流転の騎士
堕落
第1話敗北と屈辱と憎悪
「いくぜ!ここで俺のスキル【セイントブレード】!」
「ゆうしゃさま~!わたしも続きます!!【フレイムボンバー】!」
「神聖なる雷よ!敵を滅ぼせ!【ホーリーライトニング】!」
「がはは!!とどめに俺の技、【ブレイブアッパー】!」
立て続けに勇者たちのスキルが俺の鎧を砕き、血しぶきが舞う。
倒れそうな身体を大剣で支えるが全身が悲鳴をあげている。
今にも崩れそうな身体に鞭をうち、漆黒の剣を振り上げ渾身の技を放つ。
「はい、それ無効化な?【聖霊の加護】発動だよ」
勇者がやれやれといった具合に手を振ると、俺の斬撃は見えない障壁でかき消された。
俺の暗黒魔法も、剣技も、なにひとつダメージを与えることができない。
ごふっと割れた兜から吐血する。
「あ、ごめん!心折れちゃったかんじか?わりわり!」
「さすがゆうしゃさまですぅ!!」
「まさしく英雄です。女神様もさぞお喜びなられることでしょう」
「がはは!今夜は祝い酒だな!!またもや魔王軍の居城を落したのだからな!!」
戦いが終わったのだと言わんばかりに勇者たちは雑談を始めた。
まるで俺は...俺たちは、眼中にない虫けらだといわんばかりに。
俺は周りを見渡し、息を引き取った仲間の騎士たちや魔族の戦士を見た。
お前たちは世界の敵だ、悪だ、汚らわしい、そんな言葉を吐かれながら懸命に戦い
そして散っていった。
こいつらは、人の...「勇者」なのだという。
それは英雄であり、人の希望であり、世界を平和に導くものだと。
「くっ...いかせるものか、いかせるものかぁああ!!!」
俺はとうに限界を超えていた、だがそれでも守らねばならない。
この城に住まう姫...グレイシア様を...!!
「しつこい男は嫌われるってこの世界じゃ言われないわけ?きもいなこいつ」
「きもすぎですぅ...なんで生きてるんですか?オエ~」
「アンデッドのように醜い...浄化の炎で焼きましょう」
「がはは!やれやれ!!」
「いんや、俺が終わらせるよ。任せときな~!」
「あんたさ...必死になってうぜえよ...【ブレイブリーブレイド】!!」
勇者の放った光り輝く斬撃は俺の胴体と下半身を真っ二つに引き裂いた。
視界が、暗くなっていく。
倒れた仲間の死に姿...ああ、後輩のエルレーン...お前の剣技をもっと褒めてやればよかった...
まだ幼いギムリット...泣いてばかりだったゲイル...陽気な老兵のヴァルト爺....
みんな、みんな、死んだ....
悔しい...悔しい...
憎い......
憎い..................憎い............憎い憎い憎い憎い憎い!!!
――――――復讐を―――――望みますか――――――
...誰だ、誰なんだ...
―――――雪辱を――――――晴らしたいですか―――――
...ああ、晴らせるものなら何でもやる...
あいつらに一矢報いることができるのなら....!
―――――ならば機会を与えましょう――――――――――
―――――そして――――無念に散った子らを集めなさい――――――
なんだと...それは...いったい...
―――――絶望と憎悪を―――――力となさい――――――
―――――アナタが進むのは邪道――――――偽りの世界に終焉を――――――
暗闇に沈んでいく俺の意識は少しずつ薄れていく。
だが憎悪の炎は燃え上がり、魂さえも焦がしていく。
俺の第二の生が始める―――
聖霊を握りつぶし
勇者たちを抹殺し
偽りの女神の喉笛を食いちぎる旅が―――――
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