魔法少女パブリック

八戸三春

第1話

ある夢を見た……。魔法少女に変身した自分が……巨大な敵と戦うというなんとも現実味のない夢だった……。


しかし、夢の中なのにやけにリアルだなぁ〜と思っていた。痛みの感覚もあるし、身体を動かそうとするとちゃんと動くのだ。まるで本当に現実のよう……。いや……これ、本当に夢なのかな? そう思った時……後ろから何かが迫ってくる気配を感じた。振り返ろうとすると全身に強い衝撃を受け地面に叩きつけられる。


目が覚めると手にはスマホを手に添えて置いてた。魔法少女ゲームの続きでもしよっかなと思いながら画面を見ると画面の右上にアイコンがあり、そのアイコンを押してみると見慣れないアプリがあった。


とりあえず起動すると、そこには黒い背景に赤い字で書かれたメッセージがあるだけだった。


〈魔法少女になれ〉 意味がわかんなかった……。魔法少女になったところで何をすれば良いのか分からないし……。


時間を見ると学校に行く時間だった。仕方ないので学校に行きますかね……と思い支度をする。


朝ごはんを食べようとリビングに降りて行くと母さんが椅子に座っていた。挨拶をしようとしたが何故か無視された。いつもなら笑顔で返事してくれるはずなのにおかしいなと思った私はもう一度話しかける。


今度は顔すら合わせてくれない……。


不思議に思った私が近づくと母は「近づかないで!」と言った。びっくりして立ち止まっていると妹が来て私に向かってこう言った。


「お姉ちゃんうざい」


……えっ?どういうこと?どうしてこんな事言われてるんだろう?訳わかんない。


そんなことしてる場合ではなかった、学校に遅刻してしまう!早く行かないと! 急いで家を出て自転車に乗る。今日もまた一日が始まると思うと退屈だけど友達と遊ぶとそんな日々は吹っ飛ぶ。




5分前に学校に到着し、席に座ると隣の席の大瀬さんが声をかけてきた。


「おはよう血矢さん」


「うん、おはよう大瀬さん」


挨拶を交わした後、先生が来るまでの時間を潰すために二人で会話をしていた。


その後、横山さんも登校してきたため三人で雑談を始める。まだ飯田さんが来ていないみたいだったので三人とも待つことにした。


チャイムがなり、結局、と飯田が欠席となった。担任の先生から飯田さんの連絡事項を聞いた後、授業が始まった。


一限目の授業中、ふと窓の外を見ていると、グラウンドの端にある花壇の花々を見て私は驚いた。


それは見たこともないような色をした綺麗な花々が咲き誇っていたからだ。


(なんだあれ……あんな花あったかな?)


そう思って見つめていたら先生に注意されてしまった。


休み時間にあの花は何か聞いてみたが、誰も知らなかった。誰か知っている人がいれば教えて欲しいと頼んでおこう。


二限目の国語の時間、先生が朗読する本を読んでいる最中にポケットから通知がなり、スマホを確認するとまた魔法少女のゲームアプリが入っていた。


しかも、今回は画面左上に魔法少女変身アプリと書かれたアイコンがあるのだ。


まさかと思いながらもタップしてみる。


〈魔法少女になれ〉 やっぱりそうだ。このアイコン押せば魔法少女になれるってことだよね?じゃあ押すしかないじゃん! アイコンを押してみる。すると私の身体が光り始め、身体中に何かが流れ込んでくる感覚を覚えた。


光が収まると、身体が軽い……。そして視界が高くなってく。恐る恐る鏡の前に行き、自分のスマホの写真を見ると……そこには魔法少女になった私が立っていた。


やったぁ!魔法少女になれたよぉ!! 嬉しさに思わずガッツポーズをしちゃったよ。


しかし、すぐに異変に気づく。なんだろう……違和感がある。


よく見ると……スカートが短くなっていたのだ……。パンツ見えそう……。


とりあえず、スマホで調べてみると、魔法少女の服装には様々な種類があるらしい。


その服の種類を眺めていると、ある項目に目が止まった。


〈ミニスカ〉


えぇー!?これ絶対履かなきゃダメなやつだよね……仕方ない……。


私は顔を見上げると誰も教室に生徒達は居ない。


表示されてるのは咲菜のHPバー。


もしかして私だけじゃない?


