第31話 ロングブリッジの死闘

 魔王軍の本拠地、死霊島は、マリンバード王国の前線基地ゴジョオンから程近い沿岸の島に有る。そして最近になって、魔王軍は人族の世界への侵攻を本格的に進める為に、長い橋をかけた。


 それがここ、ロングブリッジだ。


「エリー、チョコ、ザック、突入前におさらいだ。まずはイーリアスに辿り着くまでに、モンスターとの連続戦闘が10回ある。今の俺達なら特に問題はなく戦えるだろう」


「はい」

「「ぷえっ」」


「そこで、連続戦闘が終わる前に10回目の敵をカエルに変化させてから、HPとMPをアイテムで全快にしておく。イーリアスと万全の状態で戦う為だ」


「はい!」

「「ぷえっ!」」


「イーリアスは全身を、前衛職の最強装備の一角といわれる『平氏装備』とアクセサリーの『鬼面』で覆っている。これらの防具の力であらゆる状態異常攻撃を無効化するから、かえるの歌は歌わなくていい」


「はい」

「「ぷえっ」」


暗黒騎士ダークナイトイーリアスの攻撃手段は数多く有るが、一番厄介なのが斬った相手からHPを吸収する『暗の剣』と、MPを吸収する『黒の剣』だ。これにより攻撃と回復を同時に行いつつこちらのMPを枯渇させにくる」


「······」


「『暗の剣』も『黒の剣』もイーリアスのHPとMPのそれぞれの最大値の、約半分を吸収する。約というのは、一割〜二割はこちらの防御力で増減するからだ。カチモンの俺に対しても必ずダメージが入る、かなり厄介な攻撃といえる。天敵のような攻撃手段だ」


「······」

 

「仮に奴のHPが9999だとしたら、約5000のダメージを喰らってしまう。流石にそこまでレベルもHPも高くないはずだけどね」


「恐ろしい攻撃ですね。私なんか下手したら一撃で戦闘不能になってしまうかも······」


「そうなんだよ。だからまずは『むしめがね』でレベルを調べるぞ。イーリアスのレベルからHPは推測できるから、奴のレベル次第ではすぐに撤退してレベル上げのやり直しだ。その場合はチョコとザックは俺達を乗せて、全力で逃げてくれ」


「ぷぇ〜!」

 

「俺はレベル65でHP5800、エリーはHP2930。イーリアスがレベル65の場合でHPは約6000のはずだから、ここがデッドラインになる。俺の過去の経験ではイーリアスのレベルは60のはずなんだけど、実際にどうかはわからないからな」


「そうでしょうね」

 

「エリーは『すばやさの歌』を可能な限り歌い続けてくれ。とにかく奴の『暗の剣』の回復以上に、こっちは手数で押し切るしかない。そして回復は出し惜しみせずに全回復する『エクストラポーション』をばんばん使ってくれ」


「わかりました!」


「チョコはエリーを乗せたまま回避に専念。チョコもザックも斬られないように、とにかく全力で回避しつつエリーをサポートしてくれ」


「「ぷえっ!」」


「よし! それじゃあロングブリッジに突入するぞ!!」





 ロングブリッジをチョコザが駆ける!

 

 ダダッダ、ダダッダ、ダダダダダダダダ!


 

 

 

 ゴブリンソルジャー、ゴブリンジェネラル、ゴブリンキング、リザードソルジャー、リザードジェネラル、リザードキング達を順に倒していき、今は最後の10回目の戦闘だ。オーガジェネラルをカエルに変化させてから、HP、MPを全回復させる。


「よし、予定通り! イーリアスは死霊魔王より強い! みんな絶対に気を抜くなよ!」

 

 オーガジェネラルかえるを殴りとばすと、光のエフェクト共に消えていく。さあ、いよいよだ! 現実のイーリアスとの対面に興奮が押さえられない!


 

 最後の大扉の前に、一人の鎧武者が陣取っている。兜と鬼面で顔は確認できないが、あの姿こそまさにイーリアスだ!

  

「ひろーい空、あおーい海、こんなに気分がいいのに、私を邪魔をするのは······誰だー!!」


「俺の名前はルイ! イーリアス! お前を倒して俺達の仲間になってもらうぜ!」 


「私は人間の仲間にはならん! 身の程を教えてやるから、とっとと帰れ!」


 レベルは······61だ!


「61だ! みんな! やるぞ!」 


 まずは接近して殴り、俺にヘイトを集める!


 うおっ!


 いきなり『暗の剣』で斬りかかって来やがった!


 避ける!


 うっ! かすっただけなのにHPを半分弱持っていかれた!


 だが、このまま飛び込んで殴る!


 おら!!


 ドドドド•ドドドド!!


「ぐぅ!! なんだお前の攻撃! この私に対してあり得ない手数の多さ!」


 ありがとよ!


 うわっ! また『暗の剣』で斬られた!


 急いで距離を取り直して、エクストラポーションを飲み回復する。


 仕切り直しだが、奴に俺の事を印象付ける事には成功したみたいだな。エリー達に攻撃の意識がいかないように立ち回らないと。

  

 よし、すばやさの歌が効いてきたぞ!


 もう一度肉薄してイーリアスを殴る!


「ぐ! 更に速くなったか! ふん!」


 すぐさまカウンターの『暗の剣』だ。


「お前! なかなかやるな!」

 

イーリアスがほめながらも斬りつけてきた。完全に避けることができずにHPを大量に持っていかれる!


 更にすばやさの歌の効果がのってきたぞ!


 おらおら!


 ドドドド•ドドドド!!


 ヤバい斬られた!


 エクストラポーション!


 お互いにHPの奪い合いが続くが、一手で攻撃と回復の両方をこなすイーリアスの方に分があるようだ。


「んん~!? お前の仲間、面倒な事をしてくれてるみたいだな!」 


 ヤバい! エリー達の方に突っ込んで行きやがった!


 慌てて後ろからイーリアスを殴るが、エリーも斬られた!


「きゃあ!」


「エリー、すぐに回復しろ!」


「この最強の聖剣『エクスリバー』の真の力を見せてやろう!」 


 続けざまにエリーに斬りかかるが、ザックが庇い盾になってくれた!


 くそ!


 偽物の聖剣のくせに、何でそんなにお前は強いんだよ!!


 完全に陣形を乱された!


 俺がイーリアスを殴るが、お構いなしに仲間達を狙って攻撃しつつ回復をしてやがる!


 もう一度イーリアスを殴る!

  

「ぐぅ! 私が悪かった」


 そう言いながらもイーリアスがチョコとエリーを斬る!


 ヤバい! 奴の必殺の四連撃だ!


「四対一でこられちゃ」 ザシュ!


「手も足もでないな」 ザシュ!


「······てのは嘘だけどな!!」 ザシュ!


 

「エリー! チョコ!」


 くそっ!

 何が、俺がエリーの最強の盾だ!

 エリーとチョコが戦闘不能にされてしまった!


 このやろう!

 このままでは全滅する!


 一旦『けり』で大きく奴を吹き飛ばして、蘇生の隙を得ようとした瞬間!


 ザックと何かが繋がった!

 脳裏に完成したビジョンが浮かぶ!


 そのまま『けり』のモーションで流星のエフェクトを発生させつつ······


「ザック!」


「ぷえっ!」

 

「アルティメットユナイトスキル、燃えろ○○○発動!」

 


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