美少女モンクにTS転生した俺はとにかく殴る!たまに蹴る!

🔨大木 げん

第一章 異世界転性

第1話 異世界転性


 202X年 夏

 生転神社せいてんじんじゃ、工事現場にて

 


るい、昼飯の前にそこのアルミサッシの雨戸の枠外しちゃおう。ぶった切っちゃってくれ」


「おっけー! ちょっとはなれてて」


 ハンディタイプの機械にアルミ切用の刃をセットしてっと! よ~し切るぞ〜!


『ヒュイィィィィンン』


 高速回転を始めた機械の刃をサッシに押し付けるが、手元がくるって弾き飛ばされてしまった!

 

『ヒュイィィィィンン』

『ガガン!』

『ドガン!』


 弾き飛ばされた機械が高速回転したまま宙を舞うっ!


 死の危険を感じた俺の脳は、全てをスローモーションで映し出すっ!


『ヒュ • イ • ィ • ィ • ィ • ン • ン • ン』


ヤバい!

こっちに来る!

逃げないと!


身体が動かない!

見えてるのに!

身体が動かない!

見えてるのに!

 

動け!

動け!

うごけぇ〜!

動いた!

 

避けろ!

よ け ろ〜!

ヤバい!

まだ当たる!


『バシュッ!』


うぎゃぁぁ!!


『ヴゥン、ヴゥン』

『ヴン』


スイッチ!


『······』


スイッチ切らないと!

 

破れたズボンの繊維が回転する刃にからまって止まった!


どうやればスイッチが切れるんだ!?

パニックになってしまって当たり前の事もわからない!

 

スイッチ!

わからない!

あ!

コンセント引っこ抜け!

抜けた!


血だ!

痛いぃ!

あれ!?

でも痛くない!?

マヒして感じない!?


右脚の付け根だ!

やばかった!


回転する刃が縦向きに落っこちてきていたら、回転が止まらずに動き続けて動脈切れてたかも!

横向きに落ちてきて助かった!


え!

横向きだとっ!

 

右脚は無事っぽいが真ん中の脚はどうなった!?

俺の大事なひとりムスコは!?

感覚が無い!

どこに行った、俺!


ジュニアよ!

帰ってこい!


イヤだ!

俺は男のままでいたいんだ!


慌てて確認をする。


  


ない!!!

 

ち、チンがねえ!

タマも!


血が噴き出してきた!


るい!! 大丈夫か!?」


同僚の呼びかけが最後の記憶だった。



  

 ◇◇◇




 気が付くと真っ白な空間にいた。


「······?? どこだここ? さっきの大怪我は夢だったのか?」


「夢ではないぞ、近能 塁こんのう るい、お主は死んだのじゃ」


 その言葉に振り返ると、さっきまで誰もいなかったはずの空間に、神々しい光をまとった着物姿の可愛らしい幼女がいた。


「誰だ!? 死んだってどういう事だ!? じゃあ今の俺はなんなんだ!?」


「妾は神じゃ。今のお主は死んだ後の肉体から抜け出た魂じゃよ」


 神だと!? この眼の前の『のじゃロリ娘』が? ちょっと信じられないな。やはり都合の良い夢をみているんだろう。


「お主の考えておる事は全てまるわかりじゃぞ。もう一度言うが、妾は神じゃからな。のじゃロリとは酷い言いぐさじゃのう」


 え!? ホントに!? 今も何を考えているかバレてるの!?


「うむ、バレバレじゃ。心が読めておるから言葉だけで取りつくろわんでもよいぞ。少しは信じる気になったか?」


「あの後、救急車呼んでくれたのかな? それでも間に合わなかったのか? 俺の死因は何だったんだ? やっぱり出血多量で死んだの?」


「救急車は間に合わなんだ。お主の死因はショック死じゃよ」


「ああ、出血が多すぎるとショック死するっていうもんな」


「違うぞよ。お主はち○こを失ったショックで死んだのじゃ。出血自体は死ぬほどではなかったが、救急車が到着した時には、ショックでもう魂が完全に抜け出てしまっておった。蘇生処置をしても生き返らなんだのよ」


「え〜!? なんてマヌケな死に方!」


「くっくっくっ、くはははは、いや、ほんとにのう? 久しぶりに笑わかしてもらったぞよ」


「人の死を笑うなんて本当に神様かよ!?」


「くっくっくっ、いや、すまんのぉ。じゃがの、笑わせてくれたお礼に、生き返らせる事は制約があってできんが、お主を転生させてやろうと思っての」


「え!? まじですか!? 是非お願いします! 女神サマありがとうございます!」


「げんきんなやつよのう、どれ、どういった転生がよいのじゃ? あぁ、言わんでもよいぞ。頭の中をのぞくからのう」


「え!? それはなんか怖い!」


「心配せんでもよいぞ、もう終わったわい。どれ早速お望み通りの転生先に送ってやろうかの。あぁ、年もついでに若返らせといてやるし、お主は顔がイケとらんから誰もが恋するようなイケメンにしといてやろう。女神様の転生特典じゃ」


「女神様、待ってください! チートはないの!? こういうのってほら、女神サマからチートを授かるものなんじゃないの!?」


「そんなものはないぞ。転生自体をありがたく思うが良い。お主ののデータを元に転生させてやるからの。なにお主なら大丈夫じゃ。転生先でもしっかりと妾を笑わせるのじゃぞ。ではの、さらばじゃ」


 白い空間がゆらぎ始めた。

 

「待って! 笑わせるってなに!? 話を聞いてくれ〜〜〜!」


「向こうで目覚めたら『すてーたすおーぷん』と言うのじゃぞ~」


 その言葉を最後に白い世界は一瞬で消えて無くなり、俺の意識も途絶えた。




 ◇◇◇




 目がさめると草原に立っていた。


 爽やかな風が優しく俺のほおをなでている。


 明らかに現代日本とは違う様子だ。

 本当に異世界に転生したのだろうか?


 のじゃロリ女神の最後の言葉を思い出し、周囲の安全を確認した俺は、小声でステータスオープンとつぶやいてみた。


 音もなくAR表示のように目の前に現れたステータスボード、そのメインメニューのデザインは見覚えがありすぎるものだった。


 昨夜まで5周目プレイをやりこみ、今日からは6周目を楽しもうかと思っていた大人気RPGゲーム『ファンタジー・サーガ5』通称『ファンサ5』のリマスター版のものとそっくりだったのだ。


 これって、まさかのゲーム転生か!?


 ステータス表示を上から読む。


 ――――――――――――――――――――――――――――

  

名前∶ルイ=コンノー

性別∶女

年齢∶15歳

職業∶モンク

 ・

 ・

 ・ 


 ――――――――――――――――――――――――――――


 ん!?


 性別∶


「お、おんなぁ!?」


 や、やりやがったな、のじゃロリ女神!

 

のデータを元にって大事なモノを失った状態じゃねえか!!」


 


 


 


 

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