蚊と人文

鏡文志

第1話

蚊が人の血を吸うのは、命懸けのエクスタシー。

ボクサーのように、相手の反撃を避けながら、血を吸わんとする。


蚊に血を吸ったことを訴えても、人間界のルールは通用しない。

今に人間界のルールが人間にとって窮屈になって崩壊した時、蚊の時代がやってくるに違いない。


蚊が音を出して飛んだり、吸った後に痒み成分を残すのは、無敵状態を作るのに不都合なことであり、神が万物に不完全性を与えたヒントを与えてくれる気がする。


人間界にも、完璧を嫌うルールがある。

完璧を求めれば、ロボットの時代になる。

その完璧も人間の頭の中での、完璧でしかないのだが。

ロボットは子供を作れない。動物としての種の存続はどうする?

はて、困ったな? と言うところで悩んでいる人間は

下半身に睾丸をぶら下げながら、機械としての生を待ち侘びているようで

とても奇妙だ。

完璧を求める限り、どこかで思考の存続を終わらせなければならない。

時間は膨大にあり、現実は常に動いている。どこに終わりがあり、どこに完璧が見えるのか?

壁を作ることが完璧ならば、それは永遠の孤立状態を選ぶのが完璧なのであろう。


蚊が人の血を吸うエクスタシーに完璧を求めず、命を賭けるように、人間もなにがしかのエクスタシーに命をかけていつかは朽ち果てるのみである。

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蚊と人文 鏡文志 @kagamibun86

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