咲菜のHPバーの通りに進んで行くと、無事に咲菜が校舎の1階に居た。


「な、なにこれ……」


「どうしたの?」


「これ見て」


咲菜の指差した先には大きな扉があった。


「ここを開けろって事かな?」


「でもどうやって開ければ良いんだ?」


「みなさーん! 大丈夫ですかー?」


遠くから聞こえる声。


声の主は……


「あっ! 大瀬さん!」


「良かった〜、無事だったんですね!」


「はい。何とか。でも、ここは一体どこなんでしょうか」


「それが私にも分からなくて」


「とにかく今はここから出ませんか?ここにいても何も始まりませんし」


「でもこの扉が気になるけど」


皆、扉に視線を向ける。


鉄製の大きな扉。


重々しい雰囲気を放っている。


この扉の向こうに何があるのか、想像できない。


それにしても、こんな大きな扉は見たことがない。


まるで何かを隠しているように感じる。


ガチャッ 鍵が開いた音が聞こえた。


そして、ゆっくりと開く。


中は真っ暗だった。


中に入るのは少し怖い。


でも行かないと。


行かないと、きっと後悔する気がする。


行かないといけない気がする。


そう思う。


だから私は暗闇の中に入って行く。


1歩。


2歩。


3歩。


歩数を数えると一筋の光から徐々に広がってく。


10歩目。


足を止めると、目の前に大きな木が見える。


周りは草で覆われていて、とても静かだ。


ふと上を見ると葉の間から空が見えた。


雲がゆっくりと動いているのがよく見える。


風が吹くと木々が揺れ、音が鳴る。


自然の音は、私の心を落ち着かせてくれる。


私はしばらく、ぼーっとしていた。


ふと、後ろを見ると、さっきまで無かった道が出来ていた。


私は迷わず、その道を進む。


歩くこと数分。


その先に待ち伏せたのか、4体の動物が居た。


見たこともない生き物。


全身は灰色。


犬のようで、猿のような、狐のような、鹿のような、兎のような、牛のような、狼のような、鳥のような、熊のような、猫のような…………様々な姿を持っている。


大きさもバラバラ。


小さい奴もいるし、大きい奴も居る。


人間くらいの大きさの化け物も立ってた。


そいつらは、二足歩行をしている。


もしかして襲われるのか? 警戒するがそんな様子もない。


私は、その人達に話しかけてみる。


すると、その人たちは私の方に近づいてきた。


よく見ると、私より身長が高い。


私はその人たちと話そうとした時、その人の手が私の頭に伸びてくる。


私の頭を触る。


すると、小さい化け物が急に喋り出した。


「ようこそ、キャプティブシーンヘ、貴方達はこれからこのゲームに参加してもらうっぴ」


ゲーム?どういう事だ? 頭が追いつかない。


まず、ここはどこなんだ? そもそも、この生き物は何? 色々な疑問が浮かぶ。


しかし、1番気になるのは、今の状況だった。


私が口を開く前に飯田さんは言う。


「貴方達は誰? そもそもなんの目的があってこんな事をしてるの?」


そうだ。それが聞きたかった。


この状況を理解出来ないでいた。


