ジェットコースター、苦手!!!

とうふとねぎの味噌汁

第1話

「きゃぁぁぁぁ」

テンションの高い叫び声。重力に遊ばれ、風が強く駆け抜けていく。皆楽しそうだ。

「……」

私は必死だ。まず自分に暗示をかける。怖くない、死なない、少し耐えればすぐ終わる。上着のジッパーを限界まで閉め、フードを被る。左側の席に座り、腕を組んでもらい、右手で安全バーをがっしり掴む。左手で前の席の人の、背もたれにある手すりをがっつり掴む。少し前屈みの体制になりつつ、また暗示をかける。怖くない、死なない、少し耐えればすぐ終わる。動き出し、上がっていく。目を瞑る。怖い怖い、どうしようどうしよう。頭の中はパニックで、息を吸うことだけ考える。心臓が破裂しそう。少し止まったように感じ、落ちる。体がふわっと軽くなって、慣れ親しんだ自分の体重が体にかからなくなる。生きているのかわからない。足に力を入れていても踏ん張れない。息ができない。苦しい。一心不乱に空気を貪る。しばらくすると、体が潰れそうなくらい重くなる。自分の体が鉛みたいだ。上半身がもげると思ったら、またふわっと上がる。その繰り返し。本当に死にそうになる。

 私はジェットコースターが苦手だ。そもそも乗り物全般苦手だ。酔いやすいからもあるが、一番苦手なのは、ふわっと重力がかからなくなるあの感覚。新幹線のほんの少しの重力の縦揺れも無理だ。飛行機も無理。飛行機の離陸着陸の時は体が動かなくなってどうしたら良いかわからなくなる。エレベーターで下に降りるのも苦手だ。一二階分なら平気だが、3階分くらいから気持ちが悪くなる。普段生活をしていて、重力がかからなくなる時は滅多にない。水の中は浮力がかかるが、地上と繋がっているし、プールやお風呂が速く動くわけではない。ジェットコースターは私の苦手な乗り物No. 1だ。何が楽しいのかわからない。足で地面を踏み締めることができないあの感覚。足がすくんで、頭の中は真っ白になり、一番初めに浮かぶのが「死」という文字。このまま逝ってしまうのではないかと何度思ったことか。私にはジェットコースターが臨死体験をする乗り物にしか思えない。でも、ジェットコースターを楽しんでいる人もいる。彼らと私の何が違うのだろう。ジェットコースターが好きな友達に何が楽しいのと聞いてみたことがある。日常では体験できないスリルと刺激を楽しんでいるらしい。想像してみても理解できなかった。でも、私だってジェットコースターに楽しく乗りたい。遊園地自体は楽しいが、ジェットコースターは楽しくない。小さいのはなんとか乗れる。地面と近いし、友達と乗っているから。大きいのは無理だ。某鼠の国の雷の山のやつとか。叫んでみようと思うけれど、人間本当に怖いと声も出ない。息もできない。鼠の国に行ったときは、時間的にジェットコースターに何回も乗れない。でも、今回はコロナで人数が制限されていた。乗り物に並ぶ時間が少しで済んでしまうのだ。色々な乗り物に乗れたのは楽しかった。私でもメリーゴーランドや空飛ぶ像は乗れるし、とても楽しい。夢の国だと思う。でも、ジェットコースターに並ぶ時間も少しで済んでしまう。恐怖が来るのが早い。お腹が痛くなった。

 私の友達は皆優しく、私の気力を確認しながらスケジュールを立ててくれた。ジェットコースターに乗ったあと、急に無言になってしまったのはとても申し訳なかった。放心し、目が死んでいる私をよく置いていかなかったと思う。私だったら置いて行っている。それくらい私は空虚感に包まれていた。遊園地で、ジェットコースターで死にかけつつも、結局楽しい思い出で終わるのは友達のおかげだと思う。

ありがとう、友達……。

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