群れに潜むストーカー

天川裕司

群れに潜むストーカー

タイトル:(仮)群れに潜むストーカー


▼登場人物

●松原恵子(まつばら けいこ):女性。25歳。かなりの美女。ヒロインシンドローム。

●岡田宏樹(おかだ ひろき):男性。27歳。イケメン。パソコンに詳しい。

●向田静江(むこうだ しずえ):女性。28歳。宏樹の彼女。恵子と同じ会社で働いている。

●同僚女子:恵子の会社の同僚。20代~30代。一般的なOLのイメージで。本編では「同僚女子1~2」等とも記載。


▼場所設定

●街中:ビヤガーデンや会社周辺を含め、一般的なイメージでOKです。

●宏樹の自宅マンション:都内のマンション。

●恵子の自宅マンション:都内のマンション。宏樹のマンションから走って20分程度。


NAは松原恵子と岡田宏樹でよろしくお願いいたします。



イントロ〜


皆さんこんにちは。


皆さんは集団の中で殺傷事件に遭ったことありますか?

まさか大勢の中にいて、誰かに襲われるなんてこと普通は考えないですよね。


でも、そんな事件に巻き込まれた或る女性がいました。

今回はその女性にまつわる意味怖のお話です。



メインシナリオ〜


NA:恵子)


私の名前は松原恵子(25歳)。

どこにでもいる独身OLだ。


同僚女子「ねー恵子、早く行こう、みんな待ってるわよ!」


恵子「うんすぐ行くわ!」


今日は会社の飲み会。

ビアガーデンを借りて数十人が集まっている。


でもその時…


ト書き〈ストーカーに遭う〉


恵子「きゃあ!」


ちょっと遅れて行った私は皆から離れた位置に居た。

その隙を狙われ、後ろから男が抱きついてきて、私を連れ去ろうとした。


同僚女子「恵子!大丈夫!?」


岡田「どうした?!」


恵子「痛ツツ〜」


皆すぐ駆け寄ってくれた。

でもその直前にストーカーの男は一目散に逃げてった。


岡田「くそ!捕まえてやる!」


あとを追っかけたのは同僚の岡田宏樹君(27歳)。

でも結局、逃げられた。


岡田「くっそ〜、まさか自転車まで用意していたとは…」


フード付きのジャンパーを着てフードをかぶり、

サングラスを付けマスクもしていた事から、

その男の人相は全く判らない。


まさに一瞬の出来事。


岡田「警察に連絡しよう!」


岡田君はすぐそう言ってくれたが…


恵子「ううん大丈夫、そんな事したらせっかくの飲み会が台無しになっちゃうわ」


私は断った。

自分の事で皆に迷惑をかけるのが嫌だったから。


ト書き〈どんどんストーカーに襲われる〉


でもこれが悲劇の始まりだった。


(会社帰り)

恵子「きゃあ!」

同僚男子「だ、大丈夫!?また襲われたの!?」


(皆で遊んでいる時)

恵子「や、やめて!」

同僚女子「恵子!」


(レストラン)

恵子「うぐ…!ぷはぁ、やめて!」(口を押さえられる)

岡田「くそ!またかよ!今度こそ捕まえてやる!」


不思議な事に私は会社の皆といる時に限って襲われた。

それも私が人の輪から離れて1人で居る時、その隙をついて襲ってくる。


岡田「くそ…!今度はバイクまで用意してやがった!恵子、こりゃもう本当に警察に言ったほうがいいって!」


恵子「うん。明日にでも警察行ってみる」


周りの皆も心配してくれた。


同僚女子1「美人ってやっぱり襲われ易いのね…」


同僚女子2「そうね。ストーカーにいつも狙われるなんて絶対嫌だけど、これも美人の宿命ってやつかしらね…」


ト書き〈静江の嫉妬〉


静江「ちょっと恵子!アンタ最近、宏樹と随分親しくしてるんじゃない?宏樹は私の彼氏なんだからね、変に彼の周りウロチョロしないでよ!」


彼女は向田静江(28歳)。

最近、岡田君と付き合い始めた。


恵子「え?私そんなつもり全然…!」


静江「嘘言わないでよ!最近ずっと一緒にいるじゃない!仕事中も休憩時間もプライベートでも!この前公園で一緒にランチしてるトコ見たわよ!何喋ってたのよ!」


恵子「あ、あれは…!」


確かに私は岡田君と最近よく一緒にいる。

でもそれは例のストーカーの事で相談していたのだ。


警察に言ったってすぐには解決しない。

その間に事が起きてからじゃ遅過ぎる。

ストーカーの男はまだ捕まらない。

だから自分達に出来る事をしていた。


静江「へん、どーだか!アンタもしかして、相談に託けて彼に近づこうなんて思ってんじゃないの?それにアンタ達の言ってるストーカーにしてもなんか変なのよね」


静江「いつもあんな大勢の所に出てきてアンタを襲うなんて。もし捕まったらその場でジ・エンドじゃないの。アンタが独りで居る時にストーカーに襲われるってんなら分かるけどさ」


恵子「そ、そんな事、よくも言えたもんね!本当にストーカーに襲われる人の気持ちアナタ考えた事ある!?本当に恐怖のどん底なのよ!?私だっていつも普通にしてるけど、心ん中じゃ今日襲われたらどうしよう、明日襲われたらどうしよう!って気が気じゃないのよ!そんな勝手なこと言わないでよ!」


