犬の気持ち

きと

第1話

「なぁ、ぽち。あれ、何だと思う?」

 飼い主のあおが、公園の入り口で何かを見つけたらしい。

 犬である俺には、大体関係ないものではありそうなので、大して興味はわかない。

 大きめの枝とか、ボールとかだと大歓迎なのだが。

「ぽち。あの何かを見に行こう。もしかしたら、エサかもしれない」

 道にポツンと落ちているエサは、食べて大丈夫なのだろうか。

 腹を壊す、なんてことにはならないだろうが、飼い主として道に落ちてるエサを食べさせるのはいいのだろうか。

「ん?」

 公園にいざ入ろうとした時、青が足を止める。

 何か書かれている看板を見ていた。この公園のルールだろう。公園の入口にそんなものが書かれているのは、ここ何か月で学んだ。

「『公園の芝生を荒らさないようにしてください』か……。ぽちが入ると、荒らすことになるのか?」

 歩くだけでなら、荒らすことにはならないだろ。

 犬差別か。

「よし、待ってろぽち。あれが何か、私が責任もって見てくるわ」

 そう言って、青はルールの書かれた看板の柱にリードを結びつけると、小走りで何かへと向かっていった。

 そして、すぐ戻ってきた。

 「段ボールの切れ端だったわ。つまんないな。長めの木の枝とかだったら、良かったのに」

 おお。分かっているじゃないか。

 普段は、とんちんかんだが、少し見直したぞ。

 大学生とやらでいい年らしい青でも、良い枝にかれるんだな。

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