催眠アプリが流行っている貞操逆転世界に転生してしまった

道野クローバー

第1話 どうやら貞操逆転世界に転生したらしい

「んん…………」


 長い眠りから目覚めた俺は、伸びをしながらベッドから身体を起こす。そのまま周囲を確認してみると、ピンク色のカーテンが俺を囲むように閉められていて……近くに置いてあるかごの中には、白い運動帽子が入っていた。


「確か俺は、保健室に運ばれて……寝てたんだっけ?」


 呟きながら、俺は帽子を手に取る。裏側には『江野隆太えのりゅうた』とフルネームで名前が書いてあった……どうやら今の俺の名前らしい。


「……」


 体育の授業中。俺は頭に野球ボールを当てられた衝撃で、前世を思い出していた。そう確か……俺は前世で、トラックに轢かれそうになっている子猫を助けて。そのまま轢かれて死んだんだっけ。果たして猫は助かったんだろうか……。


 まぁ……元の世界に未練はないから、別にいいんだけど。それで転生した俺は、今世は平凡な男子高生、江野隆太として生きていた。


 隆太は中肉中背で、運動も勉強も平均的だけど……ビジュアルだけはそれなりに高レベルであった。まぁこの要素だけで、前世の俺と比べ物にならないくらい恵まれてるんだけどな。


 それで……この世界は前世と似たような世界に見えるのだが、明らかに異なる点が2つある。


 ひとつは男女比。前世では、ほぼ1:1の割合だったのに対し、この世界は男女比が1:30なのだ。もちろん男が1の方で……理由はよく分からないけど、どうやらこの世界は男が生まれる確率が非常に低く。故に男は男であるというだけで、かなり持て囃されるのだ。


 今まではそのことを自然に受け入れていたけど、前世の記憶を取り戻してからは、違和感が凄いんだよなぁ……。


 そしてもうひとつが……男女の貞操が逆転しているということだ。そのためこの世界では女性の方が圧倒的に性欲が強く、漫画雑誌の表紙には水着の男が表紙を飾り。イラスト投稿サイトでは、男の下半身……◯んちんが強調されたイラストが人気で。AV男優なんかは、神と同等の存在として崇められている。


 そんな世界に俺は転生してしまった。それに気付いた時、俺はめちゃくちゃ喜んだ……わけではなかった。ずっと性的な目で見られるのは、そんなに気分の良いものではなかったのだ。例えそれが美人相手だとしてもね……。


 それに俺、前世からゴリゴリの2次元派だし……多分それが一番大きいんだろうな。なんならこの世界に男性向けのイラストが少ないことに気付いてからは、かなり絶望したし。もう俺、自給自足するためにエッチな絵を描く練習しようかな……。


 それでここは……明才みんさい高校。この世界では基本、男子は男子校に行くらしいが、俺は共学に通っていた。理由は家から近かったかららしいけど……もう少し危機感とか持ったほうがいいぞ隆太。


 でも、数少ない男子生徒ということで、俺は学校内では超が付くほどの高待遇を受けていた。まぁ……悪い気はしないけれど。でも普通に接してほしいって思いもあるんだよなぁ……。


「……ん?」


 このタイミングでガラガラと扉の開く音が聞こえてきて……カーテンが開かれる。そこにはスクールバッグを持った、黒髪ロングの清楚な感じの女の子が立っていて。


「あっ、江野くん! 具合はもう大丈夫?」


「えっ? えっと君は……芹沢せりざわさんだっけ? もう大丈夫だよ」


 俺はその少女にそう伝える。確か彼女はクラスの保健委員で……きっと俺の様子を見に来てくれたのだろう。それで、名前を呼ばれた彼女は嬉しそうに微笑んで。


「あー良かった! 私のこと忘れてなかったんだ! 江野くんは頭打った直後、ずっと混乱してて支離滅裂なことばっかり言ってたから、心配だったんだよー?」


「あれ、そうだったっけ……?」

 

 直後のことはあまり記憶に無いけど……まぁ前世の記憶を一気に思い出したんだから、そりゃ混乱するよな。今は落ち着いてるから、もう大丈夫だとは思うけど。


「うん。それで今日は念のため早退しときなさいーって先生に言われたから、江野くんの鞄持ってきたんだよ! まぁもう、放課後になっちゃったんだけどねー」


 そう言いながら彼女は、俺の鞄を机の上に置く。


「そうだったんだ。ありがとう、助かるよ」


「江野くんに褒められちゃった……えへへ」


 芹沢さんは照れくさそうに笑いながら、保健室内を歩き回る。そして入口の扉の目の前まできたところで、小さな声に変わって。


「それでね……江野くん。今日さ、保健室の先生いないんだって」


「えっ?」


 その俺の声に返事するように『ガチャ』っと、扉に鍵がかかる音が聞こえてきて。


「そ、それってどういう……?」


「だからさ。私と気持ち良いこと……しよ?」

 

 そして芹沢さんは胸元のリボンをスルスルと緩めながら……俺のいるベッドへと、近づいて来た。


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