第73話 仲間と共に (第二部完結)

 聖竜王ファーヴニルが星霊アストラル界へと旅立った後、シーラの元には、『聖竜玉の道標』『聖竜の牙』『聖竜のひげ』『聖竜の角』『聖竜の革』『聖竜の鱗』そして『りゅうのしっぽ』が遺されていた。


『聖竜玉の道標』は聖竜の姿をモチーフにした精巧なペンダントタイプのアクセサリーだ。ペンダントトップには聖竜玉があしらわれている。


「ルイお姉ちゃん、これどうしたらいいのかな」


「『聖竜玉の道標』は今ここでシーラが身に付ければ良いと思うよ。残りの聖竜素材は、使う時が来るまでシーラのインベントリに大事に入れておくと良いんじやないかな」


 俺はそう言って『聖竜玉の道標』をシーラにつけてあげた。


 数瞬の後、シーラから白く輝くオーラが噴き上がり、シーラの顔付きも変わった。


「わわわわ!? え!? うん、お父さん、わかったよ。しっぽを使えば良いんだね」


『聖竜玉の道標』を身に着けた直後にトランス状態となったシーラが、突然誰かと会話を始めた。相手はファーヴニルのようだ。


『りゅうのしっぽ』を手に取ると、ふわりと飛翔し、今いる聖地中央の島の中心に突き刺した。


聖絶せいぜつけっかい!」


 シーラがそう唱えると、シーラから白い光の奔流が溢れ出し、『りゅうのしっぽ』を起点に白い光のドームが形成され島を覆い尽くした。


「これでお出かけしてても、あんしん。ルイお姉ちゃん。つかれたからだっこして」


 白い発光が終わり、トランス状態が終了したシーラは、目をこすりながら俺にもたれかかってきた。慌てて抱きかかえてあげると、そのまますぐに寝てしまった。


 どうやら力を出し切ってしまったようだ。シーラを起こさないように、聖竜素材を俺のインベントリへと収納すると、仲間達と今後の方針を話し合う。


「さてと、聖地チャンティ湖でのイベントは全て終わったから、先ずは飛空艇ミューズ号へと戻ろうか」


「そうだね。ゴライア君達も飛空艇でここまで来たんでしょ? 飛空艇はどこに停めて有るの?」


「ここからほど近い南の平原だ」

 

 エリーが問うと、ゴライアが飛空艇の場所を俺達に伝える。

 

「そっか、じゃあそこまでは一緒に戻ろうか?」


 エリーの提案通りで問題ないだろう。ローザカエルは虫かごの中で、まだひっくりカエルを続けている。

 

「そうだね、勇者パーティーの飛空艇まで着いたら、ローザカエルを元に戻そうか」


 俺とシーラがザックに乗り、エリーとイーリアスがチョコに乗った。勇者を乗せる事をチョコとザックに拒否された為、ゴライアは勇者を背負って再び歩き出した。ローザカエルの入った虫かごはエリーがぶら下げている。




 途中なんの問題もなく勇者パーティーの飛空艇まで到着したので、ゴライアがアイテム『乙女のチッス』を使い、ローザをカエルから回復させた。


 ローザは『疑似超人薬』から急激に解除された影響で、まだ眠っている。ゴライアが続けて万能薬を使ったが効果がなかった。一応俺も、状態異常を回復させるスキル『治療』を使ったが無駄であった。


 勇者アイスと違い魂が傷付いている訳ではないので、そのうち目覚めるだろう、という事で、勇者パーティーの飛空艇『グローリー号』の船室へと勇者アイス共々ローザを連れていき、ベッドへ寝かせた。


 飛空艇『グローリー号』には顔見知りの飛空艇技師がいた為、事情を話して俺達のミューズ号の元へと飛んでもらった。空の旅ならばすぐそこである。


 チョコはそのたった少しの間に、勇者パーティーのチョコザ四頭を完全に従えていた。流石は激レア進化のクイーン種といったところか。


 


 飛空艇ミューズ号と合流したグローリー号の飛空艇技師は、停泊中のミューズ号で同僚の飛空艇技師であるシュドウと楽しげにここまでの旅を話し合っている。イーリアスもカサンドラとの会話を始めていた。


 俺達も疲れているので、今日はこのまま停泊中のミューズ号の船室で休み、翌朝起きていれば、シーラとローザも交えて今後の方針を話し合う事となった。




 翌朝になって、俺とエリーがグローリー号の勇者アイスと黒魔道士ローザの船室に向かうと、ローザが起きていた。ローザが気絶した後の話を、勇者の今の状態を含めてゴライアから聞かされて、ひとしきり泣いた後だったそうだ。


「お風呂での事はごめんなさい。勇者様の呪いを解いてくれてありがとう」


 ローザが土下座をして謝ってきた。


 ネアの正体の事があったので、お風呂でのローザへの怒りは、もうほとんどしまっていた。

 

「もういい加減俺達に絡んでくるのはやめてくれよ。お風呂での事はこれでにしといてやるよ」


 そう言いながらローザを立たせるとビンタをしてやった。


 俺の軽くはローザにとっては軽くなかったようで、その場で4回転程くるくると回ると、華麗とは言い難い止まり方をして、「わかったわ」と答えた。


 俺とエリー、ゴライア、ローザは話し合いの為に借り受けていた、グローリー号の船長室へと移動した。船長室ではイーリアス、シーラ、カサンドラ、飛空艇技師シュドウと同僚技師一名が俺達の事を待っていた。


「さて、それでは今後の方針会議を始めようか。シュドウさん、ジャイアントタートルの甲羅を利用した潜水艇の方はどうなっていますか?」 


「おう、もう設計図は引き終わったぞい。材料も調達出来とるし、後は儂らのドックに戻って作業をするだけじゃ! いや~着工するのが待ち遠しいのぉ!」 


「潜水艇の方は順調と。ゴライア、ローザ、お前達はこの後どうするんだ?」


「うむ、ローザとさっき話し合ったのだが、俺達の故郷ビーギン村でしばらくの間静養しようと思う。アイスも家族の元でなら目を覚ますかもしれんしな。それでも駄目ならば、賢竜に教えていただいた『竜伝山』へと行ってみようと考えている」


 俺はちらりとエリーの方を一度見てから、ゴライアへこちらの考えを伝える。


「『竜伝山』へ行くのはお前達三人だけで平気か? 一人は寝たきりなんだが。何だったら俺達も手伝う事も出来るが······」

 

「いや、ありがたい申し出だが、それは遠慮しておこう。これは俺達パーティーの問題だ。それに我が妻よ、お前達はお前達で先を急ぐ旅をしているのだろう?」


「妻じゃねーし!」

「ルイお姉ちゃんはゴライアおじさんと、けっこんしてたんだ!?」


 俺が突っ込むのと、シーラの口から驚きが漏れるのがほぼ同時だった。


「違う!」

「まだだが、もう間もなくであろう。故に妻と呼んでいる。······俺はまだ16歳なのだが······」


「間もなくどころか、一生男と結婚なんかしねーよ! 嘘ばかり幼い子供に吹き込むんじゃない!」


 俺にきっぱりと言われて、ゴライアがシュンと落ち込んでしまった。


 ど、同情なんかしてあげないんだからね!?


 お前は見どころのあるイケメンマッチョなんだから、早いところ他の女の子を見つけてきなさい!


「里帰りか。エリーも一度ビーギン村に帰ったら? どうせ大亀の甲羅を飛空艇ドックに預けたら、何日間か次の冒険には行けないんだし」


「······そうだね。それじゃあお言葉に甘えて、一泊くらい立ち寄らせてもらおうかな。家族も紹介したいし、皆も一緒に来てね」 

 

「ああ、付いて行くよ。楽しみだね、エリーの家族かぁ、妹と弟もいるんだよね?」





 その後俺達は、勇者パーティーと聖女パーティーに別れ、それぞれの飛空艇にて一路ズイーブト大陸を目指した。


 途中、熱くなった二人の飛空艇技師が、二隻の飛空艇にて空のドッグファイトを何度も引き起こしたのは、また別のお話である。



 『第二部 美少女モンクと新たな魔王』


  ―――― 完 ――――


 


 ―――――――――――――――――――――――――――――



 〜あとがき〜


 これにて第二部が終了となります。


 第二部のタイトルにもなっております、「新たな魔王」とは呪いの鉄仮面により超人魔王へと変貌した勇者でした。


 ネアの正体共々、驚いていただけましたでしょうか?

 

 驚きに値しなかったとしても、楽しんで読んでいただけましたなら、作者は幸せでございます♪


 ここまでお読みくださり、誠にありがとうございます。


『第三部 美少女モンクと死天王』は人物紹介や閑話を挟んでから、投稿致します。


 引き続き、応援していただけますと、嬉しく思います。

 

「面白かった!」

「続きが気になる!」

「今後どうなるのっ・・・!」


 と思っていただけましたら


目次のページ

https://kakuyomu.jp/works/16818093077952549761


のレビューから、作品への☆☆☆評価を是非お願いいたします。


 面白かったら星3つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちで、もちろんOKです!

 

 作品、作者のフォローや、

 応援♡もいただけると本当にうれしいです。


 応援コメントも随時お待ちしております♪


 執筆の励みになりますので、よろしくお願い致します♪    

 

 それでは、閑話や第三部でまたお会いしましょう。


 最後までお読みくださりありがとうございました! 


 

 (追伸その一)


 ネタ紹介のページも有る方がよろしいでしょうか?

 需要が有るようでしたら、作成致します。コメントしていただけますと助かります。


 では、今度こそ失礼致します♪

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