死と死後の世界

ピチャ

死と死後の世界

 実は死んだことがある。数回。

死ぬと、世界が都合よくなる。私の理想の仕事をして、私の慣れ親しんだコンテンツで溢れて、仲の良い友人と会える。

でも私は、その都合の良い世界に飽き飽きして、生き返ってしまった。

 だって、つまらないんだ。

私に合わせて作られた世界、そんなもの。

「死ぬまでの私」をベースにした世界が持続しても、目を見張るほど新しいものは見つからない。

まるで甘ったるいクレープ生地の中に包まれているみたいだ。

見たことないものが欲しい。わからないことがほしい。

自分で考えた新しいものは私の中で相対的に魅力が低い。


 生きてきて、欲しいものは変わってゆく。

幼少の頃はとにかく面白いものに触れたかった。

新しいもの、期待できるものに興味を示した。

学生の頃は自分の知識を補強してくれる学問が好きだった。

学校に行くだけで教えてもらえるのだから、それを利用しない理由がなかった。

だが、大学受験をしたら燃え尽きてしまった。この後何を学んでいけばいいのか、わからなくなった。ここがひとつの死だった。

専門的な授業は面白かったが、それを深掘りすることもできず、社会に出る準備もできなかった。当面の居場所がなくなったのだ。

 とりあえず就職はできたが、お世話になってばかりだった。

指示されたこととやるべきことはわかり、進めていったが、どうやらそれは違ったようだし、体力気力をコントロールできなかった。

結果、心身の不調を抱えることになった。

指示待ち人間と、勝手に余計なことをする人がいたら、私は両方の性質を持っている。

私の育った環境と同じくらいの頻度でとってきてもらった仕事をこなすことしかできない。手が空いたら困るし、業務量が多くて残業して体調崩すことも、もうできない。

マイペース(よく使われる遅いという意味だけではなく)な暴君だ。欲しいものは健康。

 ペースの合う会社なんてそうそう見つからないから、すぐにギブアップして死んでしまう。私は人にペースを合わせることができない。

 そして不満なまま死んで、死後も不満。

私ができるだけペースを合わせられる環境に行って、あとは自分を調整する。

それが一番の解決法なのに、できない。

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死と死後の世界 ピチャ @yuhanagiya

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