第28話 汗だくスケベしようと企んでるヤツがいるんですわ!!

「え? 本当ですか!?」


「ああ……催眠ってこんなに種類あったのか?」


 言いつつ、そのアプリの詳細を確かめていると、音ノ葉と滝宮さんがスマホを覗き込んできて。俺は二人に見えるようにしながら、全てのアプリを確認していった。


「俺らと同じ催眠はもちろん、いつかの女子が使っていた音声催眠……催眠が使われた場所を把握するマップに、現在の催眠持ちの数まで確認出来るものもあるぞ」


「えっ、そんなのチートじゃないですか!?」


「そのチート持ちが仲間にいるのはとても心強いねぇ。催眠を撲滅させることも、もう夢ではないかもしれないね」


 確かにこれが加われば、俺らの戦力は一気にアップする。場所が分かるのなら、一気に戦略が広がるからな……それで松丸さんは俺らの反応を見て、納得したように。


「もしかして……みんなはこの催眠しか持ってないの?」


「うん。これだけ……ってか俺は、催眠すら持ってないんだけどな」


 すっかり俺が催眠撲滅軍のリーダーみたいな立ち位置になっているけど、実際は俺が一番戦力が低いんだよな……未だに偽の催眠アプリすら入れてもらってないし。滝宮さん、あのこと忘れてんじゃないかな。


「そうなんだ。お豆は私にだけ、特別な力をくれたの……?」


「というか本来はそうするつもりだったんだろうね。それが全生徒の記憶改変なんかを行ったから、催眠アプリが他の人に飛んだんだろうし」


「とにかくこれがあれば、もっと効率的に催眠持ちを潰せるな……一旦、催眠持ちの人数も見てみよう」


 言いながら俺は『サイミンニンズウ』と書かれたアプリをタップしてみた。そこには『53』と表示されていて……。


「これは……53人ってこと? まだこんなに催眠持ちはいるんだね……」


「ゴールが見えたら頑張れるよ。今まではいつ終わるかも分からなかったんだから……音ノ葉、滝宮さん、松丸さんを除いて残り50人。50回消せば、また世界に平和が訪れるんだ」


 きっと少ない回数じゃないだろうけど……それでもゴールは見えた。俺らは安心して男が暮らせる世界を取り戻さなきゃならないのだ。そして俺の言葉に音ノ葉は頷いてくれて。


「……やりましょう。残り50人全員ぶちかまして、平和な世界を取り戻しましょう。きっと私達ならできるはずですわ!」


「ああ。我々は賢いからな……一人を除いて」


「あ? ぶち殺しますわよ」


「誰も君のこととは言ってないんだがねぇ……」


 そして毎度お馴染みの喧嘩が始まる。その様子を横目で眺めながら、俺は笑って。


「ははっ。そんなわけだから松丸さんも協力してくれると助かるよ。危険は尽きないだろうけど……きっと仲間が助けてくれるから」


「う、うん! 私も頑張るね……!」


 ……と、ここで。机に置いていた松丸さんのスマホに通知が入ってきて。


「あっ、隆太様! 催眠アプリの反応がありましたわ!」


「なに? どこだ?」


 そして四人でスマホを覗き込む……音ノ葉がマップを開くと、体育館の端っこの方に点滅しているマークが表示されていて。


「体育館ですわ……きっと男子バスケ部と汗だくスケベしようと企んでるヤツがいるんですわ!! 絶対に許せませんわ!!」


「一々私情入ってんだよな、お前……まぁいい、行くぞみんな!」


 そして俺の号令で、皆は部室から飛び出すのだった。


「おー! やったりましょう!!」

「フフっ。たまには私も働こうかねぇ」

「い、行きましょう!」

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