「名前はラクス、貴方達のゲームマスターっぴ」


また意味不明な事を言う生き物。


どうすれば良いんだろう。


とにかく状況を把握したい。


とりあえず会話をしてみようと思ったがまた大瀬さんが質問する。


「何故私達をここに呼んだんですか?」


それは確かに私も思った。


何故私達がここに呼ばれたんだ? それにこの子達の目的は? 謎だらけだった。


しかし、私の考えは無駄に終わる。


「それは貴方達を消すためです」


この一言によって。


私達は絶句した。


何を言っているんだこの子は。


そんな私達に続けてこう言った。


「このゲームに勝てば元の世界に戻します。しかし、負けたら、そのままこの世界で永遠に暮らすことになります」


永遠に暮らす……?どういうことだ? 負けると死ぬってことか? いや、そんな事はないか。


「では早速勝負を始めるので移動しますよ」


そう言うと、周りの景色が歪み始めた。


私達は気付いた時には、真っ白な空間にいた。


何も無い。


ただ白いだけの部屋。


床、壁、天井も分からないような部屋。


そこには5つのドアがあった。


1つは赤い扉。


その隣には青い扉がある。


緑、黄色、紫、黒の扉の合計6つの扉がある。


この部屋は一体……。


私は辺りを見渡していると赤い扉の方から弱そうに助けを求める声が聞こえた。


その声の主は少女だった。


迷いもなく扉を開けると歳は10代後半くらいだろう。


髪が長く、目が大きい美少女である。


彼女は何かを探していたのか足元を見ながら歩いていた。すると彼女がつまづいてこけてしまう。その時、私は彼女の手を取り、立たせた。


『ありがとうございます』と頭を下げてお礼を言う彼女に私は優しく


『大丈夫ですか?』 と言う。


『えぇ大丈夫ですよ』と答えたのを聞いて安心したが、周りをよく見ると何もない白い部屋に驚きを隠せない。


するとその瞬間、横山さんが口を開いた。


「その子人間じゃない!!」


私はその声にビクッとした。


確かにこの子からは魔力を感じないが……。


すると由紀ちゃんは問い続ける。


「あなたエネミーでしょ、早く言いなさいよ」


その声に反応してその少女は言う。


『違います……』


少し怯えながら。


その表情は恐怖と絶望の感情を現していた。


しかし、この子は何も疑うような素振りを見せなかった。むしろ泣かせてるみたいだ。


「やめてあげて由紀ちゃん、怖がっているでしょう?」


私は由紀さんを止めた。


やはり、この子が化け物というのか? いや、見た目だけで判断するのはよくない。


きっと何か理由があるはずだ。


まずは由紀ちゃんの話を聞いてみよう。


「何で分かったの?まさか能力?」


「上のHPバーを見ろ、PVPモードだと表示されてる」


由紀ちゃんは冷静だった。


なるほど、ゲームだから相手の情報が分かるのか。


私達も見てみると、横山さんの頭の上からは、黄色の数字が見えた。


これはHPで緑はPVEモード。赤がPVPモードだ。


つまり、黄色の数字は体力を表しているってことかな。


そう考えてる瞬間に少女が突然うめき声上げながら倒れた。


どうしたんだ?


