021:新たな動き

021:新たな動き

 2代目百鬼会を脱会したのは執行部で言えば菅原組・加守田組・竹中組の3つで、その下部組織も根こそぎ持っていってしまった。そして山泉組の若頭である市拳組も3つの組織と共に脱会した。



「こん度は誠に申し訳ありゃしぇんやった!! うちん指導不足なしぇいで、会長たちに多大なる迷惑ばおかけしたしました………責任ばとって山泉組ば若頭に任しぇ引退します」


「ちょっと待て、先代から大いに世話になってる山口を失うのは、百鬼会にとってはマイナス過ぎる!! どうだらか、考え直いてもらえんか?」


「ばってんそれじゃ俺ん気が治らんとです」



 今回の責任は自分にもあると言って、山泉組の山口のオジキは引退すると言ってきたのである。

 しかし貢献度からも山口のオジキに、ここで抜けられてしまっては百鬼会にとってはマイナス過ぎると登吉会長が引き止めようとする。

 それでも山口のオジキは覚悟を決めているので、それでは納得できないと渋るのである。



「それじゃあ俺からの提案なんだが山泉組は下の者に任せて、山口は2代目百鬼会の名誉顧問として残ってくれんか? これからの百鬼会に、まだまだ必要だ」


「ほんなこつ良かとなんですか? 会長が、そこまで言うてくれるんやったら非力ながら尽力しゃしぇていただきます!!」


「よし。それじゃあ2代目山泉組の組長を、早速ながら直参に上げる事にしざぁ………それと全体に言いたい事がある。これから直参に上げるに値する人間を、他薦でも自薦でも執行部に紹介するようにな」



 登吉会長は山口のオジキが抜けた穴を、簡単に埋められるとは思えないので名誉顧問として残す事にした。

 美木舎弟頭も初代会長が死去した日に、組を若頭の人間に任せて引退した。これ以上、百鬼会の人材が減ってしまったら、運営に関わると考えていた。

 そこで他薦でも自薦でも直参にあげられる人間は、片っ端からあげるようにと全体に言った。



「早速ながら直参に推薦したい人間がおります!! そらウチで若頭をやってる青山ちゅう男です!!」


「おぉ確かに奈良県を制覇した立役者だと聞くな。そうだ、そういう奴を直参に上げる!! あとは人事に関して詳しい事は、次回の集会で話す」



 オヤジは兄貴を直参に上げるべきだと推薦して、それは口約束ではあるが会長に認められた。

 そして人事に関して次回の集会で、発表するからと解散になったのである。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 俺と兄貴は本部で会議があると聞いたので、オヤジが帰ってくるまで事務所で待機していると、またも頬がコケたオヤジが帰ってきたのである。



「オヤジ、また会議大変だったんすか? どうもこうも内輪揉めしてる時って大変ですねぇ」


「大変なんてもんちゃうぞ!! こっちは毎回のように胃ぃキリキリして体に悪いわ」


「それで今日の会議は、どんな内容やったんですか? 2代目は裁量がある人ですか?」


「あっそうやった、そうやったわ!! 青山を直参に推薦したとこ認めてくれるんやて。青山には、新しい組を作ってもらうねん」



 会議の内容を聞いてみると兄貴が直参になる事が、ほぼ確定したと聞いて言葉を失う。

 そして顔を見合わせてから俺と兄貴は、驚きの声を事務所内に響き渡るくらいの大きさで出す。



「俺が直参ですか!? そんな早過ぎまへんか?」


「ええか? ウチには有能な人間を、二次団体に置いとく余裕はねえんだ。そやさかいキチンと直参に上がって、会の為に尽力してくれや」


「そこまで言うなら直参の話は受けますが………組を作らなあきまへんか? そこまで下を作るの得意ちゃうんでっけど」


「そやかて直参に上がるには、自分の組を待つ必要があるんや。青山の気持ちは尊重したるが、下に人間を作る事に慣れとけ」



 オヤジに直参になれと言われてしまったら、兄貴が断れるわけがなく頷いて了解した。

 直参になるのは良いけどと、兄貴は子分を作るのが苦手で断りたいが、さらにオヤジが子分を作る事に慣れておけと説得した。

 さらなる頼みに断れるわけがなく、兄貴は項垂れながら全てを了解する事になったのである。

 これで俺の広瀬組から兄貴の組に移籍となるのかと、少し寂しいと感じている。



「俺も兄貴と一緒に新しい組を大きくする為に、微力ながら頑張らせていただきますよ!!」


「は? 俺の組に花菱を入れるつもりはあれへんぞ?」


「えっ!? そうなんですか!! 兄貴の組に入って舎弟頭になれるもんだと思ってましたけど!!」


 

 どうやら俺を兄貴の組に入れるつもりは無いらしい。

 まさかの事態に俺は動揺していると、兄貴は主力の戦力となっている俺と兄貴が、一斉に抜けた後に広瀬組の事を考えれば当然だと説明してくれた。

 まぁ兄貴の子分じゃ無かったので、なんだか薄々気がついていたような気がしたが、ガックリと凹んでいるとオヤジが肩をポンポンッと叩いてくれた。



「青山の抜けた穴は大きいでぇ!! 花菱には、正式に若頭となって広瀬組を支えてや!! このまま出世したら花菱かて直参になって青山とタッグが組めんねんで」


「それなら全力で頑張らせていただきます!! 若輩者ですが粉骨砕身働きます!!」


「せや!! その調子や!!」



 オヤジは兄貴が抜けたところに、俺を置いてくれると言ってくれた。つまり俺は広瀬組の若頭に就任するという事なのである。

 まさか自分が広瀬組の若頭になれるとは思っていなかったので、兄貴に負けないようにと気合が入る。

 それの気合いの入りようは、翌日から大阪中の半グレ集団をまとめ上げる行動に滲み出ている。



「良いか!! 大阪中の半グレ集団を、この華龍會にまとめ上げろ。俺が広瀬組の若頭になった以上は、兄貴に負けないようにオヤジを百鬼会でトップに持っていく」


「さすがはオヤジですね!! まさな百鬼会に入って3ヶ月で広瀬組の若頭に就けるなんて!!」


「良いか!! 華龍會のメンバーである、お前たちにも期待されてるって事を忘れるなよ!! お前たちの評判が、広瀬組に広がると思え!!」


『はいっ!!!!』



 俺は華龍會のメンバーたちに気合を入れさせて、ヤクザも恐れない半グレチームの吸収に尽力する。

 そうする事で広瀬組内での武闘派を担おうと考える。

 これは中村武闘会に負けないようにと、俺なりに考えての行動なのである。

 すると2024年の終わりに近づいた、12月20日に大阪中で武闘派として有名なグループのリーダーたちが俺の前に集合した。



「コイツらは《青坂一家》《ハンソングループ》《アトラス》《エンジェルナイツ》です。各自が準指定暴力団に指定されている組織です」


「へぇ……という事は、相当な腕なんだろ? 期待してるからよ。広瀬組の為に頑張ってくれや」



 各リーダーたちは顔がボコボコに腫れ上がっていて、華龍會にやられたのだと分かった。

 それでも仲間に入ってくれるというのならば、華龍會の家族として迎えない手は無いと思っている。



「あっそう言えば、華龍會に入ったからには薬のシノギは禁止だからな? これを守らなかったら、テメェらを本気で潰すからな」


『はいっ!!!!』



 百鬼会に入ったからには、薬でのシノギは禁止だと念を押して警告しておくのである。

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