夢想革命

天川裕司

夢想革命

タイトル:夢想革命



イントロ〜


或る国で、革命が起きそうになっている様子。



メインシナリオ〜


ト書き〈地下室のアジト〉


ブラウン「この国で革命を起こすのだ。お上の連中は今や、自分たちの事しか考えてねぇ。私腹を肥やすだけ肥やしやがって、国民の事などどうでも良いのだ」


ソルジャー「ああ。わかってるその通りだ。何しろ俺はそれを実体験した輩だからな。警察も奴らの手足。奴らの思惑1つでどうにでも動きやがる。俺は絶対に奴らを許さねぇ」


ブラウン「ふむ。お前は俺の唯一の同志だ」


ソルジャー「俺たちの他に何人も同志が居る」


ブラウン「ああ。かの日本という国でもこれまで、多くの革命が起きたと言う。この国でも起きてきた」


ソルジャー「だが今は軟弱になり、革命の1つさえ起こせないヤワな巣窟になっちまった」


ブラウン「だからこそ俺たちの手で」


ここで今、革命が起きようとしていた。政府転覆を狙う革命である。

国家反逆罪。これがどれほど大きな罪か、それを充分知った上での言動である。

つまりそれだけ、彼らの決意は固かった。


ブラウンとソルジャー、他に何人も彼らと同じ思想と決意の持ち主が居り、みんな一致団結して固まっていた。

国は彼らを相手にする上、ゲリラのテロ組織をどれだけ封殺し、根絶やしにできるか?


それは一個軍隊を相手にするより難しかった。得体が掴めない上、

その決意と夢と暴走は、寄せ集めの軍隊より遥かに強かったから…少なくともそう思われたからである。


ト書き〈逮捕〉


しかし、リーダー格のブラウンが捕まった。

しかしこれも想定内でのこと。

それだけ彼らは一応の計画を練り上げ、

どんな事態になっても切り抜ける法を学んでいたのだ。


(取調室)


刑事「ブラウン。お前が首謀なのは分かってる。お前はこの道のプロとしてこれまでやってきた。とんだドジを踏んだな」


ブラウン「フッ、ドジじゃない。これも想定内のこと。警察に2度捕まる事など、初めから計画に入れていたんだ。この道を踏まない限り、俺たちの計画は成らないからな」


刑事「ほう。2度目があると思ってるのか?」


ブラウン「C3H5N3O9…これが何かわかるか?」


刑事「…ニトロ」


ブラウン「ああ。或る所に、半径500メートルを吹っ飛ばせるニトロを仕掛けておいた。場所は複数だ。俺をすぐ釈放しろ」


若手刑事「なんだと?」


ブラウン「釈放しなければ、そのニトロを次々吹っ飛ばす計画だ。その中には、あんた達の妻子も含まれている」


刑事「…」


若手刑事「ふざけやがって」


ブラウン「ふざけちゃいない。この国のリーダーたちがふざけてきたその度合いに比べれば、俺たちの行動は全くふざけちゃいない」


ブラウン「警察は暴力を許し、国は権力を許した。その結果、俺の同志・ソルジャーはその家族を目の前で殺されたんだ」


ブラウン「『赤ひげ事件』ってあんた知ってるだろ?」


若手刑事「5年前の…」


ブラウン「警察の汚職事件が引き金になり、マフィアの暴走を許したあの事件。国家はその警察の権力を守り、結局、弱者は虐げられた」


刑事「…」


ブラウン「俺たちは、この国にゃあもう我慢できねぇんだ」


刑事「(こいつの目は本気だ…)」


ブラウン「わかったらすぐに釈放しろ。お前たちに2つ目の選択肢は無い」


(転機)


そのとき刑事は、カセットテープレコーダーを持ってきた。


刑事「お前がなぜ捕まったのか?それも誰にも知られない筈のアジトに居る時に。それを考えないのか?」


ブラウン「…」


そしてそのテープレコーダーを回す。

中からブラウンの聞き慣れた男の声が聞こえた。


ブラウン「…!?」


ブラウンの表情は一瞬ハッとしたようになり、

その後、1点を見つめる形で沈黙した。


刑事「…お前の同志だった筈のソルジャーの声だ。お前の居場所を垂れ込んだのはこいつ。この事の意味が解るな?」


刑事「こいつだけじゃない。お前が同志と見込んだ男のほとんどが、みんな個人プレーに走っちまったようだ。残されたのはお前1人だぞ?」


ブラウン「…裏切ったのか…」


刑事「2度目が無かったのはお前だったな。…俺なりには、お前の言う事が分かる。おそらく30年…いや50年ほど前なら、お前の革命も成功したかもしれん」


(テープレコーダーの声)


ロール・ストリートのアジトに住んでるコイツだよ。

革命がどうとか言ってさ。いい加減危なっかしく

てウザイんで、とっとと捕まえてくんねぇかな?


ソルジャーは自分なりにアリバイを作り、整形までして、

ブラウンの革命仲間として捕まらないよう事前準備をしていたようだ。

電話での垂れ込み。ボイスチェンジャーを使って。

他の仲間も同様に、みんな自分の保身に徹していた様子。

もちろんブラウンには知らせないまま。


街に仕掛けた筈のニトロも全て撤去されていた。

警察のマークがきつくなり状況が変わったことで、

おそらく証拠を残さぬようにと彼らの手により。



エンディング〜


世の中は「軽く」「希薄」が流行するように変わってしまった。

個人主義に走られちゃあ、革命は成りませんよね。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=h1LixxOmLEk&t=62s

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夢想革命 天川裕司 @tenkawayuji

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