ドッグラン&カフェ

 今日のメニューは、こんな感じだ。


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【今日の献立】


・カレイの唐揚げ

・具だくさん茶碗蒸し

・キャベツと人参のおかかマヨ和え

・ごはん

・肉吸い

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 揚げていたのはカレイらしい。


 十字の切れ込みが入ったカレイの姿唐揚げが目の前に運ばれてくる。


「おいしそう~~~! いただきますっ!」


 我慢できずに、配膳が完了する前にカレイの唐揚げに手を付けてしまった。


 身の部分はもちろんだけど、意外と得背びれの部分がイケるのだ。パリッパリの食感を堪能していると、郡司が口を開いた。


「バイト、かけもちするから」


 そう言って、黙々と茶碗蒸しや副菜の小鉢をテーブルに並べていく。 


「かけもち? どんな仕事するの?」


 口の中で、カリカリと背びれを咀嚼しながら問う。


「ドッグラン併設のカフェ」


「それって、わんこと一緒に行けるカフェってこと?」


 テラス席あり。もちろん店内でもわんちゃん連れOK。アレルギーに配慮したわんこのごはんメニューも豊富らしい。


「最高のお店だね!」


 なんでも、知り合いの店だという。


「いつも散歩で会うひとなんだけど」


「それって、もしかしてゴールデン連れてるひと?」


「そう」


 朝の散歩で顔を合わせた際、そういえばドッグカフェを経営していると言っていた気がする。


 郡司は料理の腕をいかして、カフェを担当するらしい。


「わたあめと一緒に行っていい?」


 ドッグランでわたあめと思いっきり遊んで、それから一緒にカフェでおいしいものを食べる。想像しただけで幸せな気持ちになった。青空と緑の芝生。とびきりの笑顔を見せているわたあめの顔も浮かんでくる。


「いいけど」


「あ、でもしばらくはダメだ……」


「仕事?」


「うん」


 怒涛の日々が続いている。今日は回避したけれど、残業がちらほら。来週からは、休日出勤せよとの命が下っている。


「ぜったいに乗り切ってみせる」


 力強く宣言する。


 バリバリ働くためにも、栄養をとらないと。


 私は、キャベツと人参のおかかマヨ和えに箸を伸ばした。キャベツと人参はしんなりしつつ、シャキシャキとした歯応えも残っているからうれしい。


 まろやかなマヨネーズとおかかの風味が絶妙にマッチしている。こってりし過ぎず、けれど物足りなさは感じない。野菜の美味しさも感じられる最高の副菜だ。


 無限マヨ和えなのでは? と思いながら、もしゃもしゃと口に運ぶ。


「出た、大食いリス」


 頬をまん丸にしながら食べる私を見て、郡司が言う。


 ちょっと恥ずかしい。これまでは何を言われても平気だったのに。ちょっと頬をすぼませながら(無理だけど)、もしょもしょと食べる。


 確実に意識している自分がいて、けれど認めたくないと無駄に抵抗している。


「茶碗蒸しも美味しいね」


 添えてあるスプーンが小ぶりで、ちびちび食べるのにちょうど良い。


 熱々のつるつる。出汁のきいた茶碗蒸しだった。具材はシイタケ、かまぼこ、エビ、銀杏、鶏肉、三つ葉。


 口にする機会が少ない銀杏を見つけたときはテンションが上がった。三つ葉の香りも良い。


 お茶碗が空になったので、こそこそとおかわりを試みたところ、郡司がめざとく声をかけてきた。


「おかわりなら、俺がやるけど?」


「あ、う、うん……」


「どうしたの、いつもひとのこと顎で使ってたのに」


 本当のことなので何も言えない。


「どーぞ」


 もりもりに白米を盛られたお茶碗を渡され、うれしいような恥ずかしいような心境になる。おかわりの量まで把握されている……。


「あ、ありがとう」


 まだ肉吸いが残っているので、ごはんは大盛の状態で迎え撃ちたいと思っていた。ちなみに肉吸いは、肉の吸い物という意味だ。


 端的にいうと肉うどんのうどん抜き。かつお節や昆布を使った関西風のつゆに、薄切りした牛肉、ネギ、天かす、豆腐が入っている。半熟状態の卵が入ったバージョンもあるらしい。


 大阪のうどん屋が発祥だという。なぜこんなに詳しいのかというと、ついさっき、郡司から情報を仕入れたからだ。


 湯気が立ち上る肉吸い。天かすが汁を吸って良い感じにふやけている。食欲をそそるつゆの香りに我慢できず、白米を片手に臨戦態勢に入ったのだった。

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