愛する妻と一緒に行った1人旅

天川裕司

愛する妻と一緒に行った1人旅

タイトル:(仮)愛する妻と一緒に行った1人旅


▼登場人物

●近藤一樹(こんどう かずき):男性。38歳。普通のサラリーマン。

●近藤百合子(こんどう ゆりこ):女性。35歳。一樹の妻。


▼場所設定

●電車や街中:一般的なイメージでOKです。

●レジャースポット:動物園や遊園地・映画館等こちらも一般的なイメージで。

●森林:電車の中から見える森林。富士の樹海のようなものを想定しています。


NAは近藤一樹でよろしくお願いいたします。

回想シーンは全て一樹の妄想なので、普通の展開で構いません。

(イントロ+メインシナリオ+解説:ト書き・記号含む=3121字)



イントロ〜


皆さんこんにちは。

案内人のアンナです。


ところで皆さんには今、大好きな恋人はいますか?

大事に思ってる人はいますか?

そういう人とはいつも一緒にいたいですよね。


今回はあるカップルに起きた意味怖のお話。

このカップルには、

未来の希望と言う名の悲劇が訪れたようです。



メインシナリオ〜


ト書き〈電車〉


俺の名前は近藤一樹。

今年38歳になる妻帯者。

俺は今、1人旅に出ている。


俺には愛する妻・百合子がいる。

百合子と結婚して5年になるが、

俺達はこれまで1度も喧嘩をした事がない。

本当に仲の良いおしどり夫婦。


ト書き〈回想シーンの形で〉


百合子「私、今度動物園に行きたいなぁ」


一樹「ああ、じゃあ上野動物園にでも行くか?」


百合子「えー、あそこもう行ったじゃん。今度は別の動物園に行かない?」


一樹「そうだなぁ、じゃあ行ってみるか」


とまぁこんな感じで、俺は今日下見に来ている訳だ。

動物園と言っても他府県にいろいろある。


その中でも楽しそうな動物園を選び、

そこへ百合子を連れて行く。

百合子は昔から動物園が大好きなのだ。


まぁ動物園だけじゃなく、レジャーも大好きな彼女。


百合子「ねぇ今度一緒にどっかピクニックにでも行かない?今度、会社の休み、まとめて取れるんでしょ?」


一樹「ん?あーそうだなぁ」


百合子「ねぇ行こうよ♪」


一樹「はは、お前ほんとピクニックとかどっかレジャー行くの大好きだな♪」


百合子「だって、いろんな思い出2人で一緒に作ったら楽しいじゃない」


百合子はとにかく俺と一緒にいる時間を大切にしてくれる。


本当にかわいいやつだ。

付き合った当初も、俺はきっとこいつの

こういうところに惚れていたんだろう。


ト書き〈下見〉


(動物園)


一樹「う〜ん、ここだったらアイツも喜ぶかなぁ」


動物の種類も豊富。

敷地も広い。

タコ焼きやソフトクリームを売ってる店も沢山ある。


(遊園地)


一樹「よしここにしよ!ここだったらあいつの好きなジェットコースターもあるし」


遊園地も百合子は大好きだ。

ここはいろんなアトラクションもあり、

レストランや店も沢山ある。

きっとあいつも気に入るだろう。


その他にも俺はレジャースポットへ行ったり、

季節ごとに楽しめる名所と言われるスポットへも行ったりし、

百合子と一緒に行く為のスポットを探し回っていた。


昔、百合子と一緒にドライブしていた時なんか、

ドライブ先で見つけたレジャースポットや名所に

いつもついでの形で寄っていた。


その時の事なんかを思い出しつつ、

俺は少し懐かしい気持ちにもなり、

少しでも百合子を楽しませてやろうと

いろんな所を下見して歩き回った。


ト書き〈映画〉


百合子「ねぇ、今度やってくる『ディープ・コンパクト』の映画見に行こう!」


一樹「あー、あの隕石が降ってくるやつか?うーん、俺どっちかってーとアクション物の方が見たいんだけどなぁ」


百合子「えー、いいじゃん♪行こうよ」


一樹「ったくしょうがねぇなぁ、じゃあ行くか」


百合子はこう見えて映画も大好き。

特に洋画が好きだった。


そんな事も思い出しつつ、

ある日、用事で街に出ていた俺は、

最寄りの映画館の前を通りがかった。


『ディープ・コンパクト』!

