第11話 探索するぜ

「なぁ琥珀? お前の力は何にでも変化できるのが力なのか?」


『違うでち。ワレの力はタトゥーでち』

「タトゥー?」

『そうでち。ワレを使ってらんどーちゃまが描くと、描いた物が実現できたり、紋が無い者に紋を描くと聖印を与えることが出来るでち』

「ヘェ~なるほどな」


 琥珀はすごいでち? っとでも言わんばかりに俺の腕の中でふんぞり返る。

 おいおい? あんまり踏ん反り返ると落っことすぞ?


 でも……描いたものが実現するってそれは……何でもか? 

 紋が増やせるって……この世界じゃすごく喜ばれるんじゃ!?

 俺と琥珀ってもしかして最強ペアじゃね?


『まぁ……今は消す事くらいしか出来ないでち。ワレのレベルを上げないと無理でち』


 琥珀がぺろっと舌を出しあざとく小首を傾げた。


 ちょーーーーー!!


 さっきまでの俺の妄想と興奮を返してくれ!

 何だよ! 描いた絵が実現するとか言うから、食い物とか服とかさぁ……色々と考えちゃったじゃねーか!

 どんな服を描こうかなぁ? まであの一瞬で考えてたんだぞ?


「クシュ! ズビッ。ああ~冷えてきたな」


 流石にこの服装で夜を過ごすのは限界かもな。上半身裸だしな。


『らんどーちゃま寒いでち?』


「ああ。ちょっとな? お前を抱いてるから胸は暖かいんだがな? 背中が寒いな」


 ここは王宮って言ってたし? なんか探したら色々ありそうだよな?


「腹も減ってきたし、服とか食べ物とか探しに行こうぜ」


『それならワレに任せるでち! サーチで一発でち』


 再び琥珀のまんまるお目めがピカーっと、懐中電灯のように光る。


「ブッッ!」


 目立つし見てるだけで笑いが……。


「なぁ琥珀? サーチで探してくれるのはありがたいんだがな? その目がピッカーってなるのどうにかならねーか? 目立って仕方ない」


『ええー?!』


「うわっっっちょ!」


 琥珀が目を光らせたまま俺を見るもんだから、眩しくて仕方ない。


「眩しいって!」


『ムゥ……これがカッコ良いでちのに……仕方ないでちね? 普通にするでち』


 琥珀の目の光が無くなった。


『さぁ行くでちよ!』


 琥珀が俺の腕の中からピョンっと飛び降り、前を歩き出した。

 どうやら目の光はサーチに関係ないらしい。

 何だよ! お前、光らせなくってもサーチ出来るのか。

 だったら初めに教えといてくれ! 


 琥珀のサーチの能力は思っていたより凄く、人がいる場所などもすべて分かるらしい。


 長い廊下を歩いて行くんだが、全く人に会わない。


『この扉の奥に、何かいっぱいありそうでちね』


 黒くて重厚な扉の前で琥珀が立ち止まった。


 何だろう、見るからに大切なものが保管してありますよーって見た目ではない。

 どちらかと言うと、ちょっと気味が悪い。


「なぁ琥珀? 本当にこの中に良いもの入ってるのか? ちょとだけイヤな感じがするんだが」


 俺がそう言うと、琥珀はチッチッチと言って前足を左右に振った。


 お前そんな仕草どこで覚えたんだよ? そんなことリアルでする奴中々いねーぞ?


『良いでちか? わざと誰も近づかないように、気味悪く偽装してるんでち。って事はでちよ? それだけ中に良い物があるって事でち!』


「なるほどな! 天才だな琥珀』


 俺が天才だと褒めると、説明しながら少し顎を上げドヤる琥珀。


『それに扉を紋で封印してるでちが、ワレにかかればチョチョイのチョイでち!』


 琥珀は再びあのDXマシーンとやらの姿に変化した。


『さぁ! ワレを使って扉の封印を解くでち!』


「おっおう」


 琥珀を手に持ち、扉の鍵穴に軽く当てた。


「うわっ!」


 バリンっと言う衝撃音と共に手に振動が走る。


『さぁこれで開いたでち』


 琥珀はぬいぐるみの姿に戻ると、自分の何倍もあるであろう大きさの、重厚な扉を軽々と開いた。

 あの小さな体の中にどこにそんな力があるんだろう。

 琥珀って意外と強いんじゃ……


『らんどーちゃま? 何してるでち? 早く入るでちよ!』


 琥珀が扉を押さえたまま俺を待っていた。

 早くしろとでも言わんばかりに、足をポニポニと鳴らしながら。


 ……ったくせっかちな奴だ。

 驚いてる時間くらい、待ってくれても良くない?


 俺は少しワクワクしながら奥にある部屋へと足を踏み入れた。

 

★★★


次話は21時11分に更新します。

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