第4話

「ん? なんか音がするな」

 確かに空の方から、バラバラとけたたましい音がする。

 夏の夕暮れ時には、あまりふさわしくないかもしれない。こういう時には、静寂が似合うものだろうか?

 青は、空を見上げて、何かを探し始めた。

「あったあった。やっぱりヘリコプターや。もう少し静かに飛べんのか」

 それ、文句言ってどうにかなるものなのか? 構造的な問題だから、今すぐどうにかできるものじゃないだろ。

「でも、乗ってみたいんよな、ヘリコプター。なんかかっこいいやん。ぽちも乗ってみたいやろ?」

 かっこいいかどうかは、よく分からないが、空を飛ぶのは気持ちよさそうだ。

「……あれ? ヘリコプターって、犬乗れるんか? 法律に引っかかるちゃう?」

 なんでだよ。お前の中の法律だろ、それは。確かにヘリコプターに乗れるかは、俺も分からないけど、少なくとも法律には引っかかることはないんじゃないか。

 ヘリコプターの音を遠くに感じながら、道を歩いて行く。すると、また違った音が聞こえてきた。

「お? 今度は、飛行機や。いいな、旅行行きたいわ。ぽちといっしょにヨーロッパの街並みを歩いてみるのも、よさそうや」

 俺は、そもそもヨーロッパを良く知らないが、そんなにいいところなのだろうか。食べ物がうまいのか? 青が、行きたいというと、それぐらいしか理由が思いつかない。

「ぽちも気に入ると思うで、ヨーロッパ。景色もいいし、歴史もあるし、食べ物がうまいで」

 やっぱり食べ物か、お前。

「ヨーロッパは、静かな所も多いやろうな。田舎町とかで、日常を忘れるんや」

 俺たちのいる町も、けっこうな田舎だと思うが。

「そう考えると、ヨーロッパの田舎町では、飛行機やヘリコプターなんて飛んでないんやろうな。景観壊して、法律違反や」

 そんなわけないだろ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る