この素晴らしいエリス様と祝福を! 爆裂娘の故郷へ!!


 「エピローグ 並行四重奏〜ヘイコウカルテット〜」


「………知らない天井だ…。」


 辺りを見渡すと、白い無機質なベットが数個………ここは何処だ…?


 先程まで何をしていたのか思い出す、確か俺は…魔王軍のハンスに喧嘩を売って逃げていた筈……、確かその後、ダクネスに頭を抑えられて……。


 そう考えてると、ガチャリと部屋の扉が開いた。


「…あれ?和真起きたんだ。」


「あぁ、クリスか。」


 少し安堵した表情をした後、こちらに歩み寄る。


 ……しかしなんだろう、この底しれない恐怖は……。


「さて、どうして私が怒ってるか分かる?和真」


 そう言って、俺が横渡っているベットに腰を掛けるクリス……顔があまりにも作り笑い過ぎてかなり怖い…、というか恐ろしい。


「………一人で魔王軍に喧嘩を売った事…?」


「そうだね、いくらめぐみんが私達を呼ぶ為の時間稼ぎとは言え、あそこまで怒らず必要はなかったよね?」


 …今まで本気で怒られた事が無かった為か、今のクリスがかなり怖い……と、言うよりこれはエリス様に怒られている感じがする、、これが女神パワーか…。


 俺が黙っていると、クリスは呆れ溜息を吐く……ちょっとビクッとした。


「………まぁ、怒ってばかりだと和真が可哀想だけどね……、取り敢えず、時間稼ぎ有難うね。」


 そう言い、俺の頭に手を起き撫でる。


 今のクリスはまるで女神の如く優しい目付きだ………そういや女神だった。


「ごめんクリス……それと、魔王軍幹部はどうなったの?」


「ん?あぁね、あの後めぐみんの爆裂魔法で吹き飛ばした後、ウィズが全部の欠片を凍らして回ってなんとかしたよ。」


「……あれ?ウィズって、同じ魔王軍幹部に手を出しても良かったのか…?」


「あぁ、あの後普通に人に手を加えてたのが分かって、ウィズがあの約束は無効だ!!って怒ってね。」


「そうか…。」


 ………なんか、俺が何もせずにptメンバーが魔王軍を討伐するのって初めてだな…。


 こうなんとも言えない虚無感に襲われる、つまり俺が居なくてもptとして成り立っていると言うことだ。


「…ほら、何時までもしょぼくれてないで、皆に会いに行くよ!」


 クリスはそう言って、部屋から出て行った。


 ………俺は、どうしたら良いんだろう。




 『第1章 この女々しい男に友人を!』




「………あの、和真さん?」


「え?あぁごめんなさい、ボーっとしてました。」


 あの後、ダクネスとめぐみんとウィズと再開し、家に帰ったのだが………あまりにも疲れ切ったのか全然休めてなかった。


 しかし魔王軍を倒した為、報酬金を受け取りに着たは良いものの、さっきからあまり嬉しさが来ない…。


「ふー……、なぁクリス、俺今日はちょっと先に帰っとくわ、金を好きにしていいよ。」


「え?ちょっと和真っ!!」


 クリスが何か言っていた気がするが、無視して足を速める。


 家に着くなりソファに飛び込む、最早自分の部屋まで行く気力すらないようだ。


 落ち着け俺、らしくないぞ……別にいいじゃないか、一度や二度のミスくらい…それに分かってた事だ………、自分が居なくてもあいつらがやって行ける事くらい。


 そもそもあいつらは上級職だ。


 いくら防御特化、攻撃特化と言え、ptに女神様が居るんだから司令塔の俺が居なくてもなんとかなる。


 ………駄目だな、考えれば考えるほどネガティブになっていく。


 そんな憂鬱な気分になっていると、扉が叩かれた。


「すまない!和真!佐藤和真は居るか!!」


 ミツルギだ…なんで今…。


 なんて考えると、鍵を掛けてないことに気付いたのか、扉を開けて入って来た。


「なんだ、居るじゃないか和真。」


「……すまんミツルギ、今は一人にしてくれ…。」


「?どうしてだい、理由を聞かしてくれ。」


「少し疲れてんだ……。」


「そうか、なら愚痴を聞いてやる…話せ。」


  そう屈託のない笑顔で言うミツルギ、なんの悩みもなさそうで、失敗もせずに今まで生きてきたんだろうな……少し腹が立つ。


「……いい、お前に話しても解決しないだろうから。」


「それでも解決への一歩になるかも知れないだろう?」


「…確証がない、寝かしてくれ。」


「駄目だ、相談してくれ。」


「うるさいッ!!なんでお前に相談しないといけないんだよっ!!」


「友人だからだっ!!」


 そうミツルギが言ったと同時に、俺の胸ぐらを掴んできた。


「和真は、初めて僕の友人と言える人物だった!!この世界に来てからの初めての!そんな友人の心配をしちゃいけないのかいッ!?」


