューゲル技師はデータ改ざん罪で兵器開発部門から永久追放とし
時は夕暮れ、帰りの列車に乗る際にターニャは笑顔でアルフレットに近づく。
「おい、アル。お前の言っていた“細工”ってデータ改ざんの事だろ。まったく
ターニャからの指定にアルフレットは立ち止まり、振り返るとニヤッと笑う。
「さぁーーーね、何の事やら。俺は何も知らんよ」
そう言うとターニャはクスっと笑い列車に乗り込むのであった。
あとがき
大戦末期に登場したドイツの初の第0世代ジェット戦闘機や正式採用されるも実戦配備が間に合わなかった幻の双発戦闘攻撃機が登場です。
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