魔物調査員のダンジョン調査配信
ニア・アルミナート
第1章 バズっちゃったか……
第1話 さすがにそれはなくないですか!?
「皆さんこんにちは~! 魔物調査員こと、古林でーす! 今日も魔物の生態をおつたえしていきたいと思いまーす」
私の名前は古林 結華。チャンネル登録者数0の超底辺ダンジョン配信者。5年前、世界にはダンジョンが出現した。その混沌の時代を乗り越えて、今はダンジョンが娯楽になった。ダンジョンを配信している一人者は登録者が2000万人を超えている時代。私もそのビックウェーブに! って思ったんだけど……。
今日も接続数0の画面を眺めながらダンジョンの中を歩いている。
今日歩いているのは八王子ダンジョンの3層。この日本で最も浅い階層にあるフィールドダンジョン。
フィールドダンジョンには、普通の迷宮型ダンジョンとは違って、魔物独自の生態系が構築されている。私の配信ではそれを調査して発表している。加えて魔物の弱点属性も発表も。
そんなわけで私はいつもいろいろなダンジョンのフィールド階層で配信を行っている。
……まったくバズったりはしないけど。それどころか弱点属性について発表すれば嘘松扱いされる始末。
はぁ、いつか有名配信者になりたいなぁ。有名になって友達にいっぱい自慢するんだ……。
八王子の3層のフィールドダンジョンは草原のフィールド。この草原では、狼系の魔物が出る。まぁ、あの大きさだと野犬となんらかわらないから、魔物っていっていいのかよくわからないんだけど……。
って、言ってるそばから来たね。
「皆さん、あそこを見てください。グラスウルフですね。観察していきましょう!」
実は私は潜伏系のスキルをもっている。それに加えて、魔物の情報がある程度わかるスキルも。
これを活用すれば、魔物にはバレずに近くから観察をすることができる。
魔物の情報は弱点属性と、探知範囲くらいしかわからないけどね。
ちなみにだけどグラスウルフの探知範囲はすごく狭い。隠密スキルを使えばたぶん、触れる。
見た目は完全に犬だし、少しなでてみたいなと思ったこともあるけど……。
あれでも魔物。たまに死者がでることもある。
生体観察が終われば探索者の一員として、倒さないといけない。
そんなことを考えていると、グラスウルフが、草原の草を倒し始めた。
……あれはどういう行動だろう。寝る前の寝床作りとか、それとも縄張りの主張とかかな?
「皆さん、ご覧になりましたか? フィールドの魔物はダンジョンが生み出す人類の敵ではありません。生理的行動だって存在するれっきとした生物です。迷宮層の魔物は人類の敵ですけどね」
私が配信を通して伝えたいことは、これだ。昔、探索者を本気でやっていた時に考えたこと。フィールドダンジョンの魔物は敵ではなく、生きるのに必死な生物だ。戦闘を避けることだってできる。
フィールドの階層の魔物は、迷宮層の魔物より、強い。戦闘を避けることで被害を減らすことができる。だれも見てないけど、これは私が発信し続けること。
そうしないと、攻略が進んだ先で、取返しがつかないことが起きるから。まったくスタートダッシュを切れなかった私が配信を続けるのも、これが理由。
……観察を続けていると、グラスウルフは押し倒した草の中心で眠り始めた。
うん、間違いなく、あれは寝床作りの行動だね。メモメモ。
「グラスウルフが寝床を作って寝る様子が記録できましたね。睡眠時間の記録にうちります。見てくれている人がいれば、雑談でもするんですけど……だれもいないですからね」
そんなわけで特に見どころもないグラスウルフのおやすみ配信が始まってしまった。うーん退屈。
でも魔物を観察し続ける時間は幸せでいいなぁ~。
◇◇◇
グラスウルフを観察し続けて3時間。あのグラスウルフ、起きないなぁ。
「いつまで寝てるんでしょうか……。というか、3時間ずっと同時接続が0なのは作為的なものを感じませんか?」
サムネイルの才能がないのかもしれない。さすがにちょっとへこむかな……。
「ん? ちょっと待ってくださいね?」
私は魔力が一か所に集まっていくのを感知した。前線から引いて久しく見なかった量の魔力の密度。
探知の魔法を発動する。魔物の反応が一つ。
魔物の反応がある方をみると、翼が生えた、巨大なトカゲのような魔物がいた。
「さすがにそれはなくないですか!?」
その魔物の名は、ドラゴン。体表のうろこが赤いところを見ると、レッドドラゴンという種類に分類されるかな。
……というか、この距離感さてはレッドドラゴンの探知範囲では?
一応鑑定……。やっぱりそうだねぇ!?
「GYAOOOOOOO!!!!」
バレたぁ!?
「皆さんいいですか。こういう不足の事態に陥ったら、逃げましょう。絶対ですよ!」
誰もいないのに何言ってるんだろう私。というか、今日低階層だから、武器もアイテムボックスも持ってきてない!
……でもこの低階層で私が逃げようものならどんな被害がでるかわからない。素手でドラゴンと戦うことになるんて、人生なにが起こるかわからないね。
「……魔法主体で、行きましょうか」
私は魔法の発動の用意をして、ドラゴンの前に歩み出た。
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