閑話  とある吟遊詩人の奮闘記・・・その3

 □月◯日


 ロングブリッジでの戦いはまさに死闘だった。


 イーリアスさんの強さは口では言い表せない程凄まじかった。四対一であるにも関わらず、終始イーリアスさん優勢で戦いが進んでいった。あの時ルイちゃんとザックがアルティメットユナイトスキルをひらめかなかったら、負けていたのは私達だったのだろう。


 そんな凄まじい強さを誇るイーリアスさんが仲間になってくれた! 


 ルイちゃんによると、昨日の強敵てきは今日の強敵ともと言うらしい。とても心強い!


 お母さんのカサンドラさんの石化の呪いが解けると、ルイちゃんが前もって話していたようにすんなりと仲間になってくれたのだ。



 一度ロングブリッジから引き返し、ゴジョオンの宿で私の横にルイちゃんが座り、テーブルを挟んで私の前にカサンドラさん、その横にイーリアスさんが座って食事をした。


 あまりの貧富の差に、私の目はしばらくの間一点に釘付けとなってしまった。



 当然イーリアスさんは兜と鬼面を外しているのだけど、改めて正面から見ると物凄く美しい女性だった。声も私よりはちょっと低いけど、凛とした素敵な声をしている。


 髪の色や表情の柔らかさは違うけど、親子二人の顔つきはとても良く似ている。姉妹だと思えるほどに。と言うことは······鎧の下はおそらく······


 やっぱりね。そうだと思ったよ。



 そしてカサンドラさん。あなたのお胸はどうなっているのですか? 服の上からでもわかる特大サイズ。さすがにネアさんのような人外サイズではないけど、ルイちゃんを窒息させちゃうくらい大きいだなんて。



 ルイちゃんがお風呂に入ってしばらくすると、イーリアスさんが突然「よし! 裸の付き合いでさらに親睦を深めよう」と言い出して鎧を脱ぎ始めた。カサンドラさんも「あらあら、じゃあ私も」と言ってお風呂の方へ。


 万が一、ルイちゃんがアイス君のようにたぶらかされては困る。遅れを取るわけにはいかない。


 私もお風呂へと突撃した。


 大きな山に囲まれて肩身が狭い。


 無だ。無に徹しよう。


 有るんだよ。私も少しは有るんだよ。



 

 □月✕日


 朝目が覚めて、ルイちゃんと日課のトレーニングをしているとイーリアスさんが起きて来て、仲間に入れて欲しそうな目をしてこちらを見ていた。


 案の定一緒にやりたいと言ってきたので、それじゃあとルイちゃんが動き始めた時に、はたと気づいた。


 いけない!


 ルイちゃんの手はゴッドハンド!


 私にとっては救済の手だけど、富める者が益々豊かになるなんて、それはだめよ!


 更に大事な事を思い出した。確かルイちゃんはこう言っていた。「運動し過ぎると、逆に縮む」


 これだ!


 私が精一杯揉んであげて、絞り込めば良いんだ!


 更に私の方に吸い取るように念を込めておこう。どうせなら、ドレイン効果が有るスキルが欲しいと初めて思った。


 


 カサンドラさん!


 どうしてあなたまで!


 だめよ! だめだめ!


 私が絞りとってあげます!



 え!? 大豆が良いんですか!?


 チヨコの実!!!


 これから毎日沢山食べます!


 教えてくれてありがとうございます!

 カサンドラさんの事が大好きになれそうです!



 

 突然死霊魔王ゴルゴンダが街に襲いかかってきた時は本当に驚いた。


 更に私達だけでロングブリッジに逆侵攻をかけるだなんて。物語ならば最高潮に盛り上がるところだけど、これは現実だ。私達の命も街の人達の命もかかっている。


 私には、私達には護りきれる力が有ると信じて、私はく。もう私の目の前で命は奪わせない。


 


 長い、とても長い戦いだった。


 一万対五だなんて馬鹿げている。


 途中何度も危ない所があった。カサンドラさんの超絶スキルが無かったら、押し切られていたかもしれないし、超魔屍鬼にかえるの歌が効かなかったらと思うとゾッとする。


 最精鋭の最後のアンデッド集団相手に閃いたアルティメットユナイトスキルは、私、ルイちゃん、チョコと三身一体で歌、生命エネルギー、魔法とそれぞれ異なる癒しの力を融合した、アルティメットの名に相応しいスキルだった。


 その名も天空愛嵐歌スカイラブタイフーン! 


 これは後世の歴史に残るスキルだったに違いない。後々の絵物語に描かれるかもしれない。そんな予感がする。


 ルイちゃんと初めてのアルティメットスキル!

 今思い返してみると、なんだかとても嬉しい。




 そして空想の世界でこの瞬間の魔王城の事を体験したというルイちゃんの提案で、休憩を挟んだ後にそのまま魔王城へと突入した。


 ルイちゃんの言葉通り、魔王城には一体のモンスターもおらず罠も全て解除されていた。ルイちゃんの淀みない案内で、次々と宝箱を開けていき最奥の地下祭壇のような場所に出ると、死霊魔王がいた。


 死霊魔王はこちらに気付いておらず、バックアタックで先制できた。そして思っていたよりも呆気なく討伐できてしまった。


 だけどその最期の瞬間に、とても不穏な事を告げて消えていったのだ。


 曰く、「自分の上に大魔王がおり、しかも自分は死天王の中で最弱である」


 死霊魔王を倒して魔王軍との闘いは終わりだと思っていたのに······



 ルイちゃんの望みだった、男に戻る薬もまだ手に入っていない。


 そういえば、私はいつからこんなにも男に戻る薬というのを意識し始めたのだろう。


 ルイちゃんは、『ノジャロ〜リ神』という女神様のつかわした神の使徒さまだから、いつかは天界? に帰っていくのかと最初の頃は漠然と考えていたはずだけど、ルイちゃんの態度からするとどうもそういう感じではない。


 平和になった後も仲間として、友達として一緒に過ごせる事を当たり前の事だと最近は思えていた。その時大好きなルイちゃんが男の子になっていたら、私はどうしたいんだろう······



 

 突然、優しい声が私達の心に直接響いてきた。風の大輝石クリスタルが私達の心に語りかけてきているようだった。


 更に大輝石クリスタルからとんでもない事実を聞いてしまった。私が住んでいるこのズイーブト大陸は浮遊大陸だというのだ。言葉通りならこの大地は空に浮いているの!?


 そんな夢物語の様な事が本当にあるのだろうか。


 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――


 閑話はこちらのお話にて終了です。


「面白かった!」


「続きが気になる!」


「今後どうなるのっ・・・!」


 と思っていただけましたら


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 それでは、第二部でまたお会いしましょう。


 最後までお読みいただきありがとうございました。





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