状況が理解できなかった。


「大丈夫か?」


私が話しかけると返事をしなかった。


「あれ?死んでませんか?」


大瀬さんが言う。


「多分大丈夫だと思う」


「それなら良いんですが……」


私はこの子を蘇生させた方が良いと思い、手をかざす。すると、彼女は目を覚ました。


「危ない!!」


由紀が私を突き飛ばした時、私はバランスを失い床へ倒れてしまった。その直後、目の前には、あの時の斧を振り下ろす姿があった。


由紀のお陰で間一髪避けれたものの、私は動揺を隠しきれない。


「どうして……。その子を助けたのに!」


「さっきも言っただろ!こいつは敵なんだ」


「そんなの嘘よ……だってまだ子供だよ!」


「騙されんな!!こいつの正体をもう知ってんだろうが」


「違うわよ……絶対にそんなわけ無いじゃない」


私は涙を堪えながら反論する。


だがそれは無意味に終わった。


少女の口角は上がっていたのだ。


「あぁーバレちゃったのぉ?」


口調が変化した。明らかに変わった。


まるで人格が変わったみたいだった。


その変わりように皆は驚きの声を上げている。


そして由紀さんが少女に言う。


「当たり前だろ! 何回も出くわしてるからね!あんたのことなんて覚えてるよ!」


そうだ。この子は確か……。あの子に似てるんだ。


私は思い出した。確かに彼女は、私と由紀さんが初めてこのゲームをした時に出てきた化け物と同じ姿をしている。


私は震えた。恐怖で手が震えていた。それと同じように咲菜ちゃんも体が震えている。


由紀さんが続けて言う。


「お前の目的はなんなんだ?」


『えっとねぇー目的って言われても、この世界に人間を連れてくることだよね』


「何のために連れてくるんだ!?」


『そりゃーもちろん殺すためよ!!』


その言葉を聞き由紀さんは少女を睨む。怒りと憎しみを込めた目で見る。


由紀さんは、何かを察していたのだろう。


「やはりか……やっぱりそうなのか」と小さく呟いていたのを聞いた。その表情はとても苦しそうだった。


少女は笑いながら斧を持ち上げる。由紀さんは構えたが遅かった。一瞬にして、私の視界から消えたと思ったら目の前には大きな鎌を両手に持ち、首元を狙っている姿がそこにはあった。由紀さんは咄嵯にしゃがみ込み避けることが出来た。しかしそのせいで後ろの壁に大きな傷がついた。


「由紀さん!大丈夫ですか?」


私は心配になって由紀さんの元へと走る。しかし由紀さんからは意外な答えが返ってきた。


「大丈夫だよ、ありがとう。それよりもこの子を止めてくれ」


「でも由紀さんが……」と言う前に「私は、大丈夫だから、お願いします」と言われてしまった。


仕方がないから私は戦う。私は変身して、魔法を発動させる。手を前に出し、呪文を唱える。その呪文は聞いたこともないもので、自分でも驚いた。


だけど、今は由紀さんの言う通りにしなきゃいけないと思い、必死に唱えた。


「光り輝け」


その言葉を発した途端に手から光が発せられる。その瞬間少女が怯んだ。私にもその感覚が分かるくらいだ。由紀さんは、すかさず斧を握り締めて、少女の方へ走り出す。そして剣を振り下ろす。すると斧ではじき返す音と同時に由紀さんの顔に赤い液体が飛び散る。由紀さんはその反動で体制を崩す。すると今度は横腹を切られた。


「ぐっ……しまった」


油断したせいで由紀さんはそのまま倒れた。それを見兼ねた咲菜ちゃんが駆けつけようと由紀さんのところへ向かう。私は攻撃対象を少女に変えた。


「今!!」と言って私は少女の胸を思いっきり殴った。


少女はよろけて倒れる。その隙に由紀さんが回復薬を取り出し飲んでいた。どうやら効くようだ。すると私を見て「ありがと……」と言いながら笑顔を見せてくれた。私はその表情がとても愛おしく感じてしまい、心がドキッとした。


由紀さんはすぐに立ち上がり再び斧を構えた。だが私はそれを阻止するように「もうやめてください!」と叫んだ。


しかし由紀さんは、私の声を聞かずそのまま少女へと突っ込む。少女は斧を構え振り下ろそうとしたが、由紀さんが素早く避けたため地面に叩きつけられただけだった。由紀さんはまた少女の懐に入り斬りつけた。今度は、上手く当たり、ダメージも与えたようで少女が少し苦しんでいるように見える。


そのチャンスを逃すまいと由紀さんが連続で斬りかかる。その時だった。少女が由紀さんに向けて口から炎を吐いた。


「やば!?」


と由紀さんは慌てて回避をする。


少女が口を開きもう一度火を吐き出そうとしていたので、私は由紀さんの前に立つようにして、シールドの魔法を唱えた。そして少女は口を開いて、火の塊を吐き出した。


そのタイミングで由紀さんは少女の背後に回って背中から斬る。少女が苦しんでる様子を確認してから私は口を開いた。


「もうやめて! その子を殺さないで! どうしてそんな酷いことをするの?」


「――お前、魔法少女になって人を助けるという概念は捨てろ、このゲームは遊びじゃないんだよ、お前みたいな甘い考えじゃこのゲームでは生き残れない」


由紀さんが言ったその言葉で私の中にあった希望が無くなっていくのが分かった。それは私が、一番分かっていたことだ。でも由紀さんはこのゲームのことをよく知っているはずだ。それなのに、このゲームの本質を理解できていない私に、由紀さんが怒りを覚えていることが分かった。


