第131話 愛の奇跡

「ケイン! 呪いに打ち勝って!」


 ズガシュ!

 

 大ジャンプで真上から襲ってきた竜騎士ケインが、無防備に受け入れた恋人ローゼを串刺しにした!?


 槍の激突により盛大に舞い上がった瓦礫の粉塵が落ち着いたあとに現れたのは、串刺しにされたローゼではなく、固く抱き合うケインとローゼ二人の恋人だった。


「おれはしょうきにもどった! ローゼ! いつの間に人の姿を取り戻していたのだ!? もう二度と離さないぞ!」 

 

「あぁ、ケイン! 信じていたわ! 愛の力で呪いを打ち破ってくれたのね!」


破邪の剣はっつぁん!」


『おう!』


 盛り上がっているところ、ちょいとごめんなさいね。


 破邪モードとなったはっつぁんが、深紅のオーラの刀身をもって竜騎士ケインの左耳に装備していたイヤリングを突き刺すと、黒いモヤと共に断末魔の声ようなものが立ち昇った。


「ギャアー!」


 果たして声の主はケインだったのか、呪いのイヤリングだったのか……だがこれで竜騎士ケインが再度寝返ることはないだろう。……頼むぞ、こっちにはお前の恋人までいるんだからな!?


 ほんの数瞬ぐったりとしていた竜騎士ケインだったが、すっくと立ち上がると再びローゼと抱き合った後に、一言残すとすぐさま真上に大ジャンプした。


「すまん、ローゼ! 続きは後でゆっくりとだな!」


 吹き抜けのドームになっている玉座の間の上部へと飛び上がった竜騎士ケインが、こちらからは見えづらい吹き抜けの壁に槍を突き刺すと、青緑の鮮血が飛び散り、鳥タイプモンスターの姿が現れた!

 

「ギャガァー!」

 

 透明化の魔法で隠れていたのか!?

 

 皇帝コムゲーンが余裕をかましていたのは、いざとなれば伏兵で俺達を殺すつもりだったからか!?


「おのれケイン! 裏切ったのか!?」


「それは違うなガルーダ! 裏切ったのではなく、正気に戻ったと言ってもらおうか!」


 たちまち伏兵ガルーダと空中戦を繰り広げる竜騎士ケイン。ガルーダといえば、鳥系モンスターの中でもトップスリーに入る脅威のボスモンスターだが、まさか皇帝の配下として潜んでいるなんて!?


 だが、ガルーダは竜騎士ケインに任せるしかなさそうだ。暗黒騎士レオナルドもほぼ同時に襲いかかってきていた。


 レオナルドは昔のイーリアスと同様、対人戦では比類無き強さを持つ暗黒騎士ダークナイトだ。かすっただけでもHPやMPをごっそりともっていく、スキル『闇の剣』と『黒の剣』さらに『暗黒』を使ってくる。


 俺が前衛として、暗黒騎士レオナルドとバチバチにやり合っていると、弓矢と魔法で援護してくれていたサリアから檄が飛ぶ!

 

「ルイとザックは皇帝をお願い! 暗黒騎士は私達が引き受けるわ!」


 精密な弓矢と魔弾銃での射撃に加え、魔法で援護してくれていたサリア、ダズー、ミンク、ローゼ、アルファが俺に皇帝を倒せと促す。


 確かに暗黒騎士の射程の外からの波状攻撃は、一人きりの戦士系ジョブにとっては鬼門ともいえる必殺の構えだ。接近されて、いざとなれば高ステータスを誇るローゼが盾役となって再び仕切り直せば、豊富な回復手段があることだし全滅することはないだろう。


「ここは任せた!」


 俺とザックは皇帝コムゲーンに突撃する!


 距離を詰めつつある俺とザックに、ついに皇帝コムゲーン=ジョアークが玉座から立ち上がった!


