無題
@sakuya9
17歳
この作品は、才も富も持たぬ廃人が、ただ脳内泳ぐ言葉を書き連ねているだけのものである。
時として思う、人は何を原動力に生きているのだろうか。
通学路で私の視界を遮る二人の高校生が左からぬるりと現れた。
端的に言ってしえば、二人はとても楽しそうだった。
そして訳もなく
二人の声が、動きが、表情が
未だに記憶の中に深く根付いている。
心の奥底で、微かに彼女らを羨む気持ちがあったのではないかとも考えたが、直感が怪訝そうな顔で首を横に振った。
今思えば、その場にいた私は彼女たちの、いずれ終わる幸せに縋りたいという気持ちが理解できなかったのだろう。
きっと世間一般的に見れば、群衆の理解を得られないのは私の方だ。
それは重々承知している。
きっと深く考えたところで何も得られることはないだろう。
私の考えていることは、光合成の感覚を理解しようとしているような、イカれた考えである。
でもこの疑問が生まれたのはきっと、才を持たぬ分際で幸せを求めすぎているからだろう。
私は何かを好きになるという感情に対して、いつの間にか恐怖心を感じるようになってしまった。
いくら手を伸ばしたところで、私の手はいつまで経っても空を裂き、遠ざかって行く何かは、私の目の前で見ず知らずの誰かの手に、いとも簡単に渡ってしまう。
何一つ不思議なことは無い。
ただ17年ずっと、何も成し遂げられなかった人物が、同じ行動を繰り返しただけだ。
でも幸せの甘味を味わってしまうと、私の理性は粉々に砕き、また何かに期待してしまいそうになる。
だから、幸せであることは、夢の中だけでいい。
何かに対して時間も労力も費やせない愚者が言っていい言葉ではないが、ただただ私は、傷つくことが怖い。
私の心臓には徐々に苦しみが溜まって行く。
解決策を見つけるのは遠の昔に諦めた。
チャイムの音が充満する教室の中、緩やかに私は死期を待つ。
澄んだ空気に、紅葉が靡いている。
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