 ミツルギは声を荒げて言う、……それゃそうだ、俺も自分の友人が酷く落ち込んでいたら相談に乗る…。


「……だから、和真、解決出来るかはわからないが、相談くらいしてくれないか…?」


「……少し長くなる、それでも良いか?」


「あぁ。」


 それから、俺はミツルギに話した。


 元の世界ではニートだった事、この世界に来てから毎日が楽しかった事、女神様のptのリーダーとして頑張ってきたこと……そして、今回の魔王軍討伐で、自分がなにもしなくても討伐出来ていて、本当に自分は必要なのか……と。


 ミツルギは嫌な顔一つせず俺の話を聞いてくれ、真剣な顔をしていた。


「……つまり、自分は本当にあの三人に必要な存在なのか……と言う事だね?」


「…あぁ…。」


 そう言ったあと、ミツルギが突然笑い出した。


「く……ククっ!そうか、和真は少し思い違いをしてるみたいだね!」


「…あ?」


「僕から言えるのは一つだけだ……良いかい?君のptの三人は、君が居ないと……いや、君じゃないと駄目だ!!」


 そうミツルギは高らかに宣言し立ち上がる……と思ったら、扉の方へと体を向け歩き出す。


「さて…僕の出番はここまでだ!後は君達ptの問題だ!」


 それじゃ!と言って、扉を開けると少し驚いた顔をし、また笑いながら帰って行った……本当に不思議なやつだ、あぁいうのが主人公なんだろうな。


 そうして、そろそろ眠たくなってきたし、部屋に戻ろうとすると……


「和真!!」


 そう言って急に玄関から飛び出して来たクリスに押し倒される。


 後ろには少し泣いた後があるめぐみんと、神妙な面持ちのダクネスが居た。


「ごめん!ごめんね和真!!」


 泣きながら抱きついてくるクリス、おいおい女神様がそんなに顔を汚して……せっかく綺麗な顔が台無しですよ?


「すまなかった和真、まさかお前がそこまで思い詰めているとは……気付かずに申し訳ない。」


「……ですが、我々も一人の人間です、バニルみたいに和真の心が分かる訳ではないです、なのでお互い口に出し合いましょう。」


「そうだよ!和真はもっと私達を信用してよ!ptメンバーであり友達でしょ!?」


 ……俺は、今までこいつ等の何を見てきたんだろう、やはり心の何処かで、こいつ等を信用しきれてない部分があったのかも……な、。




 『第2章 この爆裂娘の故郷へと!』




 あの後、四人で話合った結果、もっと自分達を信じようと言う結果になったのと、定期的にこういうのをやる……という約束になった。


 やはり対話は必要、この世で必要なものランキング第2位だ。


 因みに1位は筋肉、筋肉は裏切らない。


 しかし困った事もある、それは………


「………なぁ、めぐみん、近すぎて作業出来ないんだが。」


「気の所為です、ささ、集中して下さい。」




「………なぁクリス、そんなに俺をチラチラ見なくても、自分の敵に集中してくれ。」


「うぇっ!?き、気の所為だよ!!さぁって今日もクエスト頑張ろう!!」




「………なぁダクネス、お前何時もより薄着過ぎないか?」


「ん?あぁ気の所為だろう、全く、和真もデリカシーがないな。」





 ………異様に三人の行動が違ってきた、めぐみんは何時も近くにいるし、クリスはクエスト中だろうと俺をチラチラ見てくるし……ダクネスはエロくなったし。


 ただ三人とも俺を心配してくれての事……だと思っている、ダクネスは多分趣味だろう。


 ……それに、困った事だけでもなく、ちょっと嬉しい事もあった。


 なんとミツルギがサキュバス店に立ち寄っているのを見つけたのだ!!俺はあいつに性欲があった事が今まで一番嬉しいよ……、まぁお仲間の二人に見つかって修羅場ってたけど……なんか助けて欲しいのか目線を送ってきたが、にっこり笑顔を送ってやった。


 そんな良くも悪くも、少し変わった日常を過ごしていたある日………


「………ん?おーいめぐみん、お前宛の手紙だぞ。」


「あれ?前に家族に手紙を出してまだ一日も経ってないのですが……どうしたのでしょう。」


 そう言って俺から手紙を受け取るめぐみん、中身を開けて確認していると……みるみる内に険しい顔へと変わっていった。


 一体中身はなんだと言うんだろう……。


「………和真、クリスとダクネスを呼んで来て下さい。今すぐです」


 焦った様に言うめぐみんに気を押され、さっさとクリスとダクネスを呼んで居間に集めた。


「それで、皆を集めてどうしたの?めぐみん。」


「………実は、私の故郷からこの様な手紙が届きまして……。」


 そういっておずおずと手紙を俺達に差し出すめぐみん、えーとなになに?


