1 new world

 二人の人物が、空き部屋に入ってくる。

スパイ「ここだよ、先生」

 そして、二人は抱えていたバッグを下ろす。スパイのバッグの中から、PCが取り出される。PCを起動され、スパイが操作を続けるなか、先生がためらいながら言う。

先生「その、刑事スパイさん」

スパイ「今は先生だ」

先生「……学生のスマホに侵入するわけには」

スパイ「先生だから?」

 先生はうなずく。

スパイ「学生たちを大勢巻き込んだ、詐欺事件も黙ってろと?」

 先生は固まる。スパイはためいきをつく。

スパイ「学生たちに、赤信号を渡らせるわけにはいかない。なにより……」

 スパイは先生にVRゴーグルを差し出す。

スパイ「まだ、終わりじゃない」

 先生はためらいながら受け取り、VRゴーグルをかける。


 先生は、学校の前に立っていた。

 彼は驚いて周囲を見渡す。そして手もみつめる。

先生「す、すごい……」


 そのとき、スパイが目の前に突然立っていた。そして彼は言う。

スパイ「ようこそ。スマートフォンの中へ」

 そして先生は驚いて周囲を見渡している。

スパイ「俺たちは、ウイルスだ。だから、自己防衛がいる」

 先生は銃を受け取る。

スパイ「エクスプロイトキットだ」

先生「えくす……?」

 スパイはため息をつき、

スパイ「撃つとバレる。扱いは慎重に」

 銃をまじまじとみつめていた先生は顔を上げる。

先生「あなたは?」

スパイ「これでいい」

 どこからともなく出てきた竹刀をみせる。

スパイ「さあ、行こう」

先生「あ、危ないですよ」

 つかつかと校門にスパイは入っていく。そしてスパイは振り返ってくる。

スパイ「警備もいないのに?」

 それもそうか、とうなずき、先生も門を通る。

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