「由紀さん、その、私にはその言葉は意味がよく分かりません」


由紀さんは何も答えない。そして、由紀さんが斧を少女に向かって振るうと少女は苦しみだす。もやもやが止まらず斧が止まることがない。その斧を振るうと、首をはねた。すると少女は黒い霧になって消えていった。その光景を見た私は恐怖で足が震えていた。その恐怖をかき消すために私は声を出そうとするが恐怖のせいで思うように喋れなかった。咲菜ちゃんも頭を押さえて、何かに耐えていた。


「咲菜ちゃん!大丈夫!?」と私は咲菜ちゃんの元へ駆け寄る。


「え、うん……大丈夫です、ちょっと、頭痛がしただけですから」


「そう? 大丈夫?」


「大丈夫です」と聞くと咲菜ちゃんは、笑顔で答えるが無理をしているのか、顔色が悪い。


すると、咲菜ちゃんは由紀さんの方を見るなり「あぁ……」と言って目を逸らす。


由紀さんを見ると、まだあの子のことで悩んでいるのか、表情は暗かった。


飯田さんも機嫌が悪くなったようで、腕を組みながら由紀さんの方を見つめる。


「由紀さん」と声を掛けるが反応がない。私は由紀さんの元に行き、話しかけようとしたその時だった。


「もうやだ!! やめて!!」と言って、咲菜ちゃんは喧嘩する不穏な空気の現場から私達のところから離れてしまった。


「あっ……」と私達はその様子を見ることしかできなかった。


飯田ちゃんは由紀さんの胸倉を掴んで「由紀さん、あなたは一体何をしたいんです? このままだと全滅しますよ」と言う。


「知らねぇよ……」


由紀さんは私達を置いて、どこかへ行ってしまった。


結局私と冬夏ちゃんだけになってしまった。


ゲームマスターはアイスを食べ終わり、口を吹く。


「チーム離脱は駄目だっぴ、ちゃんと全員クリアしてください」


そう言うと手を伸ばすと先程立ち去った咲菜ちゃんと由紀ちゃんが戻ってきた。


「由紀さん!?」


私は驚いてしまう。さっき別れたばかりなのにどうしてここにいるんだろうと思った。


「由紀さんはもう仲間じゃないですよ」と飯田さんが冷たく言い放つ。


「おい!」


「なんですか?」


「てめぇ、喧嘩売ってんのか?」


「いえ、そんなことはありません」


「だったら黙れよ!」


「それはできません、私はあなたの行動に疑問を持っていますので」


「だからなんだっていうんだよ」


「由紀さんはこのゲームの本質を理解できていない、ただそれだけのことです」


「うるせぇな!このゲームの本質なんて理解してるわ!」と由紀は怒る。


「それなら、なぜ、あんなことをしたのですか?」


「……」


「由紀さん、このゲームの本質は、この世界を救えるのは、魔法少女である私たちしかいないのです、それを理解していないのは由紀さんだけではないでしょうか?」


「……」


「由紀さんは、どうしてこのゲームを始めたのですか?」


「……」


「由紀さん、このゲームの本質を理解しているのであれば、その本質を大事にしなくてはいけません、由紀さん、このゲームの根底にあるものは、魔法少女になって人を助けるという理念ですよね? それなのに由紀さんは、人を殺めることばかり考えてます、それは違うと思います」


「由紀さん、あなたはこのゲームに囚われすぎています、もっと視野を広げないと」


「由紀さん、もう一度聞きます、このゲームの本質はなんですか? このゲームの本質は人助けをするということじゃないんですか? 人を助けるために戦うんじゃないんですか? 由紀さん、あなたは、一体何を考えているんですか?」