¦ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄¦

¦この手紙が届く頃には、きっと私はこの世にいな¦

¦いだろう………。               ¦

¦我々の力を恐れた魔王軍がとうとう本格的な侵略¦

¦に乗り出した。               ¦

¦愛する娘よ、こんな親父ですまなかった。   ¦

¦あまりお金を掛けてやれず、とても後悔している¦

¦さらばだ…、、               ¦

¦______________________¦


「……なんだこれ…。」


「多分父の手紙です、筆跡が父と同じなので……。」


「えっと……つまり。」


「……めぐみんの故郷がピンチ……ってことか。」


 さて、どうしたものか……まさかこんな短期間で魔王軍相手に対峙することになろうとは……本当に俺は運が良いのだろうか?


「良し…お前ら準備しろ!明日の朝から出発だ、俺は今から馬車の手配でもしてくる。」


「「おぉー!!」」


「………」




 ……さて、馬車の手配に行くんだが……道がわからない、誰か通りすがりの人に聞くか。


 お、早速前から人が………いやあれは人じゃないな、無視でいいだろう。


「おや?誰かとお前ば、最近爆裂娘が近くに居るせいでいい匂いを嗅いだり、ドM娘の普段着に興奮している小僧ではないか、丁度いい所に居合わせたな!」


「嘘つけ絶対分かってただろ……んで、今日はどうしたんだ?」


「ふん、そんなのは一つに決まっておる、あの頭の可笑しい爆裂娘の故郷へ行くのだろう?なら明日の朝うちに寄るが良い!!馬鹿店主がテレポートで連れて行ってくれるだろう。」


「そうか………それで、その対価は?」


「それはまた後ほど!」


 そう言って高笑いしながら去っていったバニル……何を要求されるのやら、しかしウィズさんがテレポート先に登録していたとは……ラッキーだな。


 何もせずに帰るのもなんだし、サキュバスの店にでも寄って帰るか。







 ………そんなこんなで迎えた朝、全員の準備が終わったのを確認し家を出る。


「ん?めぐみんどうした?顔色が悪いが大丈夫か?」


「………実は、故郷には年の離れた妹が居るのですよ、それがかなり不安で……。」


「そうか……それなら急いだ方が良いな、速く行くぞ。」


 そうしてウィズの店へと足を運び扉を開く。


「へいらっしゃい!シスコンのネタ種族に最近あまり活躍がない娘!最近貴族で噂のバストアップ運動をしている女神にサキュバスに通ってるのをバレてない男よ!丁度いい所に来たな!」


「あ!お前馬鹿バラすなよ!!」


「シ、シスコンじゃないです!ただ心配なだけです!!」


「………」


「活躍がない……か、……。」


 店の中を掃除する怪しげな仮面を被った店員に挨拶され、ダクネスが落ち込みめぐみんが唸り、クリスに冷たい目を向けられる俺、やっぱり来るんじゃなかった。


 ……に、しても何故か店内にウィズが居なかった、今日はウィズに用があるっていうのに。


「さて、あの馬鹿は今は少し眠っておる、起きる間におすすめ商品でも買っていってはいかが?」


 そう言って、ここぞとばかりに差し出してきたのは小さな蓋の開いた箱。


「……これはなんだ?」


「アンデット避けの魔道具だ、蓋を開けとくだけでアンデットを寄せ付けない便利アイテムだ。」


 アンデット避けか……これだけ便利なんだ、どんなデメリットがあるんだろう…。


「それで、デメリットは?」


「特にない、強いて言うなら高くて使い捨てな所と、うちの店主が今半泣きで耐えているくらいだろう。」


 駄目じゃねーか。


「換気してやれよ……、まぁお一つ買っとくよ。」


「毎度あり!!一つたったの百万エリスである!!」


「たけぇよ!!」


 そうして換気が終わるまで、店内を見て回る事にしたのだが………


「ねぇ和真、また"あそこ"に行ったの?」


「落ち着けクリス、これは必要不可欠な事なんだ……な?許してくれ。」


 クリスに問い詰められて店内を見る余裕などなく、速くウィズが復活してくれることを願いながら、クリスのナイフを避けながら待つ。


「すいませんお待たせしました!!それで……行き先は紅魔の里ですか……懐かしいですね。」


 泡や首が飛ばされる寸前、ヒーローが遅れでやってきた。


「ほら、ウィズも起きたしこの話は後で…ね?」


「………」


 クリスは無言で俺から離れる…、危ない危ない……危うく大変な事になるとこだった。


 まさか的確にエクスカリバーを狙ってくるとは……。


「さて、それでは皆さん良い旅を……!!『テレポート』!!」

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