第42話 飛空艇技師

 最初の目的地はチヨコの実の群生地に決定した。


「それから俺達のレベルが上がってきてカンストが間近だから、早めに第二職業を得たり、転職をしたいね。そうじゃないと経験値が無駄になってしまうからね。イーリアスとカサンドラさんはユニークジョブだから普通の転職はできないだろうけど」


 皆が頷く。


「転職するのに一番いいところは、このズイーブト大陸の外のマーダ地方にある『マーダ神殿』だから、飛空艇を手に入れたら最初に向かおうと思う。チョコザの二頭もカンストする前に『進化の泉』で進化をしてもらいたいから、その次の目標はそこになる」


「進化の泉なんてあるんだね」


 エリーが面白い話を聞いた、とばかりに身を乗り出して興奮している。


「そうなんだよ、そこの泉にドボンと落ちると『あなたが落としたチョコザはこのチョコザですか?』って女神様の声がして、進化した姿になって泉から上がってくるんだ。世界は広いから、まだまだ俺も知らない色んなものが有るんじゃないかな」


「そうだね。私も世界中の色々な所を見て廻りたいな」


「とにかくまずは飛空艇を手に入れない事には始まらない。中央高山地帯の東側、ゴーツ王国とモロダジャナ王国の境目にある高山に深い洞窟があって、そこの最奥に飛空艇のメイン装置の一つになる『浮遊石』が有るはずだ。早速今から出発しよう!」


 気合を入れた俺達は宿を出ると、厩舎のチョコとザックの元へと向かった。


「チョコ、ザックおはよう」


「「ぷぇ〜!」」


 チヨコの実をインベントリから取り出して二頭にあげると、エリーも含めて喜んで食べている。


「これから南へと向かい中央高山地帯の東側を更に南下する。その途中でチヨコの実の群生地が近くにあったら、寄り道して沢山採集したいんだけど探せるか?」


「「ぷえっ!」」


 俺の質問に対して、二頭がまかせとけとばかりに首を縦に振って大きく頷いている。食いしん坊さんめ。チョコザは可愛いなぁ。


 思わず抱きしめてグリグリ撫で撫でしてしまった。ついでにチョコ吸いも。スーハースーハー。あ~癒されるぅ〜!


 おっと、俺だけ癒されている場合ではなかった。


「よーし! それじゃあ出発だ!」


 チョコに俺とエリー、ザックにイーリアスとカサンドラが乗り駆け出す。途中人里による必要は無いのでチョコザにまかせてどんどん南へと進む。




 その日の内にチヨコの実の群生地を見つけ、皆で沢山のチヨコの実を採集した。これでしばらくは大丈夫だろう。水場もあるので、初日はそのまま野営することにした。

  




 翌日から時には獣道をひた走ること十日。目的地であるユーフー山にある『レゴ厶の洞窟』へと辿り着いた。

 

 俺達が洞窟に近付くと、その入口には一人のお爺さんが頭を抱えて行ったり来たりしていた。きっと、彼こそはイーリアスに次いでファンサシリーズで有名な、あの······


 俺はウキウキしながら声をかけた。

 

「すみませーん! どうかしましたか?」


「うわっ!? なんじゃいお主らは」 


「俺達は通りすがりの聖女パーティーです」


 俺がフランクにそう話しかけると、横にいたエリーの肩が若干ピクついていた。ひょっとしてエリーはいい気がしてない?


 仕方ないのよ、こういうのはネームバリューが大事なんだから。今や大陸一の有名人『聖女エリー』だからね。


「聖女パーティーじゃと!? ヴィクトリア聖国の聖都セイダードでリッチを倒し、大量のゴーストを浄化したというあの聖女か!? これは失礼をした。儂の名はシュドゥ=ゾラ。モロダジャナ王国で長年オーパーツの研究をし、失われし飛空艇の技術を蘇らせる飛空艇技師じゃ」


 飛空艇技師シュドゥが挨拶をしてくれたので、俺達も名乗る。


「一応パーティーリーダーのモンクのルイです」

「吟遊詩人のエリーです」

「イーリアスだ」

「カサンドラです」

「「ぷぇ!」」

「チョコザのチョコとザックね」


「ルイとは守護天使じゃな!? おお! なんという幸運。これなら諦めずに洞窟の中から浮遊石を採ってくることも可能じゃろう。すまんがお主達に頼みがある」


「はいなんでしょう?」


 なんでも聞いてあげますよ。ムフフ、報酬にはもちろんアレをいただきますよ~!!


「古のガロン王国のオーパーツを解読し、飛空艇は実用段階まで進んでいるのじゃが、新たな動力の一部となる浮遊石が、試掘の量では全く足りなかったんじゃ。そこで新たに浮遊石を取りに来たんじゃが、洞窟の中にはいつの間にか恐ろしいモンスターが蔓延はびこっておってのう」


「我々にモンスターを排除してほしいと?」


「そうじゃ。成功したら特別に飛空艇に乗せてあげても良いぞ」


 俺とシュドゥの会話は続いていく。


「我々は魔王を倒す為に、このズイーブド大陸から飛び立つ必要が有ります。ぜひとも飛空艇を一隻譲って欲しいのですが」


 俺がしっかりと報酬をねだると、シュドゥは悩んでしまった。


「うーむ、勝手にやることは出来んが、儂が飛行実験する予定だった一隻に一緒に乗るという事でどうじゃろう?」


「一緒に旅をしてもらえるということですか?」


「うむ最初はな。王が許せば完全にお主達が自由にしても良いのだがな」


「わかりました。まずはその条件で手をうちましょう。よろしくお願いします」


 飛空艇技師シュドゥが仲間になった!

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