孤児院育ちの僕たちが親の愛を知るまで

ケンタン

第1話

「助…けて、ユウくん助けて」


 ピピピっといつもの目覚ましのアラームに俺は寝ぼけながらも手を伸ばし部屋に鳴り響く音を止める。


 ふわ~久しぶりに嫌な夢見たな、もうずっと見ていてなかったのにこんな時は大抵嫌なことが起きる前兆だったりするのかな。


 あの子は今どうしているんだろうか?あの日から俺は彼女と会っていないから今どうしているのか全くわからない。


 久しぶりに彼女を夢で見たことだし昔のことを思い出してみよう。


 彼女との出会いは孤児院でだ、物心がつく頃にはすでに俺達は両親に捨てられ年の近かった俺達は兄妹のように育ってきた。


 その孤児院は優しそうな院長とそれを支える元孤児院育ちのお姉さんが運営していた。


「さーみんな食事の時間ですよ、ちゃんと手を洗って食器を並べて座りましょう」


 ワーワーギャーギャーと騒ぎながら、みんなが食器を運んでイスに座りながら食事の配膳を待つ。


「今日はみんなが大好きなカレーだよ、しっかり食べて明日も1日頑張ろうね」


 週に一度のみんなが大好きなカレーであって夢中で食べている。


 食事を食べ片付けた後はお祈りをしてから眠りに入るがその前に院長の手伝いをたまに頼まれる。


「それでは、今日は翼ちゃんに頼もうかな」


 ビクッと院長に呼ばれた反応が気になったが、すぐに返事をして院長のそばに駆け出していった。


 この呼ばれた翼だが、俺と年も近く兄妹のように育ってきた女の子でこの孤児院の中でもかわいさがずば抜けていると内心ではひっそりと思っていた。


 そんなわけで院長と翼ちゃんは奥に戻っていった。


 晩御飯のカレーを食べすぎてしまい、お腹が痛くなりまだ孤児院の奥にいるであろう院長と翼ちゃんに薬を貰おうと夜で真っ暗な通路は昼と違い怖さがにじみ出ていた。


「うー翼ちゃんどこー?」俺は暗闇に怯え腹痛に耐えながら翼ちゃんを求めて進んでいくと扉の先から明かりが見えてそこに翼ちゃんがいると思い駆け出し中を覗くとそこには


「いや〜今回の子も可愛いですな〜、さすが院長です。」


「えーこの子はなかなか顔も体つきも幼いながらも育ってきて自慢の子ですよ」


 そこには院長以外にも大きな大人の人がいて、口を縛られて薄着にされていた翼ちゃんがいた。


 何が起きているのか解らなかったが翼ちゃんがひどい目にあっていることだけはわかった。恐る恐るそのまま見ていると翼ちゃんがこちらの存在に気づき助けを求めているように見えた。


「んっそこに誰かいるのか?」院長が異変に気づいたのかこちらに近づいてくる。


 俺は、あまりの恐怖と翼ちゃんを助けたい一心で物陰に隠れて院長をやり過ごす。


 院長がこちらに気づかず戻るのを見るとすぐに駆け出して外に出て近くにあった公衆電話から警察に見たことを無我夢中で話しその場で意識を失った。




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