「ええい、下郎! 控えよ! ウインザム! 魔法剣サンダザム!」


 極大風魔法ウインザムが俺達に襲いかかり、自身へは魔法剣サンダザムにより強烈な一撃を可能とした雷の魔法剣を仕込むコムゲーン!


 「ぴえぇ〜!」


 ウインザムは黒チョコザの得意魔法でもあったザックにより相殺された。だが、続けて放たれた魔法剣サンダザムの雷を帯びた伸びる刀身が横なぎに襲いかかってきた!


「雷大地斬り!」


 ズガガン!


 凄まじい威力だ!


 だがもう少しで完成するカチモンの俺がしっかりと防御をすれば、そこまでのダメージはない! オーラを纏わせた腕でしっかりと受けた!

 

「並の戦士ならかすっただけで消し炭になる、予の魔法剣を受け止めただと!?」


 さらに接近して俺の拳が届く範囲にきた!


「おらぁ!」


 ズドドドドンッ!


「重い! だがまだまだよ!」


 皇帝コムゲーンもなんなく俺の拳を受け止めた!

 

 すでに破邪の剣はっつぁんが左手のナックルと化して紅く輝き、攻撃力がとんでもない事になっている俺の左拳。そこに更に俺のオーラパンチのエネルギーを練り込んでいくイメージで……

  

「閃火裂紅拳!」


 ドバン! 


「ぐっ! 今のはなかなかであったぞ! 褒めてつかわす!」


 まだまだ軽口をたたく余裕のある皇帝コムゲーン。極大の雷を帯びたカウンターの斬撃が俺の首を刈り取らんと迫る!


 両腕をクロスさせて必殺の斬撃を防ぐ!


 今のは危なかった!


 皇帝コムゲーン=ジョアーク、強い!!


 さすがは百年前に大魔王デスジードを討たんと、単身でデスジード城に乗り込んだ元勇者だ!


 おそらく各種ステータス値は、あの圧倒的だった超人魔王アイスを越えている! 

 

 今の俺はミンク達の白魔法と時魔法で、かなりの補助を受けているというのにこの状況だ!


 決め手を欠きつつも、不死鳥フェニックスザックの的確なサポートもあり、皇帝コムゲーンとなんとか渡り合う。


「くらえ! ブラッディスクリュード!」


「ぐおっ!」


 ギリギリで直撃をかわした、闇堕ち勇者の使う防御無視の貫通攻撃が、俺の右肩をえぐる!


 かなりのHPを持っていかれたが、致命傷というところまではいっていない。チャモ爺さんに防御無視攻撃に強くなる様に強化しておいてもらって助かった!


 すぐさまエクストラポーションでダメージを回復させる。破れたチャイナドレスがはだけ、右パイがはみ出して露出してしまっていたが、グニグニとチャイナドレスが動き元通りに覆っていく。再生機能ナイス!


「ブラッディスクリュードの一撃でも仕留めきれんとは……」


 皇帝コムゲーンも決め手に欠けてきたのか、表情に焦りが浮かんできた。だが今俺たちにかかっている、魔法による各種バフがタイミング悪く切れてしまえば、負けるのは俺とザックの方だろう。


 皇帝コムゲーン優勢のまま激しい戦闘は続いていく。


『ルイ! 一か八か、ここ最近で溜め込んどった儂の聖魔石の力を一気に解放して上乗せしたる! その後は出力が弱まるから一発で決めるんや!』


 破邪の剣はっつぁんが念話で戦術サポートしてきてくれた。サンキューはっつぁん。その力使わせて貰うぜ!

 

「ぴえぇ〜!」


 ザックが天高く一鳴きした瞬間、俺とザックの間で何かが繋がった!


「アルティメットユナイトスキル、燃えろ体内宇宙コスモ発動!」



 


 ――――――――――――――――――――――――――――



 むふふ、技名を当ててください(*´艸`*)


 いつも応援していただきありがとうございます。


 

 

 

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