のぞきの向こう側

天川裕司

のぞきの向こう側

タイトル:(仮)のぞきの向こう側



▼登場人物

●木園益夫(きぞの ますお):男性。45歳。独身サラリーマン。

●本川里奈(もとかわ りな):女性。27歳。益夫に覗かれる。セリフなし。本編では「女性」や「彼女」等と記載。

●堂島 武(どうじま たけし):男性。37歳。里奈の彼氏。恰幅が良い。本編では「恰幅の良い男」や「ガタイのデカい男」等と記載。

●町田俊平(まちだ しゅんぺい):男性。35歳。ひょろ長い男。里奈のストーカー。本編では「ひょろ長男(ひょろながおとこ)」等と記載。セリフなし。里奈と武に殺される。


▼場所設定

●益夫の部屋:一般的なマンションの部屋のイメージで。

●里奈の部屋:益夫のマンションから少し離れた向かいに建っている。部屋の中にはクローゼットが2つある(1つは普段使ってる物でもう1つは使っておらず扉は少し開けている)。その扉を開けたクローゼットの中に武が入り、そこから益夫の部屋を覗いていた(赤外線暗視スコープ付き望遠鏡である為、部屋の電気を消していても益夫の様子は分かる設定)。

●街中:必要ならで一般的なイメージでお願いします。


NAは木園益夫でよろしくお願い致します。

(イントロ+メインシナリオ+解説:ト書き・記号含む=3565字)



イントロ〜


皆さんこんにちは。

皆さんは今マンションに住んでますか?

その隣に似たようなマンションはありますか?

そういう場所に住んでるといろんな事が起きるものです。

今回はマンション住みのある男性に訪れた意味怖のお話。



メインシナリオ〜


ト書き〈部屋から覗き〉


俺の名前は木園益夫(きぞの ますお)。

今年45歳になる独身サラリーマンで

今マンションに住んでいる。


そんな俺の趣味はのぞき。


ちょうど俺が住んでるこのマンションの向かいに

似たようなマンションが建っており、

そこにイイ女が居たわけだ。


益夫「お、今から着替えるところか、たまんねぇなぁ」


自分の部屋の電気は消して覗きに興じる俺。


彼女は大抵カーテンを開けたまま着替えをしていた。

まさか見られてなんかないと油断していたのだろう。


ト書き〈後日〉


でもそんな時。


益夫「あれぇ?また部屋真っ暗だ。なんだよ、旅行でも行っちゃったのかなぁ…」


彼女は部屋に帰ってないようで、部屋の中は真っ暗。

それが3日3晩ほど続いた。


その間も俺はずっと彼女の部屋を覗いた。


(3日前)


益夫「あれぇ?真っ暗じゃねーか、なんだよ、ちっ!居ねぇのか」


(2日前)


益夫「さぁ今日は居るかなぁ〜?おっと、部屋の電気消しとかなきゃ。…ん?あ、まーた真っ暗だ。居ないか…」


(昨日)


益夫「さ〜ていつもの趣味に興じますか♪フンフ〜ン♪…あ?今日も居ないのかよぉ〜!まーた真っ暗じゃねぇか…トホホ。あ、部屋の電気消しとかなきゃいけなかった」


こんな感じでちょっと失敗もしながら覗いていたのだが、

彼女はずっと部屋に帰って居らず俺の趣味はお預けだった。


ト書き〈またのぞき〉


でもその翌日。


益夫「おっ♪今日は帰ってるな!グフフ♪ほんでもってお着替えだね〜♪ハァハァ、たまんねぇなぁ」


旅行から帰ってきたのか彼女はその部屋に居て、

いつも通りカーテンを開けたまま

決まった時間に着替えをしていた。


旅行帰りでバタバタしていたのか、

いつも彼女が使ってるクローゼットの横に

もう1つクローゼットがあり、

そのクローゼットの扉は少し開いていた。


(翌日)


翌日も彼女の部屋を覗き続ける。


やはりカーテンを開けたまま彼女は着替えをしており、

あのクローゼットの扉は少し開いていた。


益夫「グフフ、俺は幸せモンだ♪」


ト書き〈事件〉


でもそれから数日後。

そのパラダイスは一気に地獄と化した。


いつものように電気を消して彼女の部屋を覗いていた時…


益夫「ん?誰だアレ?」


彼女の部屋に男が2人居て、彼女を含め、

何やら3人が激しく口論している。


益夫「んだよ!こんなのが見たいんじゃねーんだよ!」


いつもの彼女のお着替えシーンは無く、

そんな争いをずっと見せつけられた。


でもその直後、まだ何となく望遠鏡で覗いていた時…


益夫「え…!?」


1人の恰幅の良い男が

もう1人のひょろ長い男を背後から殴りつけ、

その怯んだひょろ長男の隙を突き、

懐に飛び込んだ彼女は持っていた包丁でそいつを刺した。


益夫「え、ちょっ…」


見ている内にひょろ長男は倒れ込み、

残ったその彼女とガタイのデカい男は互いを見合わせ、

ハッと気づいたように部屋の電気を消して、

それからどこかへ出かけたようだ。


益夫「ちょ、ちょっと待ってくれよ…。こ、これって、殺人事件…?」


いきなりそんなのを見せつけられた俺は

何が何だかよく解らなかったが、

目の前で起きた事を1つ1つ整理すると…


「もしかして痴話喧嘩か何かのもつれであのひょろ長い男と2人が口論になり、それで勢い余って2人が結託し、あの男を殺してしまった…?」


まだその男が死んだかどうかは判らなかったが、

包丁で刺したのを見たのは確かで、

すぐ救急搬送しなければおそらくあの男は死ぬ…?