「由紀さん、あなたがもし、本当に、このゲームの本質を分かっていないのなら、あなたはこのゲームを辞めた方がいいです。


私は、あなたを信じて、このゲームを続けてきました、しかし、今のあなたには失望しました、もう、あなたとは一緒にゲームができません」


由紀ちゃんは怒りの限界を迎え、冬華ちゃんに向かって走り出す。


冬華ちゃんは、由紀ちゃんの攻撃するが、見えない壁に阻まれてしまう。


「はぁ!? おい!冬夏!」


「なんですか? 由紀さん」


「これはどういうことだ? 説明しろよ」


冬夏に質問するとラクスは彼女に徐々に近づき、困った顔をする。


「まあまあ、落ち着いてっぴ」


「落ち着けるかよ! お前がやったんだろ!?」


「そうだよ」


「ふざけるなよ!」


「私は君たちの願いを叶えてあげただけだよ」


「そんなこと言ってねぇだろ!」


「私は嘘をついてはいない」


「由紀さん、このゲームの本質を理解していないのであれば、あなたはこのゲームを辞めるべきです」


「うるさい!! おい、ゴミ猫! 早くその見えない壁を解除させろよ!」


「それはできないっぴ」


「由紀さん、早くこのゲームを辞めてください」


「嫌だ!!」


由紀はそう言って斧を何度も振るが、見えない壁に弾かれてしまい傷1つもつけられなかった。


「どうして……」


「さて、皆、帰るっぴ。今日はこの辺で終わりだっぴ」


「待って!」


ゲームマスターは消えようとするが、咲菜は止めようと手を伸ばすと彼女は消える寸前に手を掴む。


咲菜は、ゲームマスターに聞くと、「由紀さんは、私達の世界では英雄と呼ばれているの、由紀さんは私達を助けてくれたの、由紀さんは悪くないの」と涙目になりながら話すと咲菜は手を強く握る。ゲームマスターは困った表情を浮かべた。そして「わかった、じゃあ、ゲームは続けさせるっぴ、ただ、この世界にいる魔法少女全員を呼んで話し合うっぴ、そこで決めるっぴよ、でもそれは由紀さんが決めることだっぴ」と言うと、咲菜は安堵し、手を離すと、見えない壁が消え、由紀は体制を崩して転けた。「大丈夫ですか?」と咲菜は声をかける。由紀は「ありがとう」と言い、手を引かれ、立ち上がらせる。


冬夏は由紀に近づき、また喧嘩しようと感じたので私は二人に近づき、喧嘩を止める。


「ちょっと! 二人共、喧嘩止めようよ!」


このままではまた争いが起きてしまう。


二人はお互い見つめあい、何も話さず沈黙が続いてしまう。


由紀は冬華に「ごめん」と言うと冬華は「由紀さん、あなたは私のことが許せないでしょう、でも、私はあなたを絶対に責めません」と微笑み、由紀は黙り込み、無言で歩き出す。


冬夏も由紀に謝ろうとするが「おい、冬夏、行くぞ」と言われ、どこ行くのか混乱してた。


「何処に?」


「ご飯だよ! おいゴミ猫、早く帰らせろよ!」


「了解ッピ!」


ラクスはそう言うと、視界が変わる。いつものファミレス前にワープする。


――色々と料理が運んで来て、唐揚げやフライドポテトとかどれも高カロリーそうな食べ物だった。


「それじゃあ食べるぴ」


「おう」


私たちは席に着くと、目の前には由紀が座っていて不機嫌そうな顔をしながら料理を食べている姿があった。由紀はラクスを睨む。私は由紀に「あのさ、食べてる時くらい楽しくやろうよ」と言うと由紀は機嫌を変え、笑顔になった。


「そうだね! ごめん!」


私は由紀を見て安心すると、ポテトを由紀に渡し「はい! どうぞ!」と言うが、「私、ダイエット中だから遠慮しておくよ」と断る。私は少し落ち込みながらポテトを食べると、由紀は笑っていた。


私は冬華を見ると目が合うと、彼女は笑い、それにつられて由紀も笑う。全員空気が良くなり楽しそうにしている。

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