やってるやってる。

去年の年末に公開されたこの映画は日本でも大人気。


ト書き〈時間を戻して電車内〉


今日は天気も良い。

絶好の下見日和だ。


一樹「あーうっかりしてた」


俺は仕事から帰って着替えようとしていたのだが、

別の用事ができてしまって、

着替えるのを忘れたまま出てきたようだ。


ズボンのベルトの所に赤黒いインクが付いている。

俺はシャツをズボンから出し、

その部分が隠れるようラフな格好にした。


ずっと走っていく内、窓の外に森林が見え始めた。

あそこが俺の目的地。


一樹「待っててくれよ百合子、そろそろ俺も行くからな」


もうすぐ俺は百合子に会えるだろう。



解説〜


さていかがでしたか?

少しシュールというか、

訳の解らない展開になっていたのにはもうお気づきですよね?


一樹と百合子は、今年で結婚5年目になる夫婦でした。


その百合子はレジャーに行くのが大好きで、

そのレジャースポットの下見をする為に

一樹はいろんな場所を歩き回っていた…


そんな展開になっていましたよね。


でもこの展開は全て一樹の妄想だったのです。


と言う事で今回の意味怖ヒントは…

時間です。


つまり時制の事で、ストーリー現在がどの時点にあるのか?

それを知る事で、今回の意味怖テーマはすぐに解ったでしょう。


このストーリーにはおかしな点が幾つもありました。


まず冒頭から見て一樹は1人旅に出ています。

この「1人旅」とはどういう事なのでしょうか?


ストーリー途中の、

一樹と百合子のこれまでの生活というか

デートのあり方を打ち明けるところで…


「昔、百合子と一緒にドライブしていた時なんか、

ドライブ先で見つけたレジャースポットや名所に

いつもついでの形で寄っていた」


とありましたよね。


「いつもドライブ中に立ち寄っていた」

と言うその習慣から見て、

こんな下見ばかりに旦那が駆けずり回る…

と言う展開はこれまで無かった事が解るでしょうか。


そう、実際に下見になど行っていません。


一樹は1人旅に出たついでにその妄想を掻き立てており、

その妄想の中で「下見」に行っていた訳です。


この点が少し難しかったかもしれませんね。


つまりラストまでのストーリーは全て、

一樹の妄想だった…という事。


そして更に合点の行かない点もありました。


それは『ディープ・コンパクト』の映画。


「ねぇ、今度やってくる『ディープ・コンパクト』の映画見に行こう!」


と百合子が言っているのに関わらず、

その直後には…


「去年の年末に公開されたこの映画は日本でも大人気」

とあり、

『ディープ・コンパクト』は既に去年上映された経過になっています。


つまり百合子が「映画に行きたい」と言ったのは随分前の話。

一樹が『ディープ・コンパクト』が上映されているのを

最寄りの映画館で見たのはそれから随分あとだった訳です。


結局、2人で映画に行く事は出来なかったようですね。


そう、今回のストーリーは…

一樹の百合子への思い出と現在が交錯しているストーリーでした。


更にラストの場面。

一樹のズボンのベルトの所に赤黒いインクが付いている…

とありましたね?


この赤黒インクとはインクではなく血の事。

もちろんこの血は百合子のものです。


仕事から帰った一樹は何らかの理由で

百合子と喧嘩でもしてしまったのでしょう。

それまで喧嘩した事がなかった2人なので、

その喧嘩は文字通り、結婚してから初めての喧嘩。


初めての喧嘩ながら感情の押さえ方を誤ったのか、

結局、一樹は百合子を殺してしまいます。

ベルトに付いていた血はその時の百合子の返り血。


そしてふと我に返った一樹は急に恐ろしくなり、

思い出の中へ逃げ込んだのか。


その延長で家を飛び出し、

百合子との思い出の場所を妄想の中で駆け巡ります。

それが冒頭の「1人旅」の始まりでした。


現実逃避、とても言ったところでしょうね。


そして最後の場面。

電車の窓から森林が見えてきます。

そこで一樹は…


「待っててくれよ百合子、そろそろ俺も行くからな」


と言い…


「もうすぐ俺は百合子に会えるだろう」


と締めくくっています。


ここまで来ればもう解るでしょう。


一樹は罪の意識に苛まれ、

百合子を殺してから百合子の事が更に愛おしくなり、

百合子を殺した事への罪の償いとして自分も死に、

そのあと自分も百合子の元へ旅立ちたい…


そう思って目的地へまっしぐら…

だったのでしょうね。


目的地が「森林」と言うのも確実に変。

この辺りでピンときた人も居た事でしょう。


さて、百合子が果たして

自分を殺害したその一樹を許すかどうかは分かりませんが、

このあとの展開がどうなるか?

やっぱり少し覗いて見たい気にもなりますよね。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=7ki0tFedKJ4&t=66s

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛する妻と一緒に行った1人旅 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