そこまでの事を簡単に想像できた。


益夫「や、やばいじゃん…」


すぐ警察に言おうかとも思ったが、

でも下手に関わり合いになるのは避けたく、

またこんな事をしている手前…


「なんでその部屋で事件が起きているのに気づいたんだ?」


なんて訊かれたら、俺がのぞきをしているのがバレてしまう…?


そう考え、やはり通報するのはやめた。

見て見ぬ振りだ。


それともう1つ。

これでのぞきをする機会が奪われるのを嫌ったからだ。


もしかするともう1度くらい、

彼女の着替えを覗く事ができるかもしれない…


そんな浅はかな事を考えつつも、やがて時間は過ぎていった。


ト書き〈オチ〉


そして翌日…更にその翌日も、

俺は彼女の部屋を覗いていた。


どうやらあの2人は証拠を隠蔽し、

逃げ切ろうなんて思ってるのかもしれない。


まぁそれでも俺には関係ないし、こっちとしては余裕だ。


彼女は又カーテンを開けて、

部屋の電気を煌々とつけたまま着替えをしている。


俺はちゃんと自分の部屋の電気を消し、

窓辺から望遠鏡を構え、彼女の部屋を覗いている。

あのクローゼットの扉はやはり少し開いていた。


そして数十分後。


俺はつい催してきてトイレに行った。

そしてまた電気を消した自分の部屋に戻って見ると…


益夫「クソ〜!もう着替え終わっちまってたか〜」


残念!

お楽しみタイムは終わっていた。

彼女は忙しく部屋のレイアウトなんかをしている。


でもまぁそんな彼女のプライベートを覗けるだけでも

目の保養になるからと、俺はそれからも暫く望遠鏡を傾けていた。


その時ふと気づいた事があった。


益夫「ん、あれ?あんなのあったっけ?」


彼女の部屋のテーブルの上に

写真立てのようなものが置かれてあり、

中には「END」と書かれたメモ書きのようなものが

入れられていた。


「…は?」と思ったそのすぐ後で俺の部屋の呼び鈴が鳴った。


男「宅配便でーす」


益夫「ん、なんか頼んでたっけ?」


まぁ普段から通販も利用していた俺は

「はいはい」と玄関に行きドアを開けた。


でもこの日以降、俺が覗きをする事はなくなった。



解説〜


益夫は毎晩、女性の部屋を覗き楽しんでいました。

でもそのさなか、とんでもないものを目撃します。


それは殺人事件。

見た通り・想像した通りの殺人がそこで起きていたのです。


でも益夫は関わり合いになりたくなく、

また自分ののぞきがバレるのも嫌って

警察には通報しませんでした。


しかしもう益夫には、

その随分前から裁きが下されていたのです。


そのヒントは、彼女の部屋にあった

ちょっとだけ扉が開いていたクローゼット。


ストーリー前半で

彼女が3日間ほど部屋を空けていましたね。


でも実は、彼女は部屋を空けていたのではなく

彼女もまた益夫と同じようにして部屋の電気を消し、

そこから向かいのマンションを覗いていたのです。


彼女にも覗き魔の習性がありました。


1つだけ益夫と違うところは

彼女が使っていた望遠鏡は

赤外線暗視スコープ付きの望遠鏡。


つまり暗闇の中でも反射する微量の光を倍増させ、

スコープを通して確認できる状態にしていたと言う事。


この点で見れば、彼女の方が覗きに精通していたと言えるでしょう。


でもこれが益夫にとっては運の尽き。


益夫はこの時自分の部屋の電気をつけたまま

彼女の部屋を覗く…といったミスを2度犯していましたね。


この時に自分の部屋が覗かれていた事を彼女は知ったのです。


そして彼女は自分の男友達を使い、

益夫をのぞきで訴える準備をし始めました。


もう1つのクローゼットの中にその男を忍ばせ、

そこから、自分が使っていた

赤外線暗視スコープ付きの望遠鏡で益夫を見張らせました。


おそらくその望遠鏡は特殊なもので

更に録画機能も搭載していたのでしょう。


自分の部屋を覗く益夫の姿を録画しておき、

それをネタに益夫を強請(ゆす)ろうと考えます。


でもそこで「殺人事件」という誤算が起きます。


ひょろ長の男は彼女についたストーカーで、

2人は彼を撃退し殺しました。


その時、2人は益夫の事を思い出したのです。


そして翌日から以降。

益夫はまた彼女の部屋を覗き続けます。


その時も実は男はクローゼットの中に隠れていました。

例の望遠鏡を持って。


益夫はその時トイレに行きました。

それを確認した2人は計画を実行。


男が部屋を出て行き、益夫が住んでるマンションの部屋へ。

クローゼットが閉まっていたのはその為です。


そして彼女は何食わぬ顔して部屋のレイアウト等し、

最後にあの写真立てをテーブルの上に飾りました。


その写真立ての中には「END」と書かれたメモ用紙。

これは文字通り、益夫の最後を意味していたのです。


ここまでくればもう、

ラストの場面で益夫の部屋の外に立っていた

男の正体が解りましたね。


そう、彼は宅配便の兄ちゃんではなく、

彼女と結託して、念の為に益夫を口封じにやってきたあのガタイの良い男。


そもそもこの時、益夫の部屋の電気は消えたまま。

なのに宅配便が普通に来るというのもおかしな話。


その日以降、益夫はもう覗きをしなくなったと言う事から、

その日に殺された事も窺えますね。


悪い事をしていれば、いつか知らない内に裁かれている…


これは誰にとっても同じ事かもしれず、

普段から注意しておくべきでしょう。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=3L8jMtjDCHE&t=68s

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