あかねさすきみ
白雪 うさぎ
私の気持ち
それは夕日がとても綺麗だった日のことでした。
少し肌寒くなってきて、半袖のセーラー服が紺色のセーラー服に変わっていく時期でした。
久しぶりに意中のひとと下校をした日のことでした。
お互い忙しくなかなか一緒に帰ることが出来なかったり、顔を合わせる機会がなかったのですが、久々に見る好いひとはそのままで変わっておらず、相変わらず綺麗でした。
隣を歩く想いびとは楽しそうに最近あったことを私に話してくれました。私はこのひとが花を咲かせながら言葉を紡いでいくこの時間がとてもすきでした。しばらく聞けていなかった想いびとの声を聞けてとても嬉しかったのです。
だからでしょうか、言葉にしてしまったのです。
「夕日が綺麗ですね」と。
私が立ち止まったために少し先を歩いていた想いびとは、私のよりも短いスカートを翻しながらこちらを見ました。私が畏まった言い方をしたからでしょうか、それとも意味を分かっていたのでしょうか、少しだけ、ほんの少しだけその端正なお顔が歪んだように見えました。想いびとは少しの時間を開けて「そうね、綺麗ね」とだけ返事を返してくれました。
その後はいつもと同じく、何事も無かったかのように帰路に着きましたが、少し、口数が減ったように感じました。 別れ際、いつもなら「またね」と微笑んでくれる想いびとの表情は曇っていて、ほんの一瞬、言葉を紡ぐのを躊躇っているように見えました。口を開いた彼女は、1音1音を大切そうに、綺麗な音を紡いでくれました。
「今度はわたしと月を見てくれるかしら?」
彼女の全てを見透かしていそうな、綺麗な瞳が私の目を奪って離してくれなかったのをよく覚えています。
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