閑話 一方その頃勇者パーティーは・・・その4
エリー、ルイとのパーティー戦に敗れた勇者アイスは、放心状態でカエル仕置きを過ごしていた。
ルイのお説教は、右の耳から左の耳へと素通りしていき、時折周りにつられて反射的に「ゲコッ」と鳴いてしまう。
圧倒的存在感をもって、巨人の指が勇者アイスの事をぐりぐりと責めてくる。
勇者アイスは思った。
無だ。
手柄はエリー達に横取りされ、おまけに女二人相手にこちらは四人で完膚なきまで叩き伏せられた。
今まで自分のやってきた事は何だったのか。虚無感だけがある。
自分のやってきたことは、何か間違っていたのだろうか。
「······わかったな?」
巨人の声が止んだかと思うと、突然体がぐんぐんと大きくなり、巨人の頭を見下ろすようになった。巨人はルイだった。
途端に猛烈な悔しさが込み上げてきた。
歯をギリギリと食いしばり、その思いに耐える。
「勇者さまぁ」と言いながら涙目のローザが抱きついてきた。ぐっと抱き寄せつつ思った。
力が······力が欲しい。
先程の巨人のような圧倒的存在になりたい······
翌日に催されたメカイデカ伯爵の歓待をうけて、そこでせがまれた自分達の冒険を語っているうちに、勇者アイスの心は自尊心を取り戻していった。
メカイデカ伯爵は始終興奮した様子で自分達の冒険を褒め称えてきたからだ。やはり自分達は凄いのだと再確認する。エリー、いやルイか、ルイが異常なのだ。
さらにその翌日には、メカイデカの街をたち、ヴィクトリア聖国へと入った。
「今後の方針を決めたいと思う。何処にもよらず最短で聖都セイダードを目指すか、それとも今まで通り野良モンスターやダンジョンを討伐しつつ、レベル上げをしながら聖都を目指すか」
「俺は機会を逃さずレベルを上げたほうが良いと思うぞ。やはり高レベル高ステータスの者は地力が高いのだ。そこを強化しなくてはルイには勝てん」
真っ先に返答したのは
「勇者様、うちは先ずは聖都に向かったほうが良いと思います。そこで新しい情報を得てから、優先順位を決めて各地へ向かったほうが効率が良いと思います」
そう返答したのは黒魔道士ローザだ。
「ネアはどう思う?」
「そうですね······アイス様は力を得たいのでしょう?」
「ああ、圧倒的な力が欲しい。······圧倒的なだ」
それを聞いて、ふふっと微笑みながら白魔道士ネアが答える。
「でしたら、やはりダンジョンの素通りはもったいないでしょう。死霊魔王ゴルゴンダは強大だと聞き及びます。どのみち
「ふんっ! あいつらがそう簡単にくたばるものか! それでは雑魚の掃討はヴィクトリア聖国に任せて、俺達のレベル上げに繋がりそうな、高レベルのダンジョンや野良モンスターを討伐しながら聖都まで行くぞ!」
方針が決まった勇者パーティーは、その後はレベル上げを主目的として聖都セイダードを目指し北上して行った。
その間、倒しに倒しまくったモンスター討伐の成果で、勇者パーティーの面々のレベルは、以下のように大きく上昇した。
勇者 ∶アイス ∶レベル35→45
ナイト ∶ゴライア ∶レベル37→48
黒魔道士 ∶ローザ ∶レベル36→47
白魔道士 ∶ネア ∶レベル36→47
聖都セイダードに到着した勇者パーティーは、聖都の住民に歓迎されながら都入りし、大聖堂にてヴィクトリア聖国により歓待された。
教皇との謁見が終わり、国によるクエストをいくつか受諾した後の歓迎の宴にて、勇者パーティーも酒の席にて盛り上がっていた所に、ヴィクトリア聖国の首脳陣へと会場を揺るがす急報が届いた。
「申し上げます! 先程マリンバード王国より緊急連絡がまいりました! それによると、聖女エリー様率いるパーティーが、前線基地の街ゴジョオンへと大進行してきた一万のアンデッド軍団をロングブリッジにて防衛し、壊滅させたとの事です!」
しんと静まり返るパーティー会場に朗報が続く。
「さ、更に! そのまま魔王城へと突入された聖女エリー様達は······ま、魔王ゴルゴンダを激闘の末、討ち取られたとの事です!」
感涙でむせび泣きつつ、報告官の言葉は続いた。
「しかしながら! 聖女エリー様の報告によれば、魔王ゴルゴンダは、大魔王デスジードの配下の死天王の一角であったとの事で、未だ魔王軍の脅威は拭い去れていないとの事でした! 以上、緊急報告を終わります」
会場が一瞬どっと沸いたかと思うと、最後の報告で再び静まり返った。会場にいた一同は新たに判明した大魔王の存在を、すぐには消化出来ないようだった。
勇者アイスの表情も目まぐるしく変化したが、最後の報告を聞くとふてぶてしくニヤリと笑いつぶやいた。
「大魔王デスジードか。魔王ゴルゴンダでは先を越されたが、必ずルイとエリーを追い越して俺が大魔王を討つ」
勇者アイスのつぶやきを聞きつつ、白魔道士ネアも驚愕の表情で思わずつぶやいた。
「まさか勇者以外に死霊魔王ゴルゴンダを討ち取る存在がいるだなんて······」
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