第75話 朝の儀式がレベル5に!? (ちょいエロ)

 飛空艇ミューズ号は中央高山地帯に沿うように東へと進んで行く。飛行途中の次々に流れていく雄大な森林や草原、目の前に広がる山脈のパノラマを眺めながらの空の旅は実に快適だ。感嘆している間にモロダジャナ王国の飛空艇建造ドックへと着いた。


「さぁ着いたぞい! 早速ドックにいる飛空艇技師達に話をつけて来るぞ! ルイも着いて来るのじゃ!」


 早く潜水艇を作りたくてウズウズしていた飛空艇技師のシュドウが率先してドックの中へと駆け出していく。


 シュドウが自身の作業グループの面々に設計図を広げてプレゼンする。それを聞いた作業グループの皆は、新しい乗り物を一から創り出す事に興奮を覚えて、前のめり気味に作業に参加してくれるようだ。


「……そういう事で良いな? それではルイはここにジャイアントタートルの甲羅を、あそこの空の水槽にジェリー粘液を出してくれるか?」


 シュドウの指示に従って、俺はインベントリから取り出したアイテムを指定の場所に置いていく。


「シュドウさん浮遊石はどうしますか?」


「浮遊石は儂が今直接預かろう。この後、潜水艇の完成までに五日位かかるので、それまではドックの宿舎の客室で自由に過ごしてもらってよいぞ。自慢の大浴場もあるんじゃ。エリーの村に行って帰って来るのも乗組員は残しておくのでミューズ号を使ってくれて構わんぞい」


「ありがとうございます」


 迷惑をかけないように、ドック内に既にある材料費や制作費用と、飛空艇建造ドックの施設使用料等を、ドックのお役人さんに魔導具決済でまとめて支払った。




 その後は完全な自由時間となり、パーティーの皆との相談の結果、今日はドックの宿舎でゆっくりと過ごし、翌日の朝エリーの故郷ビーギン村へと向かう事になった。


 よし! という事で早速シュドウ達飛空艇技師自慢の大浴場へ行こう。宿舎に着いて、俺が真っ先にお風呂へ向かおうとしたら、むんずとエリーとイーリアスに首根っこを掴まれてしまった。


「待て、ルイ。そうはさせんぞ」

 

「ルイちゃん? ルイちゃんはもうお風呂に一人で入るのは禁止だよ。絶対に私達と一緒に入るようにしてね」

 

 振り返ってエリーの顔を見ると、怒っているのか若干赤い顔をして引き留められてしまった。 


「えっと、ネアとローザとの事で怒ってる?」


「怒ってません! 心配しているんだよ」


「そっか……心配かけてごめんね。それじゃあ……皆でお風呂に行こっか?」


 俺の提案にコクリと頷くパーティーメンバー一同。


 脱衣所にて、すぽぽぽ〜ん! っと服を脱いで全力でお風呂に挑むシーラと、ゆさゆさしながら慌てて後を追いかけるカサンドラ。眼光鋭く周囲を警戒しつつ、ぷるるんと裸になるイーリアス。そして赤い顔をして眼光鋭くツツツっと裸になるエリー。


 うむ、眼福ですな。


 脱衣所で脱ぐところを見たのは初めてかもな。一人取り残されるのは寂しいので、俺もあっという間に裸になった。もうだいぶ見慣れてきた、いつもの自分の裸だ。相変わらずけしからん胸だこと。


 お風呂場はキャッキャウフフのパラダイスだった。


 平和って良いなぁ。


 この平穏が長く続くように頑張らないといかんな。


 決意を新たにその日はぐっすりとフカフカのベッドで眠り、そして翌朝。




 いつものように日の出と共に起き、いつものように先ずは自分自身のけしからん胸を一揉みしてから、仲間と共に朝の儀式を開始する。


 そう、恒例の早朝トレーニングの時間だ。


 いつもの筋トレ一式をした後に、エリーの要望通り、今日も念をたっぷりと込めて揉む。


 エリーが終わって、次はイーリアスをエリーが揉む番かと思っていたら、イーリアスがエリーに向けて片手を上げ「待て」と制止する。


「今日からは主にルイにやってもらおう。良いなエリー?」


 問われたエリーはコクリと頷く。状況が飲み込めず戸惑っていた俺に、改めてイーリアスが告げた。


「前に言っただろう。ルイに足りないのは女に対する免疫だ。我々でトレーニングして慣れてもらわねば、いつこの間の様に死にかけるか分かったものではない。母上にも事情を話したら、喜んで協力してくれるそうだぞ」 


 え〜!? 溢れる母性カサンドラにも協力を頼んでしまったのか!?


「戸惑っている間はまだ慣れが足りない証拠だ。女同士なのだ、遠慮することは無い。皆お前の事が好きなのだから死なれては困るのだ」


 イーリアス!


 そこまで皆が俺の事を心配してくれているなんて!


 ありがたい申し出だ。お世話になります。


 トレーニングにいそしんでいると、自分でもほっぺたが緩むのが分かった。ふとエリーを見ると、嬉しいような哀しいような複雑な表情をしていた。


 あ……


 違うんだエリー!

 俺は、大きな胸も小さな胸も平等に愛している!

 勘違いしないでよね!


 そんなに哀しそうな顔をしないでくれ!

 

 俺は、つとめて無表情を貫く事を決めた。


 そんな事を心に誓っていると、「みんなおはよ〜!」と元気な声がベッドから聞こえた。


 シーラだ。


「あれ? みんなでお胸をもんで何やっているの?」


「皆で朝のトレーニングをしているんだよ」


 俺は、間髪入れずキリッと言い切った。こういう事は強気で、さも当たり前であるかのように言わなければいけない。そうじゃないと、いかがわしい事をしていると勘違いされてしまうからな。

 

 だらしない顔を引き締めた後で良かった。


「ふーん、なんだかみんな楽しそうだね! わたしもまぜて!」


「ダメだ! シーラにはまだ早い。これは大人になってからやる事だよ」


「え〜!? わたしだけ仲間はずれはイヤ!」


「いいかいシーラ。俺の故郷の日本って所にはな、偉大な勇者が残した『イエスロリータ・ノータッチ』という格言が有るんだ」


「いえすろりーた? のーたっち?」


「そう。この教えを破ったものは(社会的に)死ぬ」


「え!? ルイお姉ちゃん、死んじゃやだ! じゃあ仲間に入れてもらうのはあきらめるよ……」


 シーラがしょんぼりとしてしまった。これはいかんな。シーラを悲しませたくはない。


「シーラこっちに来て、ここに座って」


「うん……」


 俺の前にシーラを座らせると、「毎日早起きが出来てシーラは偉いな」と言いながら頭を撫でてあげた。


 最初はきょとんとしていたシーラだったが、俺がナデナデし続ける間に「えへへ~」とニマニマして天使の笑顔を皆に振りまいてくれた。


 一日を始めるには最高の笑顔だね。


 良いものを拝めた事だし、朝の儀式は速やかに終了し、皆で飛空艇ミューズ号に乗り込んだ。そしてエリーの里帰りをしに、エンダーランド王国のビーギン村へと進路を定め、飛び立つのだった。


   


 

 

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