静江「そんな怒んなくたっていいじゃないのよ。フン、何よちょっと美人だからってイイ格好して!周りにまで迷惑かけちゃってさ。アンタなんかずっとストーカー男に狙われ続けてりゃいいのよ!」


そう大声で言って去っていった。


恵子「ふぅ…なんでこんな事言われなきゃいけないのよ…」(泣きながら)


ト書き〈急展開〉


NA:岡田)


夜の10時頃。

いきなり恵子が俺のマンションまで来た。


恵子「ハァハァ…お、岡田君」


岡田「ど、どうしたんだよこんな時間に。お前、走って来たのか?」


恵子の自宅から俺のマンション迄はそれなりに近いが、

走れば20分ぐらい掛かる。


恵子「も、もう私耐えられない…」


恵子はまたストーカーに遭ったようだ。


ト書き〈恵子の自宅マンション〉


今回のストーカー被害はパソコンの中にあった。


恵子「あの男から連続で100件ぐらいメールが送られてきたの。その中に多分自撮りしたんだろうと思うけど、動画があって…」


岡田「動画?」


電子メールにはストーカー男からの熱烈なラブメールの嵐。

その中に1つアイコンがあり、それをクリックすると、

男が撮った動画を観れるようになっていた。


ト書き〈動画〉


ストーカー男「恵子ちゃん❤また会えたね。僕うれしいよ。でも君最近、なんか変な男と一緒に居るよねぇ?ダメだ。僕以外の男と一緒に居ちゃいけない。君は僕だけと一緒に居なきゃいけないんだよ。もうわかってるだろう?」


岡田「な、なんだこれは…」


その時、恵子の怯え方が尋常じゃなかった。


恵子「こ、これ…あた…し…の家…」


岡田「え?」


恵子「この男が…動画撮ってるこの場所…私の…この…部屋…」


岡田「な、なんだって?!」


「ストーカーの男は既に恵子の部屋に侵入している」


岡田「よし、この動画、警察に見せよう」


俺はすぐに動こうとした。

でもその前にもう少し他に証拠が無いか、パソコンの中を調べてみた。


岡田「コイツがパソコンをハッカーしてる形跡は無いな…」


恵子「岡田君これ、コーヒー」


岡田「お、サンキュ♪」


それから暫く調べていた時。

恵子はトイレに行った。


岡田「まぁこの動画とメールの嵐を見せれば警察も動くだろう」


俺はデスクトップに出ていたアイコンをしらみ潰しに調べた。

取り敢えず全部クリックしていく。


そして最後に…


岡田「一応この中も見とくか…」


ゴミ箱をクリックした。

すると…


岡田「え…?」


恵子と謎の男との熱烈な画像が出てきた。

それを見ている内に俺は段々睡魔に襲われ、

デスクにうつぶせって眠りについた。



解説〜


はい、ここ迄のお話でしたが、意味怖の内容に気づきましたか?

それでは簡単に解説行きます。


今回は恵子の言動に注目すると解り易かったでしょうか。


実は、恵子は強烈なヒロインシンドロームでした。


ヒロインシンドロームはその名の通り、

「自分が常にヒロインでなければ気が済まない」

という精神状態そのものを指します。


自分の身の周りに居る女性を全てその他大勢にして、

「自分だけが格好良い立場・モテる立場に居る」

という状況を自ら作り上げる習癖を持ちます。


恵子に付いたストーカーは、実は恵子が雇った男でした。

大勢の前で自分を襲うように仕向け、

「自分はこれほどモテる・男の心を狂わせる」

という光景を手っ取り早く見せる為の算段をしていたのです。


集団の中で自分を襲うよう連絡し、事前に逃げる方法も決めておく。

だから現場に自転車やバイクがあった訳です。


もし本当にストーカーに恐怖していれば、

夜の10時に1人、走って岡田のマンションに行くなんてしないでしょう。


更に恵子は、警察に通報していませんでした。

実際に通報して捜査されたらヤバいからです。


これもストーカーが実際に居ない事を知っていたから、

ストーカーに襲われる心配が無い事を知っていたから出来た行動。


恵子が差し出したコーヒーには睡眠薬が入っていました。

恵子は、岡田も自分のモノにしたいと考えていたのです。

でも岡田は静江の彼氏。

静江の目が光っている以上なかなか付き合えません。


また静江に罵声を浴びせられた恵子は、静江に恨みも持っていました。


そこで思いついたのが、

「自分の手に入らないなら、静江の手にも彼が戻らないようにする」

と言う事。


この後、岡田は恵子の手によって殺されました。


そしてパソコンのゴミ箱にあった熱烈な男との画像。

この男は例のストーカー男。

その画像は恵子と営みをしている時の画像でした。


パソコンから証拠を消したつもりの恵子でしたが、

画像を消去するだけではゴミ箱に移動するだけ。

そのゴミ箱の画像をもう1度消去するのを忘れていたのしょう。


ストーカー男にとっては恵子の体がその報酬でした。

その報酬を定期的に得る為に、ストーカーの真似をしていたのです。


ヒロインシンドロームとは、

「超我儘な性格の女性が成り易いもの」

とも一説で言われます。


恵子は自分の目的を達成する為には手段を選びません。

超我儘な性格の持ち主である上、

精神の歪んだサイコパスの気質も持ち合わせていたのです。



動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=KFxoODC4-bM

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群れに潜むストーカー 天川裕司 @tenkawayuji

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