第51話 スーパー○○○
「では最後にお主の番じゃ、もう何を言われても驚かんぞ。好きなジョブを言うが良い」
それでは俺の全ての想いを込めて······
「俺の失ったイチモツをもう一度生やしてください!」
大神官がフリーズしてしまった。
あれ!? 俺は今なんと言ったんだ?
男に戻りたいです。
······的な事を言おうと思ったのになんか違うニュアンスで言っちゃったか? ぴちぴちギャルになりたい二人組の事が頭から離れなくて言葉のチョイスを間違ったっぽい!?
あっ、大神官が再起動した!
「儂の長年の経験から導き出される答えは、このパーティーは百合の園の住人? そして現状の愛にモノ足りなくなってしまった為にさらなる成長を求めてイチモツを希望したという事で間違いあるまい······」
大神官がブツブツと考察を始めている。
ちょいちょい!
ちょい待ち!
違うからな!?
「しかし流石のマーダ神殿でも、性転換はおこなっておらん。ましてや女体に生やすなど······ブツブツブツブツ」
爺! もうやめてくれ!
「言い間違えました! 俺は元々は男だったんですが、マーダの神様とは違うドコかの神様のいたずら? 呪い? で男から女に変化させられたんです。だから男に戻りたいんです! なんとかする事はできますか!?」
「むむむ、そういう設定か。近頃の若者は色々と考えて人生を楽しんでおるのじゃのう」
設定ちゃうわ!
「じゃがな、そう必死に取り繕ろわんでも良いのじゃぞ。毎日のようにお主と似たような望みをもってやってくる者達がおるでな。お主の前に来た二人組もそうじゃったし、悩める者の相談に乗るのもここマーダの神官の役目の一つじゃ。落ち着いて話してみなさい」
「設定じゃなくて、男から女に変えられたっていうのは本当の事なんです。······もうその話はいいので、転職させて下さい」
「なんじゃもうよいのか? 儂はこの手の相談はベテランなんじゃぞ? それではモンクのルイよ、もう何を言われても驚かんぞ。好きなジョブを言うが良い」
「はい。それでは今の
「は?」
大神官が再びフリーズしてしまった。
そう、俺の最適な転職先はモンクなのだ!
モンクの素早さは1レベル上がるごとに3か4上昇していくのだが、転職して二度目のモンクだと上げ幅が3〜5に変わるのだ。
運が100の俺の場合だと、実質的には5しかでないので、力・体力・素早さとモンクに必要なパラメーターが最高値である5ずつ上がるという、通称スーパーモンクへと変貌するのだ!
ステータス表記上はモンクのままだけれど、このモンクからモンクへの転職も、先人の検証の末に発見された事だった。ありがとう先人。
更にはホークトナックル装備者は、転職後特定のレベルに達するとホークト流の技もスキルとして覚える事ができるというおまけ付き!
知性と精神は相変わらず1ずつしか上がらないけどな。そこは、はなから捨てている所だから気にしたら負けだ。脳筋ビルドという陰口も、もはや褒め言葉にしか聞こえない。
転職に成功すれば最強のカチモン路線が確定だ!
おっ! 大神官が再起動した!
「お主は······バカなのか? せっかくレベルを99まで上げておきながらモンクからまたモンクへと転職したいなどと······悪い事は言わん、ナイト系のどれかにしておきなさい。そうすればバトルマスター系のスキルも覚える事ができる」
「いえ、好きなジョブはモンクなのでもう一度モンクを選びます!」
「はぁ~、言っても無駄であるか。当代の光の戦士がここまで頭がイってしまっておるとは······えーい! わしゃあもうどうなっても知らんぞ! それでは『モンク』になりたいと強く念じるのじゃ」
俺は両手の指を組んで「スーパーモンクになりたい」と強く念じ、祈りを捧げた。俺の体が光に包まれ、力が急激に抜け出るのを感じた。物凄い虚脱感に思わず膝をついてしまった。
転職は終わったのかな?
ステータスを見てみると、レベルは1に、運を除くステータスは全て半分になっている。よし! ジョブはモンクのままだけど転職成功だな!
スーパーモンク爆誕だぜ!
「「ありがとうございました」」
転職が終わったので、エリーと二人で大神官にお礼を言ってから三人でマーダ神殿を去る。
長い長い階段は行きと違って多少疲れたが、階段を降りるうちに体がだんだんと新しいステータスに馴染んでいっている気がする。
預けておいたチョコとザックを回収して騎乗し、飛空艇ミューズ号との待ち合わせ場所まで爆走してもらう。
途中でモンスターを探しながら、出会い頭にひき逃げアタックをかまして進んで行ったので、待ち合わせ場所に到着する頃には俺とエリーのレベルは15まで上がっていた。
飛空艇ミューズ号と無事に合流を果たしてパーティー皆で乗り込んだ。
次の目的地はチョコとザックの為の『進化の